第33話 鏡の階層

『罠短魔剣』の部屋から出た三人は、そのまま進んで行くと次の階層に繋がる階段を見つけ、上の階層に向かった。


「これで下から数えて四階層目か。……『魔探』」


 何度目かの『魔探』を使い、上の階層に居るディルたちの位置を確認する。


「……おかしい。他の奴らは全員一つ上の階層の同じ場所で止まってる」


「同じ場所で止まってる?それってみんなで合流してるってこと?」


「合流、にしてもおかしいわね。数人が合流したり手を組むのは分かるけど、全員はどう考えてもおかしいわ。一つ上、もしくは二つ上に何かあると考えた方が良いわね」


「だな。何にせよこの階層はさっさと攻略しないといけない訳だが……」


 キリヤは魔探を抜き、目の前に広がる光景を見る。

 三人が今いる階層は鏡だらけの階層。壁や天井、地面までもが鏡になっており見ているだけで頭が痛くなってくる。


「本当にこのダンジョンって奇妙だね。まさか鏡なんて」


「そうね。それにこの鏡から魔力を感じる。そのせいでこの階層の魔力探知が上手くいかないわ。キリヤくんの魔探なら別なんでしょうけど」


「そうだな。けど魔探もかなり使った。上に何があるか分からないから出来るだけ温存しておきたい」


 キリヤは魔探を鞘にしまい。代わりに斬魔を抜く。


「その短剣はいつまで持ってるの?」


 レイシスタの指摘通り、キリヤは鞘とは別に、後ろ腰に『罠短魔剣トラップツール』を収納している。


「認めてもらうまでだな。所有者にならないと鞘にしまえないんだよ」


「あれ?まだ認めてもらってないんだ」


「残念ながらな。まだこいつの力の全部を試したわけじゃない」


「試せばいいのに」


「純粋に試すんじゃだめなんだよ。ちゃんと実戦で使わないとな。……そろそろ行くぞ」


 三人は鏡の中に向かって歩いていく。


「なんか、奇妙な感覚だね。レイナ」


「シスタ、私はこっちよ。それは鏡」


「あ、ごめん。痛っ!」


 戦闘を歩くレイシスタは鏡にぶつかり額を抑える。


「痛ったぁ~。……キリヤ!」


「……分かった。俺が戦闘を歩くよ」


 キリヤはレイシスタの二の舞にならないよう、短剣を前に構えながら進んで行く。


「なぁこっちであってるのか?」


「さあ?どうだろう。この鏡、傷つけてもすぐに再生しちゃうから印付けれないし」


「魔力で印をつけてもこの鏡の魔力のせいで分からなくなるものね。それに、」


 フレイナは鏡に向かって炎を撃つ。だが炎は鏡に触れてすぐに消えてしまう。


「燃やすのも無理ね」


「……勘だよりで進んで行くしかないか」


 一度も行き止まりに当たることなく進んで行くと、やがて開けた場所にたどり着いた。


「勘が当たった。ってことで良いのか?」


「それならとても嬉しいけれど、……そういう訳では無いのでしょうね」


「二人とも構えて。何か来るよ。っ!?」


 レイシスタは殺気を感じ取り、氷の弓を構える。

 同時にキリヤは斬魔を構える。


「【ファイア・バード】」


 フレイナは小さの炎の鳥を周りに出現させて備える。


 そして数舜後、部屋の中に巨大な魔力が吹き荒れ、鏡の中から人が現れる。


「嘘っ!?」


「まじか……」


「こんなのあり!?」


 鏡の中から現れたのはキリヤ、フレイナ、レイシスタ。

 まるで色が抜けたような恰好をした三人が、一年生最強の三人の前に立ちはだかった。





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