第32話 ダンジョンの魔剣

 三人は魔力や殺意を感知しながら罠だらけの階層を進んで行く。


「危なっ!」


「フレイナ、そこ気をつけろ」


「わ、分かったわ!」


 レイシスタが先行し、続いてフレイナ。そして最後尾にキリヤが続く。


「……キリヤー!こっち、何かある!」


 レイシスタは罠を避けながら壁に近づく。そしてキリヤとフレイナもその壁に地下づく。


「ここ、なんか不自然な魔力反応がある」


「……確かに。これは、隠し扉かしら?でもかなり強固な魔力障壁が張られている」


「魔力障壁か。ならこれでいけるだろ、『斬魔』」


 キリヤは『斬魔』を鞘から抜き、魔力障壁ごと壁を切る。


「よし、行くぞ」


 キリヤは斬魔を片手に警戒しながら先に進む。そして二人はその後を追う。


「やっぱり斬魔って凄いね」


「えぇ、魔法を斬る魔剣。相手にすると恐ろしいけど、味方だとこれ以上に頼もしい物も無いわよね」


 先に進んで行くと、少し開けた場所。そしてその場所には一本の短剣が置かれている。


「あれって、まさか!?」


「あの魔力、間違いないわ」


「あぁ、あれは魔剣だ」


 三人が魔剣を見ていると、魔剣の方が動き出す。


「魔剣が動いた?」


「魔剣は意思を持つ剣だからな。だいたい初対面の魔剣は自分で動いて襲ってくるぞ。っ防げ!」


 キリヤが叫ぶのと同時にフレイナとレイシスタは障壁を張り、キリヤは斬魔を振って、魔剣の攻撃を防ぐ。


「随分と元気だな。二人とも、悪いがあいつの相手は俺に任せてほしい」


「……ちょっと気になるけど、分かった。キリヤに譲るよ」


「私も、今は魔力を温存しておきたいし。キリヤくんに任せるわ」


「サンキュ。ささっと終わらせる!」


 キリヤは斬魔を右手に持ち、魔剣に向かって走る。

 近づいて行くと魔剣がキリヤに向かって飛んでくる、そんな魔剣を斬魔で弾く。


(二度打ち合ったが、特殊な能力は無かった。とすると『魔探』のような戦闘以外の能力だな)


 そう結論付け、キリヤは斬魔を鞘に納める。

 そんなキリヤの行動を、離れた位置から見守るフレイナとレイシスタは不思議に思う。


「剣、しまったね」


「えぇ、いったいどうするつもりなのかしら?」


 魔剣はそんなキリヤに向かって飛んでいく。


「お前の動きはもう見切った」


 キリヤは飛んでくる魔剣をギリギリまで引き付け、当たる直前で一歩横へ動き、そのまま魔剣をつかみ取る。


「「掴んだ!?」」


 そしてそのまま手の中で抵抗する魔剣を勢いよく地面に突き刺す。


「「刺した!?」」


 二人が驚いている間にキリヤは魔剣を従える準備をする。


「魔剣よ、俺に従え」


 キリヤは魔剣に声をかけ、握る力を強める。

 次第に魔剣は抵抗する力を弱め、完全に抵抗を辞めた。

 魔剣が抵抗を辞めたことを見て、フレイナとレイシスタはキリヤのもとに近づく。


「それで終わりなの?」


「いや、まだだ。今は俺の力を見せた。次は魔剣こいつを使いこなせることを示す」


「示すって?」


 キリヤは地面から魔剣を引き抜く。すると部屋の中の壁の一部が開き新たな道が現れる。


「魔剣には大まかに分けて二種類ある。『斬魔』や『不死鳥フェニックス』のような攻撃的な能力を持つタイプ。そしてこの短剣や『魔探』のような特殊な能力を持つタイプ。前半のタイプは戦って、叩き潰せば言うことを聞く。後半のタイプは力を示すのと共に、その能力を使いこなす必要がある」


 キリヤは左手に魔剣を持ち、新たに現れた道に進んで行き、二人もキリヤの後を追う。


「この道、所狭しと罠があるわね」


「魔力感知で感知できない罠もたくさんあるよ。しかも地面だけじゃなくて壁とか天井とかにも」


 そんな罠だらけと言うか、罠でできたような道をキリヤはずかずかと歩いて行く。


「ちょ、キリヤくん!?」


「キリヤ、危ないよ!」


 二人の忠告を、キリヤは前を向いたまま手を振って答える。

 そしてあと一歩で罠にかかる場所で止まり、足元の地面に魔剣を突き刺す。


(魔剣を力でねじ伏せたとき、魔剣からどんな力を持っているのか教わった。こいつの名前は……)


「『罠短魔剣トラップツール』。そしてその力は『罠・探知』」


『罠短魔剣』に力を込めると、魔法陣が展開されその道にあるすべての罠をキリヤに伝える。


(数、場所、どんな罠かまで分かるのか。便利だな)


 キリヤはさらに『罠短魔剣』に力を込める。


「『罠・解除』」


 刺した瞬間、魔法陣が展開され全ての罠が解除される。


「嘘っ!?」


「罠が一瞬で!?」


 罠が全て解除出来たのを確認し、『罠短魔剣』を抜く。


「とりあえず今はこんな所だな。先に進むぞ」


「「は、はーい……」」


 新たな魔剣の力を見て、二人は呆然としながらキリヤの後を追った。







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