第30話 合流

 (キリヤ視点)


 キリヤは『魔探』で魔物を避けながら、上の階層につながる階段を探す。

 と言っても無形迷宮内で戦闘を全て避けるのは難しい。


「……いつの間にか挟まれたな。さてどっちを相手にするか」


 キリヤの前方にはゴブリンの集団、後方には狼の魔物の集団が立ち塞がっている。

 そしてその二つの集団は、キリヤを見つけた瞬間に襲い掛かってくる。


「結局どっちもやるしかないか。こい『不死鳥フェニックス』」


 鞘から『不死鳥』を抜き、右に『不死鳥』左に『魔探』を持つ。


「燃やし尽くせ!」


 前方にいるゴブリンの半分を『不死鳥』で燃やし尽くす。そして後方から迫ってくる狼を『魔探』で切り伏せる。


「ちょっと量が多いな。あいつを使うか。飛べ『不死鳥』。こい『蛇腹』」


 剣から鳥の姿に変わった「不死鳥」はピェロロロと鳴きながらゴブリンのもとに飛ぶ。

 そしてキリヤは鞘から『蛇腹』を抜く。


「『蛇腹・三頭』」


 キリヤはかつての『蛇腹』の持ち主が使っていた技を使用すると、剣先が三つに別れ、狼たちを切り裂いていく。

 そしてキリヤ自身は『不死鳥』と『蛇腹』の攻撃をかいくぐった敵を切り伏せる。


「これでラスト!」


 さすがに魔剣三本を使っただけあり、多数の敵相手に無傷で勝利を収める。


「戻れ、『不死鳥』『蛇腹』」


『不死鳥』を剣の形に、『蛇腹』を元の形に戻し二本を鞘に納める。


「最初に『魔探』で感知した以上の数だったな。……『魔探』」


 キリヤは『魔探』を地面に突き刺し、魔力感知を発動させる。


「……なるほど。壁から際限なく魔物が現れてくるわけか。これはまともに戦ってるとこっちが持たないな」


 キリヤが探知をしたわずかな時間でも、新たな魔物がキリヤに近づいてくる。


「……逃げるか。『風魔』」


 キリヤは鞘から『風魔』を抜く。


「『風魔・疾風』」


『風魔』で風を起こして一気に走り、魔物から逃げながら先に進む。


「見つけた」


 そしてようやく上の階層に繋がる階段を見つけ、上の階層に上がる。



 _____


 上の階層に上がり、『魔探』を地面にさし魔力感知をする。


「……みんな動いてるな。フレイナとレイシスタは先にこの階層に居るのか。一番上は、三層ほど上。というかそこにかなりの人数が集まってるな。……おかしいな?」


 キリヤは『魔探』を地面から抜き、探索を始める。

 そしてしばらく歩くが、先ほどの階層と違い一体も魔物と会わない。


「やっぱり魔物の反応が無い。ほんとに妙な場所だな」


 結局一匹も魔物とは会わず、代わりに二人の人に出会う。


「あれ、キリヤ!」


「キリヤくん、思っていたより早く会ったわね」


「よう二人とも。確かに早く会ったな」


 キリヤ、フレイナ、レイシスタの三人は偶然にも合流し、歩きながら会話をする。


「下の階層はたくさん魔物が居たけど、この階層は驚くほど居ないね」


「そうね。魔力の温存になるからありがたいけど、こう広いと体力の方が持たなさそうだわ」


「だね。そういえば魔剣って魔力切れとか無いの?」


「普通にあるぞ。魔剣は魔力が無くても使えるけど、その代わりに魔剣は自分で魔力を回復しているからな。俺が魔力を補えない以上長時間使用はできない」


「なるほど。つまりキリヤを倒すには持久戦か」


「でもキリヤくん魔剣何本も持ってるわよね。その数の魔剣相手に持久戦なんて出来るの?」


「……確かに。ねぇキリヤ、キリヤって何本くらい魔剣持ってるの?」


「何本と言われてもな。……百本」


「「え!?」」


 フレイナとレイシスタは足を止め、驚いた表情でキリヤを見る。


「……なんてな。さすがに百本は無いよ」


「そ、そうよね」


「お、驚いた~。さすがに百本は相手にできないからね」


「けど五十本くらいはあるけどな。まぁ攻撃以外に特化した物も混じってるが」


「「………」」


 キリヤの言葉にフレイナとレイシスタは互いに顔を見合わせる。


「レイナ」


「えぇ、これは簡単にはリベンジさせてもらえないわね」


 二人はため息を吐きながら、キリヤの後を追った。


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