第29話 無形迷宮での試験開始

 全員が迷宮に入ると、担任から通信魔法が入る。


[これより試験を開始する。死なない程度に頑張れ。では試験開始!]


 通信魔法がきれると共に、無形迷宮に散らばった生徒は一斉に動き始める。



(キリヤ視点)


「……さて、まずは『魔探』」


 キリヤは鞘から『魔探』を抜く。そして『魔探』を地面に突き刺し、魔力を探知する。


「……周囲にいくつか反応があるな。この階層に見覚えのある魔力が二つ、フレイナとレイシスタだな。他には……上に一つ、ディルだな。あとは一番遠い場所、三階層ほど上にクラスメイトの魔力があるな。ってことはここは最低でも四階層か。そして、」


 キリヤは『魔探』を地面から抜き、背後でうなっている狼の魔物に向けて剣を構える。


「早速魔物のお出ましか」


 狼はキリヤに襲い掛かる。そんな狼を、キリヤは『魔探』で真っ二つに斬る。

 半分に別れた狼は地に落ちる。


「それほど強くないな。ついでだし、素材も貰っておくか。こい、『分解短魔剣ぶんかいまけん』」


 キリヤは鞘からナイフを抜く。そのナイフもまた魔剣。そのナイフの力は『分解』。様々な物質を分解するとが出来る。


「『分解』」


 狼にナイフを当てると、狼は肉、毛皮、血、内臓ときれいに分かれる。その中でも、魔物が共通して持つ魔物の心臓。魔物の魔力が込められた石、「魔物石」をポケットにしまう。


「さて、行くか」


 キリヤは『分解短魔剣』をしまい、『魔探』で魔物を避けながら上の階層を探した。







 ______________

(フレイナ視点)


 試験開始と共に、フレイナは迷宮内の探索を始める。


「【ファイア・バード】」


 フレイナは小さな火の鳥を数体出現させ、迷宮内を歩き始める。そして程なくして、蛇の魔物が現れる。


「早速お出ましってわけね。でも残念」


 フレイナの周りを飛ぶ火の鳥が蛇に向かって行き、蛇を燃やし尽くす。


「後ろのあなたもね」


 さらに火の鳥は、壁に擬態してフレイナの背後に迫っていた蛇を燃やす。


「壁に擬態する魔物ね。普通の子だったらやられてたかもね」


 フレイナが出した火の鳥は、魔力に反応して自動的に飛び、対象を燃やす。


「さぁ、どんどん進みましょうか」


 フレイナは火の鳥たちと共に先に進む。



 _________

(シエスタ視点)


「【クリエイト・アイス】」


 シエスタは氷の弓を片手に迷宮内を進む。


「無形迷宮。奇妙な場所だなぁ」


 シエスタは警戒をしながら進んで行く。そして曲がり角を曲がると、目の前には小鬼の魔物、ゴブリンが数体鎮座している。


「ゴブリンか。ここからなら気づかれずにやれるね」


 シエスタは氷の弓矢でゴブリンを狙う。


「【アイス・マルチアロー】」


 魔法陣からゴブリンの数だけの氷の矢を放ち、気づかれる前に全てのゴブリンを撃ち抜いた。


「よし。この調子でどんどん行こう!」


 弓を降ろし、レイシスタは先に進む。

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