第7話 神たちの想い

 マンションの一室と変わらない居住空間。


 薄暗い部屋の中、那月はベッドで静かに寝ていた。


 パジャマ姿の寝顔はとても無邪気で幼く見える。


 成人女性とは思えないほどに。


 そして、那月を取り巻く七柱の神はそれを見つめ続けている。


 惣神そうしん呪神じゅしん銃神じゅうしん宅神たくしん衣神いしん商神しょうしん武神ぶしん


 身体はなくとも常にある。


「よく眠っています」


「仮にとはいえ、一度死んでいるからな。いまは身体を休めせねばならん」


「生きている限り魔力があふれ出す魔揺まようを止めるためとはいえ、心が痛む……」


「起きたら美味しいものを食べさせてあげまッス」


「あの子は優しい子。あの時、ビルや壊れた車のことまで考えてた」


「金がかかるとかじゃねえ。本心、真心まごころでだからな」


「ガーッハハハ、しかも自分が死んだ事より、わしらに手間をかけさせた事に落ち込むぐらいだからな」


「あの子は全く変わっていません。あの時からずっと……」


「惣神──、センセーほど那月を知っているわけではないが、それはよく分かる。あの子は本当に良い子だし義理堅い。何せ、スピールも僕が探理官たんりかんだった頃の物を使っているんだからね」


「そんな子を放っておくわけにはいかん。那月は優しいが、危ういのも確かだ」


「だから俺らは人間を捨て神になった。損得抜きにしてな」


「現実の世界では破壊を引き起こす魔獣のような扱いになる。制御できなければ始末。当局はそう判断してしまう」


「みんなのために苦しんで、助けた子が殺されなきゃならないなんて、納得できない!」


「帰る家があって、笑顔でいる方がいいに決まってまッス」


「ガーッハハハ、まったくだ。邪悪を倒し、皆を救って何が悪い」


「ゆえに我らが那月の居場所を見つけた。まあ、創ったともいえるが」


「それが当局の力が及ばない、精神世界の一つ、夜の世界です」


「夜は暗く、全てを闇に隠し、存在しても見えなくなってしまいまッス」


「それは当然、負の感情や思想も含まれる。人を暗黒へと誘う魔の元となる」


「その魔の元を具現化した夜獣やじゅうを、那月がスピールでたおし──」


「俺が都市神とししんから秩序を守った報酬、那月の稼ぎとして神貨しんかを預かる」


「仕事をして、美味しいものを食べさせて、きれいな服を着て、私たちといる那月に寂しい思いはさせない」


「確かにな。だが、いくら神貨があったところで母親や弟には会えねえ。なんとか代わりにならなきゃな」


「ええ、この子の笑顔のために私たちが支えなければなりません」


 決意を新たにした神たちは、温かく穏やかな表情で那月を見守り続けた。

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