第2話

 案の定、僕はトップの成績をとった。が、僕の頭の中はあの女性のことでいっぱいだった。寝ても覚めてもあの女性の姿がちらつく。雑念…ではない。少なくとも僕にとっては、必要な感情だった。雑念に近いが雑念からは限りなく遠い。大事な感情。胸に手を当てると、ほんのり温かい。この感情を大切にすると決めていた。初恋だから。

そんなことを考えながら、僕は眠りに落ちた。


 「ここは…?」

 ふわふわとしたところ。ここがどこなのか見当がつかない。上なのか下なのかすら分からない。感覚器官も役に立たない空間。ただただ漂う。漂って、漂って、どれぐらい漂ったか忘れてしまった。何も感じないし、何も考えられない。雑念がなくなった代わりに、退屈な日々を送る。今日も明日も変わらぬ日々。明後日あさって明々後日しあさっても同じだろう。何年後も、何十年後も、何百年後も、平和で空虚な日々を過ごすだろう。なんて退屈なんだろう。こんなはずじゃなかったのに。


 「ハッ!」

ふと目を覚ます。何という夢だろう。悪夢と言うのだろうか、否、うなされてなどいないし、違うだろう。何も感じなかった。変化のない空間。もちろん、自分の外見も、年齢も、果てには寿命までも変化しない。時が止まったよう、という表現がぴったりの空間だった。今考えると恐ろしい。

 喉が渇いたので、階段を降り、一階に行った。そして、冷蔵庫からジュースを取り、イッキ飲みする。大丈夫です!ビールじゃないですよ!

 

 信じられないものを見た。会えるはずなどないと思いこんでいた。自然と鼓動が早くなる。そこには、白髪はくがの王女様が居た。来てくれた。待っていた。心のどこかで期待していた。

片方の目が異様に長い髪で隠れているところを見て確信した。ゆっくりと近づいてくる。形を持った奇跡が。緊張のあまり、体が硬直する。声が聞こえる。

『………て。』

あまりよく聞こえなかった。僕は意識を手放した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あの日、僕は一種の病にかかった るり @k197

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ