第5話

 庭の風景が少し殺風景だった。花壇もなければ、樹木もない。砂利が一面にしかれ、塀の手前にベンチが一つ。まだらに整備された庭に段差はなく、また足を砂利で滑らせて遊んでも平均的な高さを整えているのがわかる。土地を平らにするって結構難しいと思うんだけど、職人はすごいと思った。








 田舎の豪邸だ。もともとは荒れ果てた空間だった。草花が適当に生えてて、足の踏み場もなく、廃墟が崩れて崩壊していた。また時折魔獣当たりが森林から飛び出してくるものだから、非常に危険だった。




 また住宅街からも外れた場所だ。小さな住宅地としてあったものだけど持ち主が死に、誰も相続せず放棄されていた。それを土地名簿やわざわざそれを千葉の柏までいって調べた。地方のインフラは崩壊し、土地の名簿などのデータを見るのは千葉、埼玉、神奈川にいかないと見れないんだ。






 国庫に返還されていたため、わざわざ買った。50万円だった。本当に田舎の立場がないね。崩壊しているんだから無料にしろと思うけど。ただ固定資産税は崩壊したことによって土地の価値がないと判断されてる。だから0円。いらない土地を住んでくれるのはうれしいらしかった。




 人の手がつかないとどこも荒れていく。




 それが今では豪邸がたっている。






「どう思う、蛆虫君」




 僕の後ろをよちよちとついてくる白い蛆虫。最初は人間の赤子ぐらいの体格が、怪人をくったことでまん丸に太っている。ただ一体を食べたにしては小さい。僕が尋ねると小さな顎をにちゃにちゃと動かしている。返事でもしているのかな。まったくわけがわからず苦笑した。




 庭を確かめ、豪邸を確かめ、蛆虫君がよちよちと僕の足元付近で動きを停止。








 本当にこの家を建てるのに苦労した。ただ見るだけでその思いが僕の心を支配する。




 後悔かもしれない。




 悲痛な叫びかもしれない。






 その結果と過程は大きく違うんだよ。




 建設費0円、材料数百時間の乱獲。しかもDランク怪人導入したうえでの乱獲。八千代町だけでなく、下妻も筑西にも結城にも足を運んでのプレイだ。坂東市あたりには手を出さなかった。これはあくまで結果の中の過程。




 その理由が戦争であって結果でもある




 10カ月前の戦争。




 坂東市を8割ほど実効支配した悪の組織。名はパンプキン。かぼちゃの巨大な魔獣が首領だ。紫の外郭をもち四方に1つ目ずつついている、計4つの目をもっている。また地面に体が埋まっていることから地中から緑の触手を出してくる。それはどこにでも出現し、坂東市内では大体その触手がいる。その触手は魔力も感知し、気配も感知し、パンプキンが本気を出せば視界も共有できるといった優れもの。




 環境制圧型であり、たった一体でフィールドを制圧する魔獣でもある。




 幹部には球型の灯りを一本の触手で顔の前に垂らす怪人がいる。皮膚が魚類でぬめっとした青白い鱗の魚人だがランクはD。




 あとは野生の魔獣を触手で誘導して攻撃する手法を使ってくる。その触手は魔獣が好む甘い香りを出し、魔獣がその地点にくるまで香りを出し続ける。来たら香りを消し、別の触手が香りを出すという連続誘導。




 坂東市の悪の組織パンプキン。その侵略は下妻、八千代町、境町、野田にあたるものに対して魔獣を誘導して送り込んだ。




 その誘導によって僕たちは大きな被害を負った。




 鵺はともかく、八千代町が大体被害を負った。






 結果をいえば僕たちの勝利だ。




 相手の戦力も力も削り切ったし、和平において結構分捕ったものがある。またこれ以上刺激して惨劇を繰り広げたくもなく坂東市で魔獣狩りはしなかった。










 一応和平する相手が坂東市を支配する組織だ。気を使ったというか、手を出しづらかった。




 またこの際にティターノバが同盟を提案し、それを受け取った以上、僕は手を出せなかった。






 手を出す気もなかったのだけれども、むしろそれが狙いだったのだけども。




 同盟をティター率いる鵺が結んだ以上、僕の立場は停戦という形をとったのだ。






 下妻を支配する秘密結社鵺の武力。八千代町のご当地魔法少女の僕。お互いは表向き敵対し、警戒をする形で干渉をしない体を装っていた。大首領である以上、全部マッチポンプなんだけども。争う必要すらないんだけども、魔法少女である以上、怪人と手を結ぶのは世間体が悪い。怪人と堂々と手を結ぶと人間社会から居場所をなくすんだ。






 悪の組織に落ちたヒーローの行く先は地獄。




 ヒーローが悪から改心しても、社会に居場所はない。居場所といえば同じ属性のヒーローが拾ってくれることぐらい。戦闘から足を抜けなくなるのだ。平穏な日常や人間社会を平和的に過ごすことは難しくなる。裏切りは永遠に裏切りだからね。






 そこで表向き敵対をし、ただ裏では僕の組織だからお互い手を結んでいる。






 ここからは結果に至るまでの過程だ。






 そんなときに坂東市方面から触手が侵略してきたのだ。緑の刺々しい大きな触手が地中からぽつんと一つ立っていた。まるで看板かのように立っていた。八千代町も下妻も道路、畑関係なく立っていた。ただ乱雑に置かれているわけじゃなく、等距離で生えていた。






 これだけなら魔獣か魔力をすった自然の植物の暴走で終えれる。




 ただそれを発見して数日後、坂東市方面から魔獣の群れが大侵攻してきたのだ。触手を道しるべとした魔獣の侵攻。その触手がない部分、また適当に腐らせた部分には魔獣が来なかったため間違いない。






 狼型の魔獣、昆虫、カマキリであり、ムカデのような肉食の虫。空を飛行するスズメの形をしていても、鷹のごとき大きさの魔獣がひたすら八千代町を目掛けて大侵攻。




 その数はわからない。一度の侵攻は100ほどいたらしい。八千代町で侵入された数はそのぐらい。






 また下妻市に対しても大侵攻してきた。この際防衛にあたった僕の怪人たちは死ぬことはなかったけれども大損害を受け、当時18体しかいなかったDランク怪人の3体が負傷。Cランクの令嬢のごとく怪人も、まぶたの上と下に切り傷がある凶悪な男の怪人もけがを負っている。仲間を庇うためまた先陣を切っていたためだ。それらは僕の組織の幹部であったため、魔石を使用し回復はさせた。ただ魔石自体が手元に少なく、他の怪人は自然治癒か自分での回復魔法を優先させた。






 秘密結社鵺でも野良怪人を防衛に回し、通りすべてを封鎖。また道路でなくても開けた畑などには怪人を3人で必ず組ませて行動させた。全ての道を封鎖することはできずとも、侵略ポイントがわかれば重点的に防げる。ただ素通りさせれば市内に入り込まれる。薄く広く、魔獣の集団を見れば、すぐさま逃げれるよう、生き残れるようの配置だった。




 市を一つ管理するのは難しく、いくら怪人が強力でも被害を出さないというのは不可能だったんだ。




 それでも下妻市においての戦闘は鵺の被害のほうがおおきく一般人の死亡は少なかった。また鵺の被害も裏切りそうな怪人ばかりに危険地帯に送り込んでいた。だから実質的な被害はなかった。ティターが偵察を坂東市に送り込み、魔獣の軌道を推察し、その情報をティターが僕に流した。




 ただ八千代町ではそれどころでなく侵入してきた魔獣の対処でいっぱいだった。パニックになる人々を僕の怪人が誘導し、時に恐喝してでも安全な場所へ避難させた。地元のすたれたラーメン屋の駐車場に人々を待機させ、周囲を怪人で囲んで護衛していた。




 その最中にも空中からスズメの見た目でありながら、鷹のごとく巨躯が人々を狙ってくる。




 それを令嬢の怪人に迎撃させ、凶悪そうな見た目の怪人はひたすら人々のパニックを抑え込むため、声を張り上げていた。




 他の怪人は空中を地上を警戒していた。




 空中にいる魔獣は弓で迎撃し撃ち落とすこともある。肉弾戦になれば怪人が壁となり人々の盾となった。








 一般人も200人ほど死んだ。みんな食われた。これが一次防衛線。




 二次防衛戦をすぐさま開始。八千代町の分散した人々を複数の箇所にまとめて護衛する作戦にしたのだ。薄く分散しても突破されたとき被害が大きくなってしまう。それならある程度まとまったほうが護衛もしやすく安全に思えた。




 でも、防ぎきれない数が多すぎた。




 あまりの魔獣の数に怪人だけでは手が足りなかった。そのためか一般人も武器を手に取り、集団で動いていた。むろん令嬢怪人あたりは止めたが、聞く耳をもたない。それどころか身を守るための必要な措置だと怒鳴られ、僕は怪人あたりに手を引かせた。




 相手の気持ちはわかる。




 でも僕の怪人の気持ちもわかる。




 別に僕は他人なんてどうでもいいし、怪人だってきっと思ってる。それでも必死に守っている以上、いうことを耳に入れてくれる価値はあると思う。






 ただ名誉のためにいっておくと、八千代町の地元の人々じゃない。




 地元の人々は別の場所ににげていて、残った少ない人は基本怪人のいうことを聞いていたからだ。




 勝手に行動した人々は自称自警団と名乗っていた。余所者だろう。僕も余所者だけどね。




 まあ自分の身を守る意志は大切だと思う。ただ他人が被害にあったから武力が必要だとして自主的に動くのは状況的に判断できないんじゃないかなと思った。




 でも結局自警団も死んだ。僕の怪人が誘導する避難ルートから勝手にそれて、別の建物に立てこもった。その建物は魔獣の通り道だとティターのデータにはあったので、逃がそうと説得は怪人がした。ただ聞く耳をもたず、そのままだ。ただ僕の怪人が身を削って守った人々は素直に言うことを聞いた。あくまで戦闘集団と素人自警団の差がそこにはある。








 そして魔獣が通り道とし、餌となってくれた。










 一般人が募ったスコップや包丁をもっただけの自警団も抵抗はしたものの魔獣の前では歯がたたず、大虐殺だ。とっさのときに命を奪うことができない人もいたし、命を奪えてもそれを続けて生かすことはできない人もいる。たいていが食われて死んだ。






 そんな動きが八千代町全体で勃発だ。自警団を名乗る集団がいくつも生まれ、僕の怪人だけでも収集がつかなくなっていった。武器をよこせといわず自分で守るのは大切だと思う。ただ一部、僕の怪人たちの装備がずるいといっていた人もいる。地元の人ではなかったけど、たぶんどこから流れてきた余所者なのはわかった。






 だって田舎特有の監視の目でなく。




 どうすれば相手から利益をとれるかという都会の価値観をもっていた人だったからだ。




 だから無視させた。




 数少ない地元の人々は基本混乱をさけてくれるし、邪魔をしたりもしない。時に町を守るため協力もしてくれた。それでも大侵攻の前にほとんど死んだ。ちゃんと生き残りはいるけれど、その際生き残った人は逃げた。こんな場所に住んでたら命がいくつあっても足りないから仕方ない。




 一応現在は2人地元の人がいるけど、当時は50人ぐらいは地元の人がいた。




 人々を複数のまとまった地域にまとめる策は失敗。二次戦争は失敗に終わり、別の防衛線に方針を変えた。自警団が勝手に魔獣を倒すこともあるけど、大体が囮の魔獣であって、本隊を前に蹂躙された。




 それらの命が食われる時間を利用して別の作戦を展開。




 下妻市内の勢力、鵺に坂東市に逆侵攻をかける指示を出した。このままいくと防衛に回された怪人が他人のために命を失うことになる。僕の作った怪人は僕のものだった。






 それをティターは了承した。ティター率いる鵺の軍団。当時は蝙蝠ジャガーもダガーマンティスもシャークノバもいなかった。だから首領自ら怪人を率いた。Dランクの怪人はいたけどCランク以上の上級怪人はいなかった。Dランク怪人、ティターがお試しに作った怪人はいた。現在は大隊長クラスになっていると思う。その怪人は蟻の顎を持つ、薄い羽根を背中に生やした怪人だった気がする。




 3幹部の下の部隊。それを統括する隊長クラス。






 そのDランク怪人を隊長として、ティターの逆侵攻。




 Aランク1体 鵺の首領ティターノバ




 Dランク1体 ティターが作った羽アリの怪人




 Eランク7体 野良怪人




 Fランク 10体 野良怪人






 19体もの怪人が坂東市へ逆侵攻をかけた。また下妻には鵺の基地および人々の住宅地に警備20体ほどの野良怪人を配置してもいた。ただ粗暴は悪いため当時は防衛した怪人が人々を恐怖で支配したこともあった。ただ必要措置でもあるし、状況が状況なだけに処罰はなし、注意のみにさせた。最初ティターは排除しようとしたけど、八千代町での人々の防衛の難しさを知った僕が止めた。






 当時蝙蝠ジャガーやシャークノバ、ダガーマンティスがいればと思う戦争はなかった。本気で思える戦いだった。ただこの戦いがあったからティターは作ったんだろうと思う。今ならこの戦争を楽に進めれる戦力はお互い揃ってる。








 でも当時の八千代町の戦力だけでは無理で、一般人を守ると怪人が動けなくなる。そのためいうことを聞かない人を無視し、指示に従った、誘導したポイントに集まった人々のみを防衛。




 そのため浮いた怪人を防衛から攻撃に転じさせた。




 ただそれまでにDランク怪人は8体ほど負傷した。




 また攻撃準備にする際での魔獣の猛撃がすさまじかった。




 ティターが相手のルートを抑えるまで、ひたすら坂東市から魔獣が進撃をしていたのだ。




 そんな中人々を安全な場所まで誘導した僕の怪人は偉いと思った。




 自称自警団が命を使って時間を稼いでくれる。無駄死ににしか見えないけど、まあおかげで時間は稼げた。




 ひたすら八千代町の魔獣を駆除し、やがて坂東市からの魔獣の数が減っていく。打ち止めかもしれないし、ティターが逆侵攻をしてくれたおかげかもしれない。その当時は本気で助かったと思った。




 さすがの僕も魔法少女としては厳しかった。ちゃんと僕も戦っていたんだ。一人で戦い、人々や怪人がいないところで敵を腐らせた。空中において僕の怪人の弓が届かない場合は、魔法で倒したりと忙しかった。戦闘自体は簡単だけども、数が数。雑魚であっても群れると対処が難しい。




 一人で複数の箇所は見れないからね。




 そのうえで鵺との連絡も行っていたし、指示も出していた。




 僕が鵺のところにいくほうが多かった。




 連絡ごときで怪人を使うのも難しく、また大混戦のため怪人を行動させるとそれが被害にあう可能性もあった。








 それに怪人も疲労困憊だった。少しでも休ませたかったのだ。








 Dランク怪人をぶちこんで八千代町から魔獣を掃討したものの損害を受けた。2人は負傷した。その時点で11体は負傷した。怪人の強さは誰もが知る。人間のような見た目であっても中身は怪人。




 人間基準とは違う。




 体力も魔力もそう。Dランク怪人の強さは冒険者で例えるならCランクでもBランクになれるレベルの実力者。それがようやく一対一で立ち向かえるレベルだ。冒険者の基準と怪人の基準は大きく異なってしまう。持久戦において怪人のほうが上だ。耐久力だって全然比べちゃいけない。冒険者のDランクがパーティーを組み、バランスよい職業でまとまり、協調性があって初めて戦っていい相手。




 下手なパーティーでは死ぬ。あくまで全員仲良しこよし、裏切りとか報酬を独り占めとか考えるパーティーじゃない。




 魔獣の合計は420体。死ぬときに奪った魔結晶の数があるから覚えてる。これを18体のDランク怪人Cランクの令嬢怪人、凶悪そうな男の怪人Bランク。怪人の質は鵺よりもはるかに上。腐敗した埃ロッテンダスト。それで撃退し、八千代町内の魔獣は掃討。




 魔法少女だっていたんだよ。時間さえあれば負けないし、防衛しないで攻撃に転じれば大体何とかなる。ただそれだと平穏には程遠いし、一応の理念と崩れるからできなかった。縄張りをもつと守る義務が発生するから大変だった。




 これが坂東市の悪の組織パンプキンの強さ。数百もの魔獣を周囲に展開する力、魔獣発生地帯だから仕方ないけども、戦力が時間を立つたびに自然に増えるのはずるい。




 八千代町、下妻市、野田は同時進行された魔獣を駆逐しきったようで、今のところパンプキンの領地になっていない。八千代町、下妻はわかるけども、野田市も単独防衛に成功したようだった。ただまあ、野田市には地元の戦力がいた。Cランクヒーローいるし、Eランク、Dランクの魔法少女合わせて2名いるし、Bランク冒険者パーティー一つとCランク冒険者パーティー1つ。あとはそれ以下の冒険者含めて80人ほどいたらしい。また魔獣殺しの高ランク冒険者を東京から雇ったとか。僕なんてマッチポンプとはいえ、鵺の勢力を利用したのに。




 ただ鵺とか八千代町の武装人間タイプ怪人も僕の勢力だから。実質一人の勢力といえる。




 境町は情報が入ってこない。






 




 Bランクの凶悪な怪人とCランクの令嬢怪人2体と僕で反撃に出た。八千代町に生まれた触手を腐らせた。またその触手を腐らせる際地中に侵食した根の深さもしった。触手の下に根があり、根は長く続くのを感じ取っていた。腐らせる魔法を触手から根まで浸食させて理解いした。




 ひたすら腐らせた。






 触手が僕を認識した際、地中に逃げるぐらいした。八千代町の触手を駆逐し、反撃へ。




 坂東市に侵入し、触手が逃げるのをひたすら追いかけた。逃げられたから今度は暗黒球を放ち、逃げる瞬間に直撃させ、根まで浸透させた。僕の魔力は逆侵攻にもたけており、放った魔力がつきるまで根を腐らせたことだと思う。




 そのころになるとDランク怪人も何体か戦場へ復帰し、僕と合流。




 ひたすら腐らせていく。坂東市内の魔獣は怪人たちに任せひたすら掃討。




 途中ティターと思える戦闘跡を発見。火炎の魔法のあとがあり、焼けきれた触手を発見。ティターは触手の弱点を炎と判断したことがわかった。それなら怪人たちに火炎の魔法を許可。人間タイプの怪人は戦闘能力こそ化物タイプに負ける。でも、応用力、対応力は人間タイプのほうが勝る。






 あとは僕は腐らせる魔法を降り注ぐだけだった。








 そこでパンプキンを坂東市内で追い詰め、ティター率いる鵺と合流。途中戦闘になりそうだったが、そこはティターと僕でうまくごまかした。またパンプキンの首領を魔力探知でも探れないため、地中を汚染して脅すことで表に出させた。




 毒を地中にばらまく脅迫。




 坂東市は触手によってパンプキンの監視下にある。






 どこもパンプキンの監視があるならと僕はあえて脅して見せた。そしたら触手が僕とティターの目の前に現れ、和平交渉となった。






 坂東市内の公園で僕はベンチに座った。背もたれに両手を伸ばし、足を組む。その後ろに令嬢怪人がたち、僕の真横に凶悪な男の怪人がたった。




 ティターは鵺の怪人とともに滑り台付近で待機




 触手は僕とティターの間だった。






 あとは僕とティターで脅迫しつつ、お互い仲が悪いふりをして、相手を叩いたのだった。




 和平の中で相手の会話が自分優位にもっていこうとしたため、僕は公園から市内へ出た。またティターも同じ考えのようで鵺を率いて、市内にある触手の殲滅。および環境破壊を徹底した。パンプキンが作成した監視触手、エネルギーを遠方へ流す根をひたすら排除。








 時折魔獣や怪人が出てきたけど腐らせた。中途半端に腐らせて放置してたら、ティターは腐らせた部分を燃やしたし。




 僕は悪くない。ティターも悪くない。どっちも悪くない。










 やりすぎた結果パンプキンの幹部、灯りをともす球体を一本の触手で顔に垂らす怪人、提灯怪人が慌てて現れ、土下座された。




 鵺が見える位置で暴れてたし、ティターからも僕が見える位置いた。




 お互い仲が悪いし、監視するけど、好きなことをして攻撃するスタイルだった。




 だから幹部の土下座はお互い見れた。






 またボスの姿を見たかったから、そいつの皮膚を一部腐らせた。ティターはその腐った部分を燃やした。




「ボス出てこないと、こいつ腐敗させて殺す」




 必死の僕のお願いで、ボスは場所を指定。先ほどの公園にしろとティターが抗議し、僕は幹部を足蹴にして一蹴した。それでもボスは場所を動けない。嘘偽りはないと悲鳴を上げていた気がするので、本当なのだろうと思った。ここまでされて被害を拡大するほど無能ではなさそうだった。




 幹部の案内のもとティター率いる鵺、僕率いる人間タイプ怪人の集団が警戒しながらついていく。鵺の野良怪人は僕たちを警戒もしてたけど、僕のほうの怪人はのらりくらりとしていた。しょうがないマッチポンプだとしってるの、僕たちだけだ。




 坂東市内の農村。さびれた農村の畑、人の手がないにもかかわらず整備された緑。作物はないが、地中に突き出た触手の緑が一定間隔で並ぶのは見ていて気持ちがよかった。




 その畑に君臨する一つの化物。四方に一つずつ眼光がある。紫いろの固い外皮。一軒家を思わせる魔獣。坂東市を支配するにふさわしい莫大な魔力。一定間隔で並ぶ触手が動き出す。ただ攻撃の意思はなさそうだった。




 たった一体で市内の魔獣を誘導し、監視し、掌握する。幹部一体のみで構成員が少なくてもできてしまう化物。




 これが環境制圧型の恐ろしさである。






 本体に出会ってかぼちゃの化物と知った。ここに来る前に街並みを監視する触手を魔力探知で感知。それは地下にいたから腐敗魔法を地表にばらまいといた。結構時間がたたなきゃ消えない濃度の魔力。触手が地上にでたらすぐ腐食する濃度。




 この場にいる触手も出会ってすぐ腐らせた。全部じゃない。近くにあった触手が動き出した瞬間、反射的に腐らせただけだ。






「このまま、君が引きこもれるように整えてあげようか?」




 僕は確かそんなことを言っていた気がする。優しく丁寧にお願いし、やりすぎたらティターが話を割り込ませていった。










 滅ぼすことは簡単ではある。それでいて生かした理由は坂東市が魔獣の発生地帯であること、それを制御するのがパンプキンの魔獣であったこと。人語を理解しているということだ。また坂東市内において人口は6000人もいる。この人口の多さを全盛期とみて少ないとみるか、この崩壊世界の中で多いとみるかは人それぞれ。






 僕は多いと見た。




 ティターも同じ。




 人の管理も行き届き、またパンプキンに対して忠誠を尽くす人もいる。






 また僕とティターが攻め込む際人々の姿を市内で見なかった。そのことからパンプキンの有能性がわかってしまい、簡単に滅ぼせなくなったのだ。魔獣を下妻、八千代町へ誘導することを禁じ、慰謝料として大量の魔石要求。足りない分は手に入れたらもらうとした。




 そうしてまた再び公園へ戻った。






 また別の触手が増えてた。腐らせ燃えた触手の横でだ。






 賠償を払わなければ腐らせるだけと公園に新しく生えた触手を腐らせた。






 ティターは公園を燃やしてた。




 その会話のさなかで僕とティターはお互い喧嘩をするふりして、鵺とパンプキンの同盟はなった。








 ついでに豪邸も立てさせた。材料は集めるから、職人をよこさせた。加工賃払わない。パンプキンに負担させた。安全は担保し、坂東市から八千代町までくるさいの職人の安全は守った。途中職人を引き抜こうともしたが、職人はパンプキンのほうが食事を確実にもらえる。負傷した際も休みも定期的にもらえるからと辞退された。治安もよく、束縛は厳しいが安全な環境だといわれた。




 悪の組織で侵略してきたくせに、意外と人道的すぎて腹が立った。




 ただパンプキンも結構酷い管理体制を敷いているが、この崩壊世界においては妥協できるレベルなのかもしれない。




 宗教禁止。




 国家への愛を禁止。




 家族愛、異性愛、同性愛、他種族愛においての禁止事項はない。基本自由。結婚の自由も認めている。




 暴力の規制。




 パンプキンに逆らったものへの暴力行為以外規制している。




 侮辱を禁止。




 正当防衛の有無はパンプキンのリテラシーによって定められる。




 性行為の規制。


 夫婦以外の自由な性行為は禁止。恋人関係であっても5日の間に一日のみを限度としている。




 独自に成果を出した際、市内の好きな相手と行為をできる。ただし結婚してない人間に限る。自由な行為は男女問わずだ。また成果を出し行為をする際2日ほど休みを与える。その際行為に選ばれた相手は結婚、もしくは恋人の確認が取れない場合は拒否できない。ただし選ばれた場合休みを10日とし、女性であれば避妊成分の果物を与える。また選ばれた相手の食事を1日豪華にするといったものもある。




 ほかに選ばれた場合は市内を安全に移動するための護衛も与えられる。遊ぶための安全策とも言えた。




 労働時間12時間を最大としたもの。子供がいる場合の労働制限なども色々パンプキンは用意している。






 パンプキンにおいて性別差別は一切なく。




 能力があればどのような容姿でも、どのような相手でも、どのような性別でさえも受け入れる。能力がなければ別の仕事も与えている。単純作業ではあるが大体労働をさせられる。






 死体の焼却の禁止。パンプキンの魔獣が栄養として分解するため、家族であっても死体は渡さなければいけない。家族の死であっても泣くのを我慢しなければいけない。我慢して抑えきれない涙は罰則はない。それ以外には拘束などの刑罰がある。




 これがましなんだ。いかれてる




 ただそれ以上は考えなかった。何故なら豪邸から叫ぶかのような声が届いたためだ。その感情のこもった叫びは思いにふけるのをやめさせた。




「あたしは行かないといってるでしょう!」




 この声は女性のものだ。聞き覚えのある声だ。僕は肩をすくめて歩き出した。途中、出会ったDランク怪人 赤のメッシュがはいった前髪の女性型怪人にであった。僕はそのまま蛆虫を指さした。






「これ運んどいて、いつもの場所ね」






「はい」




 僕の指示にすぐ応対し、蛆虫を抱きかかえる怪人。僕は持てないけど怪人は軽々と持ち運ぶ。










「この声ってあの子のだよね、役割ばかり押し付けられて可哀そうな子のだよね」










「はい、院長のものです」






 僕は少し思案し、思い至るのは客のことだ。魔法伝導性が高い馬車、あれは都会でなければ手に入らないと思う。埼玉では大宮、越谷。神奈川では横浜、千葉では千葉市、市川あたりなら手に入るレベルのものだ。




 だがあれのランクは一都三県同盟クラスの中でも都のほうが有力かもしれない。








「東京の人たちかな。大変だなぁ15歳で院長させられて、今度は客相手にいじめられるのか。可哀そう。本当に」




 僕は腕を組み、薄く笑みを浮かべた。








「よしっ観察しに行こう」




 僕はそうすることで次の目的を決めた。蛆虫を抱える怪人に手をふって、豪邸へ急いだ。








「待ってるんだぞ、院長。15歳で院長させられて、他人の子供のために人生つぶして、今度は他人に自分をゆがめられて可哀そうな子供。今観察しにいくから!!」






 そう院長と呼んだ哀れな人生を送る子供のもとへ急いだ。




 僕の人生であれほど運命が過酷な人を知らない。






 ゆえに僕の心を突き動かすのは、ああいう苦労人だけってことだ

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