第7話 ヒーラーと魔女

音羽は、トウコと会って、少しだけヨキの話をしてみた。

「友だちが、末期癌を克服したんだけど、その子なんか霊力が復活してしまって、普通の仕事が手につかないみたいなのよね。」


トウコは、「分かりますよ。わたしも、子どもの時から、霊感が強くて、怖いものまで見ちゃうから、見ないようにしてたら、そのうち、そんな霊感はなくなったかの様になってました。

でも、何年か前に、寝る間も無く仕事していた時、プライベートも、本当にキツくて、それを全部手放した時、また、覚醒してしまって、、、、

普通の仕事は、出来なくなりました。

なんか、無理なんですよね。

わたしは、そこで覚悟を決めて、ヒーラーとしてのトレーニングを積み、こちらの道で生きていくことになりました。」

ニコッと優しく微笑むトウコは、「今日、お会いできるんですね。その方に。お名前は?」と音羽に尋ねた。


音羽は、トウコにヨキが来ることを、まだ伝えてなかったし、本当に来るのかも、確定ではなかった。


「友だちの名前はヨキ。

トウコさんは、全てお見通しなんですね。

来る気になったんかな。ヨキ。

ここでトウコさんといることは伝えてます。」


数分して、ヨキが疲れた様子で入ってきた。

ヨキとトウコは、お互い自己紹介しあっただけで、ヨキは、トウコに何も言わなかったし、トウコもだだ、微笑みながら、ヨキを見つめていた。

コーヒーだけ飲み干したヨキは、

「今日は、お邪魔してごめんなさいね。わたし音羽の友だちなので、またお会いしますよね。

これからもよろしくお願いします。

わたし、仕事があるのでお先に失礼しますね。」

と言って、席を立った。


トウコは、ヨキの姿が見えなくなると、音羽に向かって真剣な顔で言った。

「ヨキさん、ものすごいエネルギーとパワーが、ありますね。

だだ、それを全部、自分の内側にパンパンに溜めてるから、このままでは、、、、

また、病気になってしまう。身体への負担も相当なはず、、、あのエネルギーをちゃんと使わなければ、、、外に向けて、、、」


音羽は、「そのまま伝えますね。もし、ヨキが求めれば、トウコさんのところに相談に行かせますね。」と、トウコに言ったけれど、

トウコは、「もちろん。お役に立てるなら、、、

だだ、相談には来ないと思うな。」と答えた。


トウコと別れた直後、ヨキから電話がかかってきた。

「音羽?あのさ、トウコさん、わたしのこと何て、言ってた?」


「ものすごいエネルギーとパワーがヨキにはあるって、、、でもそれを自分の内側に溜め込み過ぎてるから、このままでは、また病気になるって、、、、

トウコさん、お役に立てるなら、いつでも相談に来てくださいって言われてたよ。

トウコさんにも、今のヨキの様な時代があって、それを乗り越えてきた人だから、何か良い方法を教えてくれると思うよ。」


「トウコさんは、透明な人、善良な人。

あの人は、霊界とか、この世的でない存在を見ることを、そして、それらからのメッセージを伝えることを許されてる、レベルの高いヒーラーさんね。

そして、人のエネルギーの調和をとってあげるヒーリングを、天のパワーを使わせてもらって出来る人。


、、、、、分かってるの。本当は、全部分かってる。

トウコさんから言われることも、そして、何をすれば良いかも。

でも、それをしたくない気持ちがあるから、今は出来ない!したくない!」


ヒーラーと魔女か、、、

言葉で伝えなくても、お互い分かるんだ。

そして、ヨキは、自分で言ってた通り、全部見えてて、分かってても、感情が邪魔して、そこから抜け出せない。だから、苦しいんだね。


音羽は、心の中で呟いた。

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