新たな種

@sorano_alice

第1話 超越種と

 長い戦争の末、決着はついた。

 戦争に勝利した人間たちは国を治め安寧の日々を送るつもりだったが新たな真実、そこからすべてが始まった。


 人間族よりも、悪魔族よりも、エルフ族よりも上位互換の種族、超越族が存在する、と。

 それをきっかけに自分が人間種だと思っていた人物が超越種の人間だったりし、力の差は歴然、身体能力、知能、どれをとっても敵わない。国を治めていた人間種のローデンハイツ家は滅ぼされ強制的に超越種のシュラウド家が国を治める形になった。

 人間や悪魔さえも超える超越種と上下関係が生まれ超越種のシュラウド家が支配する形になった。

 ローデンハイツが信頼していた部下、アーデル・シュラウドはその事実を知りローデンハイツを殺害し、他の超越種もアーデル・シュラウドを護衛し人間と超越種の力量がわからされた。

 アーデルは皇帝となった男である。まだ超越種自体の謎は多い。


「支配は嫌いだな…」


 街を当たり前のように一人で歩くロングで赤髪の彼女はアーデルの娘、ローゼ・シュラウド。16歳。彼女は特にアーデルと違い地位に興味がない。自分を人間種だと思っていたがアーデルが超越種だったことから超越種ということになる。

 彼女はアーデルの娘、護衛が必要だがその意味がないのだ。人間種が逆恨みで彼女に向かってきても超越種の彼女は簡単に倒してしまうからだ。それほど超越種と人間種には大きな差がある。


「おはよー、ローゼちゃん」


「エトレアか」


 カトレア・ベルネッタ。18歳。オレンジがかった金髪でロングの髪をしている彼女は人間種だ。しかし友達のように仲が良い。表向き上下関係にはあるが彼女のように特に種族を気にしていない人物からしてみればエトレアに対して警戒心もなければ仮に2つ上の人間に攻められても簡単に返り討ちにできる。

 彼女は人間だがローゼの友人ということや腕の立つ銃士ということから銃撃隊の隊長を務めている。人間種、幼さからして不満に思うものも少なくはないだろうがアーデルの娘、ローゼの友人ということでその点で我慢している。ローゼは超越種と共にアーデル、皇帝の娘という圧倒的地位を勝手に得ることになった。


「そういえばローゼちゃん超越種なんだよね」


「そういうことになっているけどそもそもどこで気づいたんだ?」


「ローデンハイツとの戦場で証明されたようなものだよー、あの戦争をきっかけに人間は絶滅危惧種になったけどねー」


「そうか、あの戦争は人間と超越種。まだ情報はエルフや悪魔たちには流れてなかったにしても一部には流れてるからもう他の種にも知れ渡っているだろう。あの魔王や剣裁きが得意な悪魔以上の種か…」


「そうそう、招集がかかってるよ」


「私も行かないといけないのか?」


「今回は重大らしいよ、できるだけ内密にってね」



 魔王は滅びた、今は野良悪魔同然。一人の長髪の紫の髪の男の悪魔には超越種の噂が届いていた。人間の中に超越種と呼ばれる存在がいた。知能も身体能力もどれをとっても悪魔ですら敵わない。神の種族。そんな種族が無数に存在している。魔王すら凌駕する存在。それを知ってからか彼は剣で殺めることをやめた。しかし、剣を握るたびに思うのだ。


「この剣を握るたびに思うのだ。俺は超越種すら凌駕する存在なのでは、とな」


 

 エルフの森では何者かの放火や族長の死、呪いのように次々と起こる負の連鎖。エルフの森ではエルフたちが集まって会議をしていた。現族長エルミールによる会議。20代前半。緑髪の彼女は深刻そうな顔をしている。


「噂によると超越種という新たな種が生まれたと耳にしました、そうですよねミリナ?」


 ミリナと呼ばれたエルフもまた緑の髪をしていてこちらは18歳程度。


「はい、そのようです。人間族が返り討ちにあったとか。皇帝が変わったとか」


「いずれ私たちの元にも攻めてきそうですね、この森をかつて放火したのも、族長を殺害したのも超越種だった可能性はありますね」


「乗り込みましょうよ、その街に」


 命知らずなのかそういったのは水色の髪をした短髪のエルフ。金瞳をしている。16歳程度のエルフだがいつも場違いなことを口にする。


「貴方は何を言っているのですかアスターヌ、貴方の扱いには困ります」


「私たちが超越種?なんかに臆しててどうするのですか?」


 アスターヌは超越種の恐ろしさをわかっていないのか無鉄砲なことを口にする。


「エルミール様、アスターヌは放っておきましょう」


「そうですね、森のためにも同盟を組みたいところですが受け入れてくれるでしょうか」



 白髪の男が座っている。アーデル・シュラウドだ。他にも騎士団団長や宮廷魔術師団。


「髪の色は母上に似たんだろうな」


「どうしたの?ローゼちゃん?」


 カトレアが覗き込む。


「何でもない」


「来たかローゼ、そして銃撃隊のカトレア、他のメンバーも集まった。では始めよう。またしても新たな事実が発覚した。超越種にとっては強敵になりうる存在、異能種の存在があるらしい」


「なんですか、それは」


「普段は超越種ではないにしてもある一定の物を触ると超越種以上の力を発揮するらしい」


「そのものというのは?」


「それは分からない、しかし、超越種の勘によると4人存在するらしい」


 人間と超越種の勘は別物だ。人間は当たりはずれがあるものの超越種の勘はほぼあたりといってもいいほど当たるほど圧倒的直観力も兼ね備えている。

 人間のカトレアには勘で決めるのかと疑うレベルだが超越種の人物はほぼ確実に4人いると言える。しかし同時に嘘も通じない。


「ふーん、なるほど、帰る」


「おい、待てローゼ、お前にも危機があるということだぞ?」


「私は身分が欲しいわけでも最強の種族になりたいわけではない」


 父上のおかげで普通の暮らしはできそうになさそうだ、と頭を抱えるローゼだった。



 翌日、王宮が騒がしい。ローゼは兵に話を聞くことにした。


「どうしたの?」


「大変です姫、宮廷魔術師団の団長ヨアネさんが何者かに殺害されました」


 昨日の会議にも顔を出していた。


「姫の勘で犯人分かりませんか?」


「いくら超越種だからってここってときに勘が働いたりしないよ」


「そう簡単に行きませんよね」


「でもヨアネは宮廷魔術師団団長だったけど人間種だった、昨日の話を聞いていた人物かな」


「昨日何を話されていたのですか?」


「会議の内容は言わないように言われてるからね」


 昨日の話で異能種と呼ばれる存在が4人いるらしい話を受けた。普段は超越種でないにしても、という言葉から異能種は超越種じゃないとして考える。そうなると人間種のヨアネは異能種だった?そうなると後の異能種は3人。ヨアネを殺害したのは会議の話を聞いていた超越種の誰か、と考えていたが。


「どうやら噛み跡があったようです」


「昨日の会議と関係ないのか」


 昨日の話と無関係の可能性もある。こういう時に勘でも働けばいいがここぞという時に出てくれない。


「超越種の可能性は高いな」


 ヨアネは人間種で優秀で優遇されていた、次に狙われるのはもしかするとカトレアなのではないのだろうか。嫌な予感がする。そうなるとヨアネが異能種ならカトレアは異能種ということになるけれど。


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