第30話 アウトローの弟子と言っても過言ではない(ロット視点)

「どうしたロット。こっちは大変なんだ……」

「いえ、父上。この領地に蔓延る魔物をオレの力で蹂躙しようかと」

「そ、そんなことが――」


 ロットは、最後までトレイが言う前に転移魔法で外へ移動していた。普段のトレイなら使用できない、転移魔法で。それもドス黒い、魔法陣を駆使して。


 領民がほとんどいなくなっトレイ伯爵は爵位を剥奪されそうになっていた。それを食い止める唯一のチャンス。


 それが、今回のロットだ。


 しかしロットは自分を過信するあまり気がついていなかった。自分が持つ力を知らずに魔物を蹂躙していく。


 地面は割れ、草木は枯れ、魔物以外の動物は息絶え。

 そう、彼が使っているのは『憎しみの魔法』なのだ。


 決して、人を救済する魔法ではない。

 他者を傷つけるために存在する魔法と言っても過言ではないのだ。


 だが、その事実に彼は気がつかない。

 ロットは自分の力に呑まれている。


 憎しみが、彼本体と言ってもいい。

 今はただ、己の力を試しているだけ。


 次第に、ロットは思い始めた。

 力を与えてくれたアウトローも憎いと。


 オレより力を持っていて、上から目線で魔力を与えてきた。なんて憎たらしいのだと。


 アウトローは一からゼロ、それを一に戻す魔法を成功した魔女だ。しかし、ロットの裏切りは予期していなかった。


 彼女もまた、ガルドへの憎しみに溺れていたからだ。

 打倒ガルドを掲げるあまり、同じ憎しみを持つロットを見つけてしまったあまり、油断してしまっていた。



 ロットは一通り蹂躙し、満足したあとはどこかへと転移魔法で移動した。


 その直後のこと、倒れた魔物たちが目を開き出す。

 黒いオーラを放ちながら、鼻息を荒らげながら。


 さすがはアウトローの弟子と言っても過言ではない男だ。倒して命尽きた魔物たちが蘇り始めたのだ。


 魔物たちの目は真っ赤に充血してしまっている。


「「「ゴォォォォォォォォォ!!!!」」」


 領内に響き渡る雄叫び。

 しかし、領内に真っ当な領民はすでに存在していない。


 重罪を犯し、罪から逃れるために逃げてきた人たちで溢れかえっているのだ。


 ただ、その人たちが罪を償うことになるだけである。

 その中の一人に、トレイや執事長が含まれているのかは定かではない。


 ただ、ガルドを追放したのは失敗だった。

 それだけのことである。

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