第41話 悩みは尽きない
「困った」
休日の街の広場、ぱっと見美人のルルルンは、その容姿に似合わない困り顔で唸っていた。物件情報を手に、うーん、うーんと首を傾げる。
マギリア食堂も屯所管理も休みなので、起業のため、拠点となる事務所候補を休日を使って検討したり内見する予定なのだが、先日小耳に挟んでしまった『魔女討伐』のパワーワード、それが気になって色々な事が手につかない。
「関わらないほうがいいのか……」
魔女の事はノータッチで行く予定だったのだが、先日の一件がルルルンのその気持ちを揺らしていた。
「無関心なのは無責任なんじゃないのか?いやいや、そんな事より、事務所を見つけないと、でも、うー、あー」
ぐわんぐわんと、脳内をめぐるやりたい事とやるべきなのか分からない事が巡る。
「ケイスケ」
ルルルンをこの名前で呼ぶのは一人しかいない。
「ライネス?」
探していたのか、ライネスが小走りにルルルンに駆け寄ってくる。
「どうかした?」
「店に行ったら今日は休みだって言われたからな」
「うん、今日は会社のために物件探しをしようかなって」
「そ、そうか、起業のためだな」
「ライネスは?何か用があって探してたんだろ?」
「あ、いや、用というほどの事じゃないんだが、色々と落ち着いたから、ただ会いに」
何故か、言いかけてライネスは目を逸らす。
「そうなの?」
「あぁ、その、色々とあった事、カインから報告があって、その事を聞こうかと思って……だな、それだけだ」
「そっか、俺もライネスに話しをしたかったんだよ」
「最近、あまり話せてなかったからな」
お互いバタバタとしていて、数日会っていなかっただけなのだが、お互いその期間がとても長く感じていたのか、なんだか久しぶりだねぇといった空気が二人の間に流れていた。
「ライネスは今日暇?」
「暇ではないが、公務は部下に任せてある、なんだ?」
「時間があるなら、話しながら、物件探し付き合ってよ」
笑顔でライネスを誘うルルルンに裏はない、裏はないが、ライネスはこの誘いに裏があるのかと勘繰ってしまう。
「それは、まさか逢引の誘いか?」
余裕のある素振りでライネスが強がるが。
「そうだけど、だめか?」
あっさり認めたルルルンに、ライネスは完全に弄ばれていた。無意識の行為に内心動揺しまくっているが、ライネスは表情を変えず必死に耐えていた。
「いいぞ、付き合おう、仕方ないな、ケイスケの夢のためだからな、ためだからな!」
「なんでそんなに固いの」
なぜかクソ真面目なライネスを見てルルルンは思わず笑ってしまう。
「そんなの……仕方ないだろぉ」
ものすごく小声でライネスがぼやく、聞こえなかったルルルンはどうかした?という感じでライネスを覗き込む。
「行くなら早くいくぞ!!」
ライネスはルルルンの手を引き、歩き出す。
「あはは、なんか久しぶりだな、この感じ」
楽し気なルルルンと対照的に、怒っているのか照れているのか分からないライネスの表情がなんとも印象的であった。
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