第12話 そうしてまたひとり
次の日俺は外に出ていた。お気に入りのあのクッションは部屋に置いてきた。
「はーー」
指を組んで大きく伸びをする。
そう、伸ばし伸ばしにしていた草むしりを再開したのである。怠惰からの脱出への第一歩だ。
とか言って、あの初日とは違ってやる気が出ないのであの時よりは範囲は少なめでやめるつもりだが。しかしあの日と違って軍手を持っているのでやりやすさは桁違いだ。
朝起きたらあの部屋の俺が寝ていた枕元につなぎと軍手が用意されいた。やろうかなーとは思ってたけどそれが決定打となった。
ついでに玄関に長靴とタオルとペットボトルの水。うんうん。熱中症には気をつけるさ。って外、別に暑くはないんだけどな。
以前から感じていたが甲斐甲斐しく世話をされている気がしてならないのでいつからか何となく
この感じ嫁というより母親だけどな。しかも甘い。欲しいものをほぼくれる。
本やゲームはくれないけど食事に関しては甘々だ。昨日は豚カツにから揚げにエビフライでうまかった。野菜も食べるがいいとサラダも用意されていたが。味噌汁と白米とともに。
せっかく出してくれたんだからちゃんと食べたさ。
でもロボット? は無理らしい。
芝刈り機でもあれば便利だなと思っているけど出てこないし、人手として漫画に出てくるようなアンドロイドの自立型ロボットもいいなと思うけど出てこない。
なに基準なんだろうな。いまだによく分からない。
黒い壁に近づくと馴染んでしまった獣の声が大きくなる。どんな姿をしているのだろう。
熊とか、虎とかを想像してしまうがRPGに出てくるようなザ・魔物なのだろうか?
そんなことを思いながら草を抜く。
抜いた草は脇にほおっているので生えてる草の上に抜いた草が重なっている。
抜いた草はどうするのが正解なのだろう? 誰もいないのでこの状態で文句を言う人はいないので気楽なものだ。山になったら考えるさ。
一段落した頃にもう一度伸びてから手を洗って綺麗にした。
今日はこの後走ることにしているから部屋に戻るのはもう少し後だ。
何となく、戦う力のない俺をどうにかしてくれようとしたケーシャに悪い気がしてせめて走って体力でもつけようかなといったところだ。
思い出せる限りでラジオ体操を真似てみる。音楽をぼんやりと口ずさみ、分からなくなって同じ動きを繰り返す。
アキレス腱を交互に伸ばしてからようやく走る。
足がつったって本当に誰も来ないから慎重にやろう。
建物の周りには比較的背の高い草がない。なので今日はそこをぐるぐるといけるだけ走るつもりだ。……目が回らない程度に。
意外とでかい気がした建物なのにこうして周ってみるとすぐ1周してしまう。目の錯覚だろうか?
ゆっくり走っているのに3周目から息が切れてきた。太ももがじわじわとしてくる。今すぐやめたいがぐっとこらえてもう1周。
走り終えて膝に手をつき深く息を吸って吐く。何回か繰り返して落ち着いてきたのでもう1周……。
太ももからの痛みによる抗議を受けてしばらくしてからやめたが明日が怖い。もう少し前にやめるべきだった気がする。
しっかり湯船でマッサージをしよう。
へろへろと歩いて部屋にたどり着くとお風呂に直行。そこにはお部屋さんが疲労に効く炭酸ガスの入浴剤を置いておいてくれた。隣に溶かれて飲むだけになっている泡立ったプロテインチョコレート味。なるほど無駄にするなということか?
ごくりとひとくち。ただのチョコレートドリンクのようだったので美味しく飲み干した。
温まった浴室に入ってザラザラと入浴剤を入れる。シュワーと溶けている間に体と髪をぱーっと洗うと湯船に入る。シュワーとしたのがじわーっときて気持ちいい。寝そうになるが頑張って足のマッサージをする。
ふと顔をあげると操作パネルに無かったボタンがある。泡。……あわ? 泡風呂用か?
好奇心につられて押して見ると浴槽の脇と下から細かい泡と水流がじゃわじゃわーと出てきた。
「これ! 温泉とかにあるやつ!」
テンションが上がってしまった。入浴剤入れたのにいいのか? とも考えたが特殊だろうから問題ないだろうなーと気にせず堪能することにした。
楽しい。
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