第10話 そばに居たその人物

佐藤さんに『お弁当を作ってきたい』と言われてからの。

初めてのコンビニアルバイト。

俺は心臓がバクバクしていた.....。

女の子にそもそもお弁当を作ってきてもらうなんて.....有り得ない事だ。

これまでの経験上で.....だ。


その裏で.....不安感が沸いていた。

どんな不安かといえば.....物凄く強い強迫観念だ。

実は俺はここまでしてもらうのは情けであり。


内心では佐藤さんも.....その。

俺を認めてないんじゃ無いかっていう。

そんな事を思う俺も馬鹿だけど。

こびり付いて離れない.....強迫観念。

俺を.....初恋を打ち砕いた.....あの女達の事。


『キモいんだけど』


それだけで.....俺は。

と思いながら見ていると。

横の自動ドアが開いて.....そして。

また何時もの様に佐藤さんが現れた。


だけど違う点がある。

俺に手を振っているのだ。

笑顔で、である。

俺はその姿に少しだけ苦笑しながら手を振り返す。

すると先輩の店員のおいちゃんが聞いてきた。


「あの子とお友達にでもなったのかい?」


「.....いえ。.....何というか色々あって知り合いになりました」


「.....そうなんだね。.....君は良い子だから貰ってくれるんじゃないかな」


「.....まさか。俺は.....誰とも付き合いませんよ」


そうかい?君なら.....大丈夫だと思うけど、とおいちゃんは笑顔を浮かべる。

初恋が打ち砕かれてから。

俺は色々な事を信頼出来なくなったからな。


欠けてしまったんだ。

心が、である。

そうしていると目の前にショートケーキを持って来た。

佐藤さんが、である。

俺は添えられているピンクの紙を見た。


「?」


「.....後で見て」


その様に言われて俺はお釣りを渡してから。

ショートケーキを袋に入れて渡してから.....横を見て先輩のおいちゃんが作業中である事を確認してから。

ピンクの紙を開く。

そこには、明日一緒にお弁当の食材などを買いに行きませんか、と書かれていた。


「.....食材.....か」


思いながら俺は少しだけ笑みを浮かべながら外を見る。

そこには.....佐藤さんが少しだけ恥じらいながら俺を見ていた。

俺はその姿に少しだけ身体が熱くなる。

明日は.....土曜日だな。

シフトは入ってない。


「良いかもしれない。その序でにカフェとかも」


思いつつ俺はメッセージアプリに返事を書き込んでから。

そのまま仕事を続行した。

そして帰宅の途に着く時に.....佐藤さんが俺を見上げてくる。

来てくれるんですね。有難う御座います、と言いながら、だ。


「.....ああ。丁度.....色々な物を追加で買いたかったしね」


「.....そうなんですね。.....お金をあまり使えないですけど.....良いですか?」


「こっちが出すに決まっているだろう?俺のせいで.....」


「駄目ですよ。そこは割り勘でいきましょう」


佐藤さんは可愛らしい細い指を立てる。

俺は頬を膨らませた可愛い顔に、そ。そうですか、とだけ回答する。

そして一緒に帰宅していると。

見慣れた背中を発見した気がした。

燕ちゃんである。


「.....燕ちゃん?」


俺は、おーい、と言いながら手を振る。

するとこっちに気が付いた.....様にして手を振り返してくる。

それから、お兄さん、と寄って来てから.....横に立っている佐藤さんにビクッとする.....燕ちゃん。

それから燕ちゃんは頭を下げた。


「初めまして。私.....石破燕です」


「初めまして。.....私は佐藤苺です」


言いながら.....2人は暫くしげしげと相手の顔やら服装を見ていた。

そして.....その中で燕ちゃんが先に反応する。

あ。もしかして.....お兄さんの恋人さんですか?、と。

その事に佐藤さんが、フあ!?、と訳の分からない言葉を.....え!?

俺は真っ赤に赤面する。


「.....そ、そんな事無いよ.....」


「.....そうですか?.....でも.....何だか見た事ある顔だなって思います。昔からずっと一緒に居た様な.....そんな顔ですね」


「.....えっと.....」


佐藤さんは青ざめながらビクビクしている。

何故こんなにもビクビクしているのか分からないがその中で燕ちゃんに向いてみた。

燕ちゃんはどうしてこの場所に、と聞いてみる。

すると燕ちゃんは、はい。私は.....お兄さんと夕日に会いに来ました。

最近は調子が良いみたいですから、と言いながら、だ。


「そうなんだね」


「.....そ、それに.....私は.....」


「?」


そこまで話して燕ちゃんは佐藤さんを見る。

佐藤さんはハッとした様にして.....燕ちゃんを見た。

俺は?を浮かべていたが。

バチバチと火花が散り始めた。


「.....そういう事ですね」


「.....そういう事です」


ちょっと待て。

お兄ちゃん何も分からない。

どうしたものか、と思っていると。


睨み合っていた.....燕ちゃんが、んー?、として。

思い出した様にハッとした。

それから、佐藤さんって昔.....お兄さんの友人の様な知り合いでしたよね?、と思い出した様に言った.....は?

俺はカチンと固まる。

それから驚愕しながら.....佐藤さんを見る。


「.....なんで.....それを.....」


「.....だって.....忘れもしないですよ。文化祭の時に記憶していたとても可愛かった同じ学校の女の子?だったかな。.....似ていますよ。幼い頃に貴方にお会いした記憶があります」


「.....ちょっと待て.....どういう事だ!?」


「正確に言えば.....結構、佐藤さんはお兄さんの近距離にいた様な覚えがあります」


幼い頃の記憶って結構合ってますからね。

とふふんと胸を張る燕ちゃん。

その事に佐藤さんは、真っ赤に赤面しながら.....顔を覆う。


俺をチラ見しながら.....であるが。

訳が分からないんだが.....そんな馬鹿な。

佐藤さんが.....そんな近距離に?

え.....?

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