犬を痛めつける羊飼

 羊飼が人から貰った犬に対して

「お前の祖先は狼なのだから、お前もきっと羊を襲うだろう」

 と事あるごとに言い続けた。それに対して犬は

「そんな気は毛頭ありません」

 と返していた。それでも羊飼は

「今は従順でも、いつか私や私の可愛い羊達に牙をくつもりだろう」

 と犬を何度も鞭打った。そう言われた犬は、そうしたくなったのを我慢して

「いいえ、私の牙は貴方達を襲う狼から貴方達を守る為の物です」

 と弁明した。羊飼は信じられなかったので

「なら狼が居なくなったらお前が狼になる気だろう。心は善で欺けても、悪の血潮は欺けないのだ。その牙が何よりの証拠だ」

 と犬の牙を抜こうとした。到頭とうとう犬は我慢ならなくなって唸り声を上げて言うには

「そんなに狼がお望みなら、お望み通り狼になってやろうじゃないか」

 こうして羊飼は貰った犬を狼にしたせいで、その牙に八つ裂きにされてしまいましたとさ。


 このように、人の古傷をつつくと、自分が傷つく事になるのだ。

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