第50話 冬華は日に日にまして勘が鋭くなっていく

 体育が終わって教室に戻ると昴が正座して彼女さんが説教をしていた。

「またなんかやったのかな?」と思って2人のことを見ていると

「ねぇ、冬華の彼氏さん。私が水を飲みに行っている間にすー君がクラスメイトの女の子と練習してたのだけど、そんなこと許されると思う?」

 と彼女さんが聞いてきたので

「許されないな」

 と答えると

「ちなみに冬華の彼氏さんはそういうことをやる?」

 そう聞いてきたので

「やるわけがない。やったら冬華がこの前みたくガチギレするからな」

 と答えると

「何の話をしているんですか?」

 と更衣室から戻ってきた冬華が僕に聞いてきたので

「昴がさ、彼女さんが水を飲みに行っている間に違う女の子と練習してたんだと。だからそれが許されるかどうかと、それをやるかどうか聞かれたんだ。」

 そう答えると冬華が

「なんと答えましたか?」

 と聞いてきたので

「「許されないし、やらないよ」って答えた」

 と僕が言うと冬華が「そんなの当たり前ですよね!」と嬉しそうに言った。


 冬華が昴の彼女さんと話していると説教を終えた昴が僕の所にきて

「足がしびれる…」

 と僕に言ってきたので

「自業自得だ。今度からしないことだな」

 と僕が言うと昴が

「ああ、もうやらないわ。正座はきつい」

 そう言うと続けて

「話は変わるんだけどさ、お前、クリスマスの日空いてるか?二次創作物販売会に行かないか?俺たち2人で」

 と言ってきたので

「お前また彼女さんに内緒で行くつもりか?」

 そう呆れながら聞くと

「…きちんと言ったぞ!大丈夫だ!」

 と少し間を開けて言った。

「学ばないやつだな。僕は彼女さんに怒られる未来しか見えないんだが」

「ばれなきゃセーフだ!宮都はどうする?」

「そのことを冬華に言ったんだけどねぇ…」

 そう言って彼女さんと楽しく話している冬華を見ると

「あ~、聞いたけど行かせないって感じか。まぁ、バレなければ問題はないと思うぞ」

 そう昴が安直な考えを言う。それを聞いて僕も「ばれなきゃ問題はないか」と思い始める。

 だが、その考えは打ち砕かれることとなる。

「宮都、内田さんと私が行ってはならないと言った例のイベントに内緒で行くつもりなんですか?」

 という冬華の一言によって。

「なんでわかったんだ?」

「内田さんと一緒にいるときは内田さんからろくでもない提案を持ちかけられている時だと学びましたので。あと、この前の土曜日に行きたいと言っていましたから、「もしかしたら」と思いまして」

 と冬華が言ってきたので

「冬華はすごいな」

 と僕が言うと

「当たり前ですよ。自分の彼氏のことを把握していない彼女はいませんよ?」

 とさも当然だと言わんばかりに答えると続けて

「ちなみに宮都はそのイベントにコスプレイヤーの女の人を撮りに行くんですか?それとも同人誌を買いに行くんですか?」

 そう聞いてきたので

「基本的には好きな絵師さんの同人誌を買いに行くけど、好きなキャラクターのコスプレをしている人がいたら撮るかもな。男女問わずに」

 と答えると

「女性のコスプレイヤーのことを撮るのは完全に浮気ですよ?やってはいけないことなんですよ?それぐらいわかってください」

 そう怒気を込めて冬華が言ってきたので

「そうなのか。なら同人誌は?」

 と聞くと冬華に

「どんなものを買うかにもよりますね。ちなみにムフフなものは二次元であっても許容範囲外ですので」

 そう言われた。

「例えば、仮に今まで買った物は?それはどうなるんだ?」

「ムフフなものは処分しますよ。何言っているんですか?」

 そう当たり前の顔をして冬華が言ってきた。

 僕は「隠れて買うか…」と思っていると

「隠れて買おうだなんて思わないことですね。私、わかりますから」

 とくぎを刺してきた。

「なんで僕が心の中で思ったことがわかるんだ?」

「行かせないとなったら通販とかで買うのは安易に予想できますから」

 と冬華が当たり前の顔をして言った。

 ちなみに昴は冬華が彼女さんに密告したことによりクリスマス前日に彼女さんの家に泊まることとなったらしい。


 そんなこともありつつ毎週卓球の練習をしているといつの間にか球技大会の日になっていた。

 球技大会は1日目は開会式と各種目の予選、2日目は各種目の準々決勝、準決勝、決勝と表彰式を含む閉会式の2日間で構成される。

 ちなみに僕と冬華が出る卓球は開会式が終わったあとすぐに行われる。

 冬華と他のクラスの卓球を見ているといつの間にか僕たちのクラスの番になった。

 結果は1回戦は余裕で通過したが2回戦目で負けた。

 僕は

「1回勝てたからまあいいか」

 そう呟くとそれを聞いた冬華が

「ですね!負けたけど宮都との思い出が出来たので私は満足です!」

 と嬉しそうに話す。

 すると

「冬華ちゃん!惜しかったね!」

 と由希先輩が言うと

「ですね。ですが、楽しかったですよ?思い出が出来ましたから」

 そう由希先輩に冬華が話した。

 由希先輩と別れて教室に行くと

「宮都、勝てたか?」

 そう昴に聞かれたので

「1回戦だけな」

 と答えると昴が自慢げに

「俺たちは3回戦目で負けたぜ!」

 そう答えた。

「すごいな。初心者なのに」

「俺の彼女はバトミントン経験者だったから教えてもらったぜ!」

 そう昴が言うと

「すー君はすぐにへばったけどね」

 と昴の彼女さんが言うと

「それは言わない約束だろ?!」

 そう昴が言う。

 そんな昴と彼女さんのやり取りを見ていると僕の右手に何か暖かいものが触れたので見てみると冬華の手だった。

 いつの間にか近くに来ていたらしい。

「どうした?」

「2人のやり取りを見ていると急に宮都の手に触れたくなったので。ダメでしたか?」

 上目遣いで聞いてきたので

「いや、好きなだけ触ればいいさ」

 そう僕が言うと両手で触ってきた。

 2日目は特にやることもなかったので閉会式までゆったりと過ごした。

 閉会式で4クラスある1年生の中で2位だという結果を聞いて「俺らのクラスがんばったなぁ」と思った。


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