第42話 冬華が少しおかしい

 時間が経ち、土曜日。

 今日は冬華と通話しながら勉強をやる日だ。

 約束の時間になると、冬華から電話がかかってきた。

 僕はそれに出る。

「おはようございます。さて、始めましょうか」

 と言って勉強がスタートした。

 勉強するのは暗記分野。英語の単語、国語の漢字、世界史などだ。

 冬華と勉強を始めて2時間が経過したころ

「お兄ちゃん!お菓子食べよ!」

 と鏡花が言ってきた。すると冬華が

「あれ?女の声が聞こえませんでしたか?」

 と言ってきたので

「あ~、妹の鏡花だ。気にすんな」

 と僕が言うと

「鏡花ちゃんと話がしたいです」

 と冬華が言ってきた。なので

「鏡花、僕の部屋で食うか?」

 と聞くと

「うん!お菓子持ってくるね!」

 と言うとリビングに降りて行った。


 冬華と雑談をしていると

「お兄ちゃん入るよ!」

 と言って鏡花が僕の部屋に入ってきて僕の隣に座ると鏡花が

「誰と通話してるの?」

 と聞いてきたので

「僕の彼女だが?」

 と答えると

「あ~、冬華ちゃんか」

 と言うと続けて

「初めまして。お兄ちゃんがお世話になってます。妹の鏡花です」

 と鏡花が言った。

 すると何故か冬華がビデオ通話にして

『私は冬華です。単刀直入に聞きます。あなたは宮都のことを好きですよね?』

 と鏡花に聞くと冬華もビデオ通話にして

「はい。誰よりも好きです。結婚したいぐらいには」

 冬華の質問に鏡花が答えると『私も好きなんです。宮都を私に譲ってはくれませんか?』そう冬華が言う。すると鏡花が自分の気持ちを吐き出した。

「私はお兄ちゃんと死ぬまで一緒にいたいし、そばで支えたい。だから”嫌だ”って言いたいけど、お母さんから「お兄ちゃんとは法律上結婚できない」って言われたからあきらめるしかないんだ。ねぇ、お兄ちゃんと結婚して隣の家に住むんでしょ?だったら会いに行ってもいいかな?それなら私は認める」

 それを聞いた冬華が

『ええ。いいですよ。家に来るだけじゃなくて、結婚したら3人で遊びに行きましょう。有名な遊園地や温泉が有名なところに』

 と鏡花に言うと

「冬華ちゃん、その場しのぎの嘘ではないんだよね?信じていいんだね?」

 と言ったので

『はい。私は嘘が嫌いです。なのでその場しのぎの嘘ではありません。本心です』

 と冬華が答えると

「わかった。冬華ちゃんを信じる」

 と言った。

 この会話を聞いていた僕はと言うと「え?鏡花って僕のこと好きだったの⁈」と内心は混乱していたし、『なんで冬華がこんなことを聞いたんだ?最近冬華がおかしい気がする』と思った。


 そのやり取りが終わったあと、勉強を再開する。そしてそこには鏡花がいる。

 すると冬華から

「冬華、ご飯できたぞ!執事の代わりに呼びに来た!」

 と聞こえたので

『今日はここまでにしましょう。午後はやりません。私も勉強します』

 と言ったので

「了解。ほどほどにな」

 と僕が言うと

『宮都もですよ?』

 と冬華が言ったので

「わかった。じゃあな」

 と言うと

『それでは』

 冬華が通話を切る。

 そして僕は鏡花にさっきのことを聞くことにした。

「鏡花、いつから異性として僕のことを好きになったんだ?」

「長くなるけど聞いてくれる?」

 と鏡花が聞いてきたので

「ああ、いいぞ。聞くよ」

 と僕が言うと鏡花が語り始めた。

「お兄ちゃんは覚えているかわからないけど、小学校6年生の時に私、いじめられて身体も精神も心もボロボロになってたでしょ?その時にお兄ちゃんがずっと私のそばにいて「鏡花はよく頑張ったよ。」って私に声をずっとかけてくれたでしょ?その時に私、お兄ちゃんは私の味方だって思ったの。そして、落ち着いたときにお母さんから「宮都はあの時受験の追い込み時期で忙しかったけど、「鏡花の近くにいないとダメな気がする。いや、ダメなんだ」って言って自分から鏡花のとなりにいたの。」て聞いたんだ。その時にね、私、お兄ちゃんのことを思うと胸のあたりが”キュン”ってしたの。それからだったな。お兄ちゃんのことを意識するようになったのは。そしてこの前の事故がきっかけでその意識が好きという感情に変わったんだ」

 と鏡花が言ったあとに

「こんな妹きもいって思う?」

 と聞いてきたが

「きもくないよ。だって好きになるのは自由じゃん」

 と僕が答えると冬華が

「そっか。やっぱりお兄ちゃんはやさしいなぁ。冬華ちゃんに嫉妬しちゃうよ。お兄ちゃん。今日から家族として好きに降格するためにさ、お兄ちゃんの胸、貸してほしいな」

 と言ったので僕は

「いいぞ。いくらでも泣け」

 と冬華に言うと僕の胸元で声を出して泣いた。


 泣き終わると鏡花が

「冬華ちゃんのことを悲しませたらダメだよ?」

 そう言うと続けて

「顔洗ってくるね。お兄ちゃん」

 と笑顔で言って部屋を出ていく。

 そのあとに僕も部屋をでてリビングに昼ご飯を食べに行く。すると

「ごめん!私とお父さんの趣味で盛り上がっちゃったから昼ご飯作ってなかった!今日の昼はカップラーメンになるけどいい?」

 とお母さんが聞いてきたので

「いいぞ。」

 と僕が言うと、鏡花がリビングに入ってきて

「お兄ちゃんどうしたの?お母さんとお父さんがあたふたしてるけど」

 と聞いてきたので

「ああ、2人が趣味で盛り上がっちゃって昼ご飯作るの忘れてたんだってさ。というわけで今日の昼ご飯はカップラーメンになるけどいいか?」

 と聞くと

「うん!いいよ!」

 と言ったので

「お母さん、鏡花もカップラーメンでいいってよ」

 と僕が言うと

「わかった。今からお湯沸かすね!」

 と言ってやかんに水を入れてガスコンロにやかんを置く。

 カップラーメンを食べ終わると、少しゆっくりしてから自分の部屋に行って勉強をすることにした。

 鏡花が僕の部屋に来なくて少し寂しかったが、鏡花が成長したと思うと寂しさが嬉しさになっていった。


 一方その頃の冬華

 宮都と問題の出し合いを終えたあと、私はご飯を食べずにテスト勉強をする。

 私の専属執事が

「休憩してはどうですか?」

 と言ってくるが私はそれを無視してテスト勉強を続ける。

 すると

「冬華!いい加減にしなさい!」

 とお父さんが私の部屋の中に入ってきて怒鳴ったので私は一時的に勉強をやめる。


 ご飯を食べ終わると私は自分の部屋に戻って勉強を再開する。

 机に向かっていると

「冬華!お姉ちゃんが来ました!」

 と言って私の部屋に入ってきたので

「お姉ちゃん!うるさい!私の邪魔をしないで!」

 と怒鳴ると

「冬華、休憩したらどうですか?そんなに勉強にがっついても覚えられるものも覚えられませんよ?」

 と私を諭してきたが

「お姉ちゃんに関係ないでしょ!」

 と言って私は自分の部屋からお姉ちゃんを追い出して勉強を続ける。

 一心不乱に勉強をしていると部屋の外から

「冬華、お風呂に入ってね!」

 とお姉ちゃんが言ってきたので私は勉強をやめてお風呂に入りに行くことにした。


 お風呂から出ると、私は自分の部屋で勉強を再開する。

 勉強をしていると執事が入ってきて私に

「冬華お嬢様。もう勉強をしないでください。本当に身体を壊しますよ?」

 と言ってきたので

「私には勉強しか取り柄がないの!悪い点数とっちゃったら私の取り柄が無くなってしまうの!」

 と大きな声で言ったあとに「あなた、私の邪魔をするなら部屋から出て行って」と冷たい声で言う。

 すると、執事が

「邪魔はしないのでここにいさせていただきます」

 と言った。

 しばらく勉強をしていると首が痛くなったので顔をあげて時計を見てみると、午前3時ちょうどだった。

 私はテストがない日だと寝ている時間帯だけど、不安とストレスが原因なのかどうかはわからないが睡魔がこない。

 結果として私は一睡もしないまま朝を迎え、昨日と同様に宮都と通話をしながら問題を出し合う時間になった。

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