第38話 風邪をひいた冬華のお見舞いに行く

 次の日。

 朝起きると、冬華からメッセージが来ていた。

【冬華】すみません。頭が痛くて…。今日は学校を休みます。

【宮都】そうか。お大事にな。

【冬華】はい…。

 やり取りを終えると、僕は学校に行く準備をして家を出た。

 1人で歩いていると、由希先輩と偶然会った。

 すると

「あれ?冬華ちゃんは?」

 と聞いてきたので

「冬華なら休み。風邪をひいたらしいです」

 と答えると

「そうなんだ。今の時期寒くて乾燥してるからね。清隆君も気を付けてね?」

 と由希先輩が言ってきたので

「わかってますよ。由希先輩も気を付けてくださいね?」

 と言うと「うん!」と答えた。


 教室に着くと、昴が

「あれ?宮都といつも一緒にいる神宮さんは?」

 と聞いてきたので

「風邪を引いたんだと」

 と答えると

「そうなのか。テスト前なのにな…」

 と昴が言う。僕は

「冬華曰く、もう高校の勉強を終わらせているらしいから大丈夫だと思うよ?」

 と言うと昴が「お前の彼女、すごくねぇか?」と言っていた。


 午前の授業を終え昼休みになると、由希先輩が教室にきて僕を昼ご飯に誘う。

 僕はLETTERを立ち上げて、冬華にメッセージを送る。

【宮都】由希先輩と昼ご飯を食べてきます。

【冬華】冬華お嬢様が今、メッセージを打てない状態なので専属執事の私がかわりに打ちます。

【冬華】冬華お嬢様はいいと言っておりました。

【冬華】私個人からのお願いなのですが、放課後に学校に向かいに行きますので、冬華お嬢様にあっていただけないでしょうか?

【冬華】さっきから「みやとぉ、みやとぉ」とうなされているので。

【宮都】わかりました。というか、僕が聞く前に頼まれちゃいましたね。

【冬華】そうですか。ありがとうございます。それでは行ってらっしゃいませ。

 とメッセージがきたので由希先輩と部室に行ってご飯を食べる。

 食べ終わると、由希先輩が「私、やることがあるから」と言って部室から去っていった。

 僕も食べ終わると部室にいてもやることがないので教室に戻ることにした。


 教室に戻ると、昴が

「俺の彼女が呼んでる」

 と言われたのでついて行く。

 すると

「冬華ちゃんという可愛い彼女がいながら、なんで他の女とご飯を食べた?」

 と鬼のような表情で聞かれたので

「冬華には許可をとったよ。あと、一緒に食べたのは部活の仲間であり、僕と冬華の共通の親友だから」

 と僕は弁明する。

 昴の彼女さんが

「証拠を見せて!」

 と言ってきたのでLETTERを起動してさっきのやり取りを見せると

「ほんとだ…。あと、大金持ちなんだ…」

 と言ったので

「びっくりしただろ?」

 と僕が聞くと

「うん。冬華の彼氏さん、ごめんなさい!私、早とちりしちゃった」

 と昴の彼女さんが謝ったので

「僕の彼女のことを思ってのことでしょ?別にいいよ。誤解を与える行動をした僕も悪いし」

 と言うと「冬華ちゃんはきっと、このやさしさに惚れたんだね」と言っていた。

 誤解が解けたところで昴が

「今日宮都の彼女のお見舞い行くのか?」

 と聞いてきたので

「行くよ。それがどうした?」

 と聞くと

「お前の彼女、絶対心細い思いをしていると思うから、手を握ってやれよ?」

 と言われたので、僕は

「元からそのつもりだ。風邪の時は誰だって心細いからな」

 と答える。

 すると、昴の彼女さんが、

「私の時は言われないとやんなかったよね!それに比べて冬華ちゃんの彼氏さんは彼女思いのいい彼氏さんだよ」

 と言うと、昴のことを睨みつけた。


 午後の授業が終わると僕は今日渡されたプリントを持ち、冬華の専属執事の車に乗って冬華のお見舞いに行く。

 僕はお金持ちは”熱を冷ますために使うもの”を使うのだろうか?と疑問に思ったので聞いてみることに。

 すると

「いいえ。使っておりませんが。それは何ですか?」

 と聞いてきた。

「それをすると少し楽になるんです」

 と僕が言うと

「どこで売ってますか?」

 と聞いてきたので

「ドラックストアです」

 と僕が言うと

「わかりました。今すぐに向かいます」

 と執事が言った。

 僕はドラックストアに着くと、熱を冷ますために使うものの他に、スポーツドリンクを数本を買って車に乗り込み冬華の家に向かう。


 冬華の家に着くと「宮都、待ってたぞ!」と冬華のお父さんが出迎えてくれた。

 そして、冬華のお父さんの後ろについて行く。

「冬華のお部屋”」と書かれたプレートがぶら下がっているドアの前に立つと

「冬華、宮都君が来たぞ!」

 とドアを叩いて言う。すると

「宮都!」

 と言って思いっきりドア開け、僕を見ると「寂しかったよぉ」と言って抱きついてきた。

 僕は冬華に

「冬華は病人なんだから安静にしていないと。僕と一緒にベットに戻ろう?」

 と言うと

「うん」

 と言って素直に戻っていく。

 冬華がベットに横になると僕は冬華のおでこに手を振れると熱かったため、買ってきた”熱を冷ますために使うもの”をおでこに貼るために、冬華の前髪を片手であげる。

 貼ると「頭がひんやりして気持ちいい…」と言う。

 しばらくすると、「みやとぉ、のど渇いた…」と言ったので買ってきたスポーツドリンクを渡す。すると

「蓋が開けられないよぉ。みやとぉ、開けてよぉ」

 と言ったので開けてあげる。飲み終わると僕の腕を掴んで寝てしまった。


 冬華の寝顔を見ていると

「そろそろ時刻が午後6:00になります」

 そう執事が言ったので

「教えてくれてありがとうございます。僕は帰りますね」

 と言うと

「送っていきます」

 と言われたのでご厚意に甘えることに。

 車の中で執事が

「ありがとうございます。宮都様のおかげで冬華お嬢様の顔色もよくなりました」

 と言ってきたので僕は

「できることをしたまでですよ。気にしないでください」

 と返す。

 家の前に着いたので降りようとすると

「これからも冬華お嬢様のことをよろしくお願いします」

 と執事から言われた。


 side冬華

 私は朝起きると急に激しい頭痛に襲われ、その直後に寒気がした。

 私は近くにあった体温計で体温を測ってみる。

 すると、37.5℃であった。完全なる風邪である。

 私はすぐに私の彼氏である宮都に今日は学校を休むということを送った。

 その数分後に宮都から”お大事に”とメッセージが送られてきた。

 私は風邪薬を飲んだあと自分のベットで横になって目をつぶる。

 すると「お前よりいい人を見つけたから、お前と別れるわ。じゃあな」と言って宮都が私から離れていく夢を見た。

 私は起き上がると

「冬華お嬢様、”私から離れていかないでよぉ”と言われていましたが、何か嫌な夢を見たのですか?」

 と私の専属執事が聞いてきたので

「私から宮都が離れていく夢を見ました」

 私は素直に答える。すると

「安心してください。宮都様は冬華お嬢様から離れて行ってはいませんよ。熱のせいで見た悪夢ですよ」

 と答えた。

 そのあと、梅干しが入ったおかゆを食べて薬を飲んで寝ることに。

 しばらくするとドアをノックする音と同時に「冬華、宮都君が来たぞ!」と聞こえたので小走りでドアに行きそれを思いっきり開ける。そして周りを見てみると袋を持った宮都が本当にいた。

 私は心細かったのと寂しさからか甘えん坊になってしまった。

 ベットに行くと宮都が急に私のおでこに触ってきたと思ったら私の前髪をあげる。私は「おでこにキスでもする?!」と思ったが冷たいものをおでこに貼っただけだった。私は熱のせいで正常な思考ができていないらしい。


 熱が良くなってくると、次はのどの渇きを感じるようになった。

 私は「みやとぉ、のど渇いた…」と甘えん坊のように言ってしまう。

 すると、宮都はペットボトルを私に渡してきた。

 私は蓋を開けようとするが、風邪のせいなのか手に力が入らない。

 すると、私は「蓋が開けられないよぉ。みやとぉ、開けてよぉ」と自然と言っていた。

 ペットボトルに入っているものを飲んでのどの渇きがなくなると、急に眠気が襲ってきた。

 目が覚めるとそこには宮都の姿がなかった。

 どこ行ったんだろ?と思っていると

「宮都様なら帰りました」

 と私の専属執事が教えてくれた。

「私にひとこと言ってから帰ってよ…」

 と言うと、執事が

「宮都様からですよ」

 と言って紙切れを渡してきた。見てみると「風邪早く治せよ!それと寝顔可愛かったぞ」と書いてあった。

 私はそれを見ると心の奥底からじんわりと暖かくなっていった。

 私はこれを宝物にしようと決めた。






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