第28話 冬華がデレると可愛いのは常識である

 僕たちが教室に戻るとすばるはこの世の終わりの顔をしていた。

「昴、ドンマイ!」

「何がドンマイだ!どうしても見たい! あの、可愛い先輩達を目に焼き付けたい!どうしたらいい?宮都」

「とりあえず彼女さんに殴ってもらえ?正気に戻れ?」

「あのさ、宮都はわからんのだよ。あの先輩達の可愛さが!想像してみてくれ!」

「いや、まず知らんよ。見たことないし」

「宮都、お前人生の半分損してるぞ!」

「損してるのはお前だろ?お前の彼女さん可愛いじゃないか。彼女さんで満足しとけ」

 そう言うと

「宮都様、友達に忠告するのはいいことですが、他人の彼女を可愛いというのはいけないことだと思います」

「冬華の彼氏さん、冬華を大事にしてあげてください。他の女に目移りしたらダメですよ?私からの忠告です」

 冬華と昴の彼女さんから注意された。

「冬華、ごめんね、彼女さん、忠告ありがとう。でも、今は昴のことをたしなめるために言ったことなんだ」

 と言うと、

「そうですか。ならいいんですが」

 と言い、

「私は、スー君の教育が足りなかったらしいからもう一度してくるね!」

 と言って彼女さんは昴を引きずって去っていった。

「あの、その、宮都様はなんか私に言いたいことありますか?」

 と、唐突に聞いてきたので

「なら、宮都様と呼ぶのはやめて欲しい」

 と言うと、

「なんでですか?」

 と聞いてきたので

「彼氏彼女の関係なら呼び捨てにして欲しい。」

 と言うと

「それは盲点でした。わかりました。宮都」

 と納得してくれたので良かった。

「ねぇ、宮都。あの、ミスコン見に行きたいのなら見に行ってもいいですよ…」

 と唐突に言ってきた。悲しげな顔をして。だが、

「冬華の悲しい顔を見たくないから行かないよ。言っても知らない人だからなぁ。しかも夜だから寒いし」

 と答えると

「宮都。やっぱり私、宮都のこと好きです!大好きです!ミスコンの時間、頭撫でてくださいね?」

 と腕に抱き着きながら言われた。


 しばらくすると、昴が戻ってきた。

「何の話をしたんだ?」

「なぁ、宮都。俺、悲しい。慰めて!」

「昴の彼女さん!昴が慰めて欲しいそうです!」

「も〜、すー君。ほら、ミスコンなんて見なくたって私を見てればいいじゃない!すー君だけの私を!」

「ワーイ、ウレシイ!オレ、ウレシイ!」

「すー君?」

「すみません!楽しみです!嬉しいです!」

 というやり取りをしていると、

「宮都。私にも構ってください。寂しいです!」

 と言ってきたため、椅子を持ってきて僕の膝の上に乗せることに。

 冬華は

「恥ずかしいですけど、なんか、嬉しいです」

 と言っていたが、おりることはしなかった。

 それを見ていた昴の彼女さんは

「冬華と冬華の彼氏さん、お幸せに」

 と言っていたことに僕と冬華は気がついていなかった。


 そんな感じで冬華と過ごしていると文化祭の開会式の時間になった。冬華と僕は隣同士で見ていた。

 時々、「演出のやり方がいいよね」とか「この店、美味しそうだね!」とか話しながら見た。行かないけど。

 そしてミスコンの話しになると、冬華は急に僕の腕に抱きついてきただけではなく肩に頭をのっけてきた。

「どうしたんだ?」

 と聞くと、

「宮都が私から離れて遠くに行ってしまうと思ってしまって」

 と言ったので

「冬華は本当に可愛いよな」

 と言うと

「ありがとうございます!」

 と笑顔で言われた。

 昴の方を見てみると、彼女さんが昴の目を手で覆い隠して見えないようにしていた。昴は涙を流していた。ドンマイ、昴!

 予定表曰く、文化祭の開会式が終わると今日は帰っていいとの事。

 LETTERを見てみると、綾川あやかわ先輩から、

『今日はもう帰ってもいいぞ!私も帰るから!』

 というメッセージが来ていたので帰ることに。もちろん冬華と。


 帰っている時に冬華が腕に抱き着いてきた。

「あの、今日、明日のお弁当のおかずの材料を買いに行きませんか?」

「そうだね。買いに行こうか。なんか夫婦の会話みたいだね。」

 僕が思ったことをうっかり言ってしまう。

「ふ、夫婦ですか?!宮都に言われるとは思いませんでした。ふふっ。なんかこの感じ好きです。」

 冬華が顔を赤くして言った。


 スーパーに着くと

「これを刻んで卵焼きに入れますか?」、「この果物食べますか?」や、「これの方が安いと思うのですが」などと会話をしながら選ぶ。

 近くから

「高校生なのに夫婦みたい」とか「おしどり夫婦ね!私もあの頃に戻りたいわ。」とか聞こえた。それを聞いていた冬華は顔を赤らめていた。


 買い物を終え、スーパーを出ると執事がいた。

「宮都様、少し冬華お嬢様のお父様に付き合って欲しいのですが。よろしいですか?」

 と言われたので、

「いいですけど、家に電話をしてもいいですか?」

 と聞くと、

「既に私がしました。では、行きましょう」

 と言って車に乗せられ目的地に行く。

 着いた場所は豪邸だった。

「着きましたので降りてください」

 と言われたので降りる。すると、

「宮都様、お荷物をお預かりします」

 と言われたので荷物を渡す。


 家の中に入り、しばらく歩くと、そこには以前見た事のある男性と冬華に似ている女性がいた。

 すると、女性の方が口を開いた。

「言うのが遅れましたが、この度は娘を救っていただきありがとうございます。私は冬華の母です。」

「僕は宮都です。」

「存じております。」

 という会話をしたあとに、

「宮都君。単刀直入に言う。冬華と結婚して欲しい。今ではないが結婚出来る年齢になったらして欲し。」

 冬華のお父さんが言ってきたので

「あの、今日から彼氏と彼女の関係になりました。あと、キスもしました。」

 と言うと

「私の心配は杞憂に終わったな。もし、嫌だと言ったらどんな手を使っても冬華と結婚してもらうところだったよ」

 と笑いながら言った。笑い事じゃないのに。

 すると、

「宮都!恥ずかしいことを言わないでください!お父さんもそんなことのために呼ばないでください!」

 と怒りながら入ってきたので

「冬華、怒ったら可愛い顔が台無しだぞ?」

 と僕が言うと

「なんでっ!宮都は!そんなことを!恥ずかしげもなく!言うんですか!」

 冬華が照れながら言ってきた。

「ダメなのか?」

 僕が聞くと、

「ダメじゃないですけど、でも、親の前では言わないでください!宮都、私の部屋に行きますよ!」

 と腕を掴んで部屋に連れていかれる。

 その時に

「良かったわ。冬華を好いてくれる人がいて。」

「そうだな」

 と言うとやり取りがされていたことに気がついていない2人だった。




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