第六から第十までの犠牲者

 六人目の犠牲者は、エディの手で腹部を切り裂かれ、そして腸をズタズタに引きずり出された。彼女は息がある状態のまま病院に運び込まれたが、三日後に腹膜炎で死亡した。彼女の名前は清田祥子きよたしょうこと言った。四十八歳だった。夫の誕生日が近いので、プレゼントにするためのネクタイを買った帰りだった。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 七人目の犠牲者は、エディに向かって発砲した。彼は駅の交番に勤務する巡査であった。騒ぎを耳にし、他の仲間より先に現場に駆け付けた。そして、三発の銃弾がエディの胸ではじけた。エディは倒れた。その身体からは赤い液体が噴き出していた。七人目の犠牲者、彼の名は里山幸吉さとやまこうきちと言った。勤続二年目で、地元の警察署ではその将来を嘱望される存在だった。


 幸吉はエディに近付いたが、エディは死んではいなかった。エディの身体から噴き出した赤い液体は血などではなかった。それは、犠牲者をおびき寄せるための撒き餌にするために、彼がその身に備えた能力の産物の一つであった。里山幸吉は寝そべった状態のエディに下半身を斬りつけられ、そして肋骨を縦に割られた。幸い、傷が心臓に達したため、彼はすぐに死ぬことができた。勤続二年目、勤務先の交番には彼と仲のいい若い女の警官がいた。デートに誘うタイミングを伺っているところだった。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 エディは倒れた状態から一瞬ではね起き、そして再び疾走する。


 八人目の犠牲者はその場から逃げようとしていたが、高速で接近してきたエディに足を払われた。そして、ゆっくりとその喉を切り裂かれた。彼の名は田中清太たなかせいたと言った。十一歳だった。祖母から小遣いをもらったので、街までコンピュータ・ゲームを買いに来たところだった。ただそれだけだった。そして、エディに出会った。


 九人目と十人目の犠牲者は再び警官だった。二人は発泡する前に拳銃を構えた両手を斬り落とされ、そしてそれぞれの右胸を突かれた。肺を損傷した二人は、苦しみもがきながら絶命した。彼女たちの名前は、香田麗子こうだれいこ、そして戸波静香となみしずかと言った。幸吉と仲が良かったのは静香の方で、麗子はそれを応援する立場だった。ただそれだけだった。そして、エディと出会った。


 エディは、なおも疾走する。

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