第16話
「やぁチャーチルくん。久しぶりだね」
「あぁ、そうだな」
僕は会議室に座るチャーチルに話しかける。
チャーチルが口にするのは流暢な日本語だ。
「君と私の関係だ。余計な駆け引きなど必要ないだろう」
「まぁね」
僕とチャーチルは古くからの仲だ。
僕とチャーチルは日英同盟ときから外交官として常に日本とイギリスの仲を取り持ってきた。
ちなみに、僕の世界ではチャーチルは海軍大臣だったはずが、なんか知らないけど外交大臣になっていた。
「まずイギリスの考えだが、このままでは共産主義陣営に敵わないと確信している」
「ふふふ、嫌な確信だな」
「全くだ。欧州大陸は共産主義に染まり。アメリカは揺らいでいる。そんな中頼りになるのはアジアの辺境に位置する日本。ほんの50年ほど前までは誰も気にしていなかった小国が我が国の命運を分けることになるとはな……」
「全くだよ。欧州各国の先輩たちは不甲斐なさすぎる。日本の土台は未だに不安定だと言うのに」
「申し訳ないな。まぁそんな絶望的な状況。そこで、だ。君たちに日本に提案がある。大日英帝国を作らないか?」
「……は?すまない。どういうことだ?もう一度言ってくれ」
「くくく、さすがのお前でも悩むか。簡単だ。大日英帝国を作ろうと言う簡単な話さ」
「そ、それは日本とイギリスの合併案ということか?」
「そうだ。互いに海洋帝国であり、政治体系もかなり似通っているところが多いだろう。どうだ?行けるか?」
「……少し待て」
日英合併。なるほど。
確かにメリットはある。
しかし、しかし、だ。それを受け入れられるか?日本の国民が。
日英合併ということは当然天皇陛下とイギリス王室が対等の立場になるということだ。それを認めるとは……到底思えない。
……だが、大日英帝国。心惹かれる提案ではある。
「……善処しよう。だが、うまく行くかどうかはわからない」
「まぁそうだろうな。それに、な。これはまだ構想段階。イギリスでも完全に認められたわけではない。ちょっとずつその準備を進めていくということだ。とりあえずはイギリス王室の一族と天皇家の一族の婚姻なんてどうだ?」
「まぁいいよ。わかった。いつになるかはちょっとわからないけど、僕の方でも出来る限りの手回しはしておくよ。でも、そんなに期待しないでね?天皇陛下は……お前が思っているよりも遥かに権威を持っているのだ」
「了承した。ほどほどの期待をして待っているよ。全ては資本主義陣営の勝利のために」
「あぁ。全ては勝利のために」
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