祖父からのおくりもの

凪常サツキ

祖父からのおくりもの



「ナツ、ほらちょっと」

 声をそよ風に乗せるようにして、じいじが呼んでる。その当時はもう余命が数か月で、三分も立つことができなかったはず。それなのに寝床からわざわざ青い玉に乗って縁側に来ていた。それで私を呼び止めたというわけ。

「なに?」

 昔ながらの家と昔ながらのじいじとばあばのお陰で、あの空間だけはどこかとても風情を感じさせるものがあった。真夏の太陽と空気、それに加えて大音量の蝉の鳴き声、または清涼感のある風鈴と、氷水に満たされた桶に入ったラムネ瓶。じいじがその蓋を開けてくれる。

「じいじは、前も言ったことがあるけど、実は科学者だったんだ。物理を研究していたんだよ」

「えー、またその話? なんか、それならナツしりとりしたいんだけど」

「まあまあ」

 一口飲んでみたラムネの炭酸が痛い。でも瓶の首のところに入った青い玉がカランコロンして面白いから飲んでる。それだけ。

「これをナツに託そうと思う。ほら、ほら取って」

 一冊の古ぼけた手帳。なんだかカビ臭くて、手に取るだけでページの切れ端が粉になって落ちて行った。そこにはびっしりと、律儀なじいじらしく文字が小さく敷き詰められていた。


◆◆◆

事の発端は、昭和二三年の五月。昼ネから覚めた時に気付いた。目の前の、まだ使つていないわら半紙に覚書を書かんとしたとき、すでにそこに文字が書かれていた。しかもそれは英文で、全く自分がかいたとは言えぬもの。私は恐怖を覚えた。この家に泥棒か、さもなくばタチの悪いイタズラ小僧がしのびこんだか。しかし現実は浪漫小説よりも奇怪で、私はもう三日後には政府に呼び出された。

そこは最新のマンシヨンとかいうビルデイングで、扉をたゝくと黒服にすぐに通された。そして文書を確認されると着席せよとの命令。私を含めて十五人がそこにいた。

驚いたことに、この文書は確認できただけで私を含めて日本全土で三人、そしてアメリカで十五人が同時刻にみつけたのだという。そしてさらに驚ガクなのは、その内容だ。読解したところ、これは別世界から送られた文書だという。

とても混乱する内容だから思考の整理を■兼ねてここに書き記す。

まずこの文書を送つてきたのはわたしらとは異なる世界線の生命体らしい。その代表にして文書を綴つたカリプソという名の者曰く、彼らも周辺環境が地球といたつて酷似した空間に住んでいるが、その惑星(地球二とでもいえよう)年齢はやはりわたしらと同じく四六億才だという。こゝが異なる世界線たるゆえんで、つまり彼らはわたしらと違う運命をもつた人々であるという。いや、人々なのであろうか。

次に、彼らは彼らにとつての地球外生命体から偶然新技術をボー受し、それを八十年もの間で生活に組み込むまで発展させたのだという。然し、それを発見した例の生命体が脅威を感じ攻撃を開始、猛攻を何とか防禦しさらに迎撃を加えたが、ある一つの物質がその地球をかき乱した。それは時空を引き裂き、現実を改変し、あらゆる物理法則をかき乱して何でもかんでもめちやめちゃにしていつたのだという。彼らはなんとかそれを制禦する方法を思いついたのだが、根本的に消メツさせるにはいたらなかつた。だからこそ私たちに応援を要請した。彼らは恐るべき技術の持ち主らしい。何せ時空を自在に操る。にわかには信じがたいことだが、兎角わたしらはこのことがらを絶対機密にしろとの政府命令の元、しばらく気の抜けない日々を過ごした。


野口先生にお声がけを頂いてからはさらに気の抜けない状況になる。あろうことか、政府とアメリカはかの時空文書を一度信用し、さらにその超技術を再現してみるのだという。拒絶もできず招かれた研究所は何の変哲もないアパアト一棟。全てが研究施設らしい。成程、中に入ればわかる。一番の驚きは電気式冷蔵庫というやつだ。あれは凄い。電気を送るだけで物を冷やす。理屈はたかが知れているが、ここまで小型化できるとは。今までありがたかつた氷箱が、途端の内にちやちなオモチヤの様に思えた。

そして、日本側の研究に直接かかわる人員は、野口たかし先生、湯川さとし、アレン・ホーキング、ヨセフ・ベケンシユタイン、ヤン=コヴアルスキ、ヘルガ・ヴオルフ、ジョー・アンダアソンと私を含めた七名。ホーキング博士に至つては西洋哲学が専門ということだが、そんなことでうまくいくのだろうか。

◆◆◆


「ねー、つまんない」

「まあまあ、オトナになったらわかるから。何せじいじが二十から四十代まで研究したその時の日記なんだぞ、重宝だよ。とりあえず持っていきなさい」

 私は頬を膨らませるが、そんなこと、先のないじいじにはお構いなしみたい。風鈴とラムネと青い玉のおかげで涼しいけど、さすがに真夏の太陽から来る熱線には汗がにじんだ。シャツが、その汗に次ぐ汗でぴったり肌に張り付く。

「もうちょっと読んでみなさい、そこからが本格的に研究に移るし、面白いんだから」

 本心から退屈していたけど、あんなにたくさん遊んでくれたじいじにつっけんどんな対応するなんてとてもできない。十二の私は服の胸ぐらをぱたぱたさせながら、汗がにじむ指先で、古ぼけた紙面を半ばちぎりながらめくっていった。


◆◆◆

先方からの文書に書かれていたは、あら\/こうだ。この世は多元宇宙世界で、無数に並行宇宙があるのだという。然し其らは隣り合つてもいなければ、重なり合つてもいない。だから普段は行き来など出来つこないが、その多元宇宙全ては、一つの原点がそれぞれ異なる角度で写されているだけなのだという。彼らはそれをoriginal worldとしていたが、ホーキング博士はイデア界と言い換えていた。彼はまた、そのイデア界に対して、現実を含めた無数の世界を現象界とする。つまるところ、現実は三次元であるというのが物理学での定説だが、実際は疑似的な二次元なのだという。この説明を受けて、コヴアルスキ博士は昨年東欧の学者がホログラムというものを発明したという記事を思い出したらしい。それは二次元に見かけの三次元を記録できる技術らしいが、まさしくこの世界がそうなのだと。これを踏まえて湯川君はこの考えを、仮にホログラフィツク原理と称した。彼は何でも命名したがる連中の一人である。

然し乍ら、ではなぜ二次元か。それはブラツクホールを観測すればわかるという。これに吸い込まれた物質はその情報を失うし、質量は増えずに体積だけが増加する。現代量子力学ですら説明不可能なこの不思ギな現象こそ、この世が二次元であるという証明なのだと。そしてそのブラツクホールでは真に情報が失われているのかといえば、そうではない。その事象の地平線を越えた先はイデア界に接続しており、またイデア界をうまく潜り抜けると別時空の他宇宙空間へとつながるらしい。

話が逸れたが、事の大本は先方が抱え持つ其を消滅してくれないかということであつた。わたしらは当然のことではあるが、丁重に断るよう指示されていた。たゞでさえ度重なる戦争で疲弊した地球なのに、そんな異次元の物体が暴れに来ては、今度こそ破滅に追いやられる。それはアメリカも日本も満座一致で同じ心持ちだつた。戦場で散つていつたあらゆる特別攻撃隊や兵士たちのことを考えると胸が痛いし、それは戦勝国であるアメリカでも同じこと。だからわたしらはこの記載された技術を一度組み立てはするが、地球の平和の爲に口外はできない。こゝだけの機密である。


驚くべきことに、アメリカのチイムよりも先にわたしらの方が、時空文書に書かれていた設計図を全くその通りに組み立て終えていた。これには本研究所にいる誰もが祝杯をあげたがつていたが、一方で完成したゞけで、本当に作動するのか。先方の理論は本当に脱帽するもので、まさしく究極のM理論だが、その内容は復雑怪奇。例えば時空を超えてなおかつやり取りをする爲には小型ブラツクホールを作成し、さらに粒子一つ\/をイデア界の支配法則に則って粒子線を形成する必要がある。そして込められた情報をイデア界の義三次元情報面に刻み込むことで時空の一部に改変を加えることができるのだという。それはさながら生物のDNAじみたもので、一本鎖だと情報量の効率が落ちる故に、始点と終点の構成粒子を同じくすることで粒子を環状線とし、疑似二本鎖を作成すれば、情報量をさらに濃くすることにつながる。これは粒子線が事象の地平線を越えた特異点に達するまで破れないようにする為に必要な行為で、二本鎖を軸にすると線の長さが短くて済み、また安全性も高いという。これら一連の超時空送受信法を、誰かがEPLワアルドと呼びだしていた。

たゞ、そう。そも\/これが嘘だとしたらすべてが壮大な笑い話だし、誠だとしてもそれはそれでまだ\/やることが多い事を考えると、自分はどうも素直に喜べない……。

◆◆◆

あれから三日が経つた。ようやくアメリカの連中も超時空送受信装置を完成させ、また御断りの文書もしたゝめたというので、作動を開始する。電源は言わずもがな、電力である。緊脹のあまり、湯川君とアンダアソン博士、そして私はずつと煙草を呑んでいた。しかし待てども\/返答はない。それはそうだろう。時空を超えたやり取りなど前例がないし、第一わたしたちの技術は見様見マネだ。アメリカの方も反応がないということだつたから、一度変な緊張をしながらも、皆一ヵ月ぶりの十分な睡眠を交代制でとる事にした。

そして野口先生が当番の時に「IT」がやつてきたらしい。叩き起こされて急いで見に行くと、分厚い視板を隔てゝ、装置の中には半透明の青色の球体が何事もなかつたかのように浮かんでいる。別段恐ろしい物には見えなかつた。ただやはり、扱いにはほと\/困つた。アメリカ側にはないことを知らされ、まずこの厄介者が一つしかないことを確認して安堵するが、然しそうなると、先方はこちらの認否を無視して送り付けたことになる。血気盛んなベケンシユタイン博士は、もはや宇宙戦争の幕開けだなどゝ物騒なことを英語で言い始め、それをヴオルフ女史がなだめる。確かに先方の行動は無礼極まるもの。恐らくは私たちが其を管理する技術があると見極めるために文書を送り、さらにこちらから文書を送り返したことが決定打だつた。先方はいゝ鳥甲を見つけたすぐソバから、やつかい払いも早々と済ませたというわけだ――

◆◆◆


「もういい! なんでナツにこんなわけ分かんないの読ませるの? だって、ナツだってじいじとたくさん遊びたかったのに、何で遊んでくれないの。もういい、知らない!」

 しびれを切らした私が、縁側の日向から日陰へ、そして部屋の奥に入っていく。裸足だったから床には汗の足跡が一瞬残った。奥に入ってもい草のにおいに蝉の音。夏の気配と青い玉の勢力が弱まることは決してなかった。

 わかってると思うけど、当時の私は全然心に思ってないことを言ってた。じいじ、許してね。そんなじいじは、確証はないけど、きっとあの時こう言っていたんだろうな。

「もっと国語の勉強をしておけば」


 今や私は高校三年。ごく普通の進学校に通い、成績は偏差値で言えば五四から六十と、平凡な頭脳。そして人並みに遊び、オシャレをして、メイクで顔を作り、人並みに恋愛をして散っていった。

 そう、私はいたって平凡で、無個性で、面白味が何もないJK。そんな私にも一つの目標ができていた。じいじのあの物語をもう一度読解するという、叶わぬ夢。何となくで大学進学を選んで、なんとなく数学が得意だから選んだ工学部の物理学科。少しでも受験の足しになればと、塾の扇風機で涼みながら休憩中に呼んだ本「宇宙の神秘3:ホフマンが語るブラックホール」に、次の語句が出てきた。

・M理論

・事象の地平線

・ホログラフィック原理

 まだまだ、あの手帳にはたくさんの語句があったはずだけど、斜め読みで記憶に引っかかるのはこれだけ。でも、それぞれの発表された年や提唱年は、調べた限りで以下の通り。

・M理論は一九九五?

・事象の地平線一九二〇?

・ホログラフィック原理一九八七?

 事象の地平線に関しては随分前から提唱されてたらしいけど、ホログラフィック原理やM理論に関しては少なくとも八十年代以前には出てきていないはず。でもじいじは確かに言っていた。あれは二十代から着手した研究だと。そして薄い記憶を頼りにすれば、四十代で研究は終わったと。つまりどう計算しても、あの研究は一九七〇年付近で終わっていたはず。もしかしたら、じいじの言っていた話は本当なのかもしれない。本当に別次元の異星人から、コンタクトを取っていたのかもしれない!

 私は塾を終えると早速パパにじいじのことを聞いた。

「ねえ、じいじがさ、昔なんか言ってなかった? 研究してたとかなんだとか」

 パパはこの何だかよくわからない白身魚を頬張りながらいったん唸って、飲み込んでから話してくれた。

「ナツから食事時に話すの珍しいよな、どうした? まあー、じいじ? あのお話しか。ちょっともう忘れてるな」

 言い終わると、それで終了と言わんばかりに黙りこくって、おひたしにおかかをかけていた。次の言葉は? それでおわり?

「ねえ、じゃあその、じいじって職業何だったの」

「無職。宝くじが当たって大金持ちになったって」

 そういえば、今の今まで私はそんなことも聞いたことなかった。

「何円?」

「それは詳しく知らないんだが、遺産相続の時、パパに入ってきたお金が八千万。それだけであの話はほんとだったんだって、わが父ながらやっと信用できたよ」

「その話って?」

 いつもは食事時もずっとケータイをいじる私が急に話しかけている。そんな事実にパパもママも二人ともとても驚いていた。

「宝くじだよ」

「ナツどうしたの? 模試でいい点でも取れた?」

「いや別に。それよりじいじの手帳ってわかる?」

「さあ」

「身辺整理の時親戚がちょー集まったじゃん。その時とか」

「あの人たち金目のモンしかとってかないからなあ。たぶん捨てたんじゃないか。紙でしょ?」

 ここまで来たら本当に、親にはじいじの手がかりは何もなかったらしい。ばあばもじいじの後を追って一年後に死んじゃったから、聴けない。

 今になって、強烈にあの手帳に興味が湧いて来た。なんでもっと話を聞いておかなかったんだろう。なんでもっとじっくり読んでおかなかったんだろう。手帳の最後は何が――そうだ、姉に聞こう。私はママに注意されるのを承知で、箸を咥えながらメールを打った。

「こら! ナツ」


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受信メール

2006/08/15 21:16

From:冬乃

Re:

いや覚えとらん(笑) だってめっちゃ昔のことじゃんそれ。しかもじいじのあの作り話でしょ?確かに言われたけど。

まあどうしてもってゆーんなら、また思い出したとき連絡するわ

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 返信を見ても、なぜかあまりがっかりはしなかった。なぜならば、姉がまだその記憶を宿らせている可能性があったから。あの時十五の姉。確率は五分五分かな。

 そんな姉は東京で一人暮らし。これほど会って話したいと思ったことは、今まで無い。


「はい。では次は二時に会いましょう」

 一日退屈な塾通いは毎日のこと。箱詰めの拷問の途中でやっと訪れた一日の小休憩だから、どうせなら思う存分羽を伸ばしてやろうと、今日の私は塾を飛び出した。

 コンビニへの道を歩きながら意図せず思い出す。じいじの言葉、生き様、情報、そしてあの手帳に書かれていた物語は迷宮入りで終わっちゃうのだろうか。じいじは言わずもがな、ばあばももういない。パパママだって本当に何も知らないみたいだし、あれから姉からの連絡もない。ならば。

 ならば私がやっぱり思い出すしかないんだろうか。あの日のことは、あれ以外にもよく覚えてる。縁側から早歩きでトイレに言って、そこからばあばの呼ぶ声に従い食卓に行った。たくさんの調味料や割り箸、スプーンとか、いろんな食器にまみれた机の上に、ばあば特製の俵型おにぎりとたくあん、そして青い玉と麦茶が置かれた。それを何となく、昼下がりの情報番組を見ながら頬張る。今考えるとそれが一番落ち着く時間だったかもしれない。姉は麦茶より緑茶がいいと駄々をこね、ばあばはハイハイといなしながら上手に姉の機嫌を取って、私も緑茶がいいなあと思いながらそういうことは言えずに私の分を平らげる。遠く、じいじの頭上の風鈴とあの玉が鳴っていたように思える。

 今、私はその日の真似っこをして麦茶と鮭おにぎりを買った。もちろんコーヒーは塾の眠気対策に一本。それをビニール袋に入れて、公園のベンチで食べてみる。

 相変わらずの、蝉の声。そして夏の熱風にそよぐ枝葉。季節通りの、薄く塗ったファンデが崩れるほどの汗をかく猛暑日。でもあの時とは違う。あの家もない。縁側もないし手帳もない。

 遊びまわって叫びまくる子供たちに、この前までの私は何度いら立ってた? 私が受験で引き締まっているのに、彼ら彼女らは……、いいなあ。でも今日は一味違う。子供は、私とじいじとばあばを繋ぐ役目をしてくれるように思えたから。あんなに小さいころから共に遊ぶ私を思い出させてくれる。おにぎりの海苔の風味と麦茶の冷たい質感、そして食卓の真ん中にある、青い玉のどうにもたとえようのないキラキラ。全てが私をあの当時に送ってくれる。青い玉……?

 ケータイの通知に気付く。姉からだ。


-----

受信メール

2006/08/17 13:36

From:冬乃

Re:Re:

あの妄想話、もしかしたら思い出したかも。確か最後は青い球体を、別の時空の人間に渡したんだっけ。爆弾ゲームみたいに押し付けた・・・?もともと押し付けられたものだからやられたようにしちゃえってことでしょ。まあでも確証はないよ?

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 青い玉って、なに?

「あ」

 いや、無かった。確かにさっきまではなかったよ。砂と落ち葉はあったかもしれないけど、半透明の、青い玉なんて。

 そしてハッとする。じいじの研究。

 猛烈に暑い。暑くて圧迫感がすごい。周囲の空間が歪んでいるのがわかる。なにこれ? 地面がUの字にくぼんで、私も公園にいる子供たちも、ビルまで全部がその玉を中心にめくりあげられた。

 なぜか、どんな音すらも聞き取れなかった。ドミノ倒しのように崩れるビルの瓦礫たちは、絶対に轟音を立てているはずだし、私もこんなに絶叫してるのに。パパとママたちが必死に声を上げているはずなのに。

 私は景色と同じようにして、ついに倒れた。足がどうなっているかは見たくもない。そういうこと。青い玉は現実改変をしたんだ。私の記憶にすら入り込んで、思い出したのをきっかけに、出てきた?

 ねえじいじ、じいじたちが青い玉を送り付けたのってもしかして……、

 青い玉を軸にして、地面が完全に円を描いた。空が中ほどにあり、この立ってる地面がもっとも外側。どんどんなくなっていく。どんどんめちゃくちゃになる。青い玉を必死ににらむと、そこにはばあばに寝かしつけられた私。じいじに暴言を吐いた私、そして姉を抱くママ、さっきまでの私が……、じいじと姉と、一緒にいる姿も見える。吸い込まれて行く。

 間違いなかった。じいじは、じいじたちは、完全に、青い玉を私たちの「未来世界」に送ったんじゃないの。

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