初戦闘と最大火力

 アイテム集めに勤しみつつ、モンスターを探しているが、一向に見つからない。まあ、薬草を始めとしたアイテムはかなり集まったから、それなりの成果はあるだろう。


「なあ、フライ、モンスター見つけたか?」

「ううん。全然。シンは?」

「全然見つからねぇ。もしかしたら、ここはモンスターが湧かないゾーンなのかもしれねぇな。それか、出現率があまりにも少ないかのどっちかだろうよ」


 その時、

ガサガサ──「キュキュ?」


 草むらから一匹のウサギが現れた。白黒のシマシマボディに、大きな耳と、可愛らしい円らな瞳と……その少し上の“赤黒い角”。


 頭上に現れたテキストによると、こいつの名は『ホーンラビット(猛者)』……猛者? そして何故か三本ある緑色のバー……ん? こいつ普通のヤツじゃ無いぞ?


「いたァァァァァァ!!! まずは囲んで、次にシバくぞ! 奴のメインウェポンはあの角だぜ! 喉突かれたら即お陀仏になるから気を付けろよ!」


 奴が普通じゃない事に、気付いているのかいないのか、片手剣を抜いて右手で構えるシン。


「へいほいさ~。撲殺神官デビュー戦、負けられないね!」


 撲殺神官の夢を捨てきれないのか、すぐに角ウサギの後ろに回り込んでメイスを構えるフライ。


「シン、フライ! そいつは多分普通の個体じゃないぞ! 目線を外すな!」


「どっちでも獲物って事に変わりはねぇ!」

「知ってたワラ!」

「てか、誰がどうやって攻めるんだ?」

「俺がヤツの注意を引くから、フライが背後からぶちかましてくれ! クルハは支援を頼むぜ!」

「殺ったるでい!」

「わかった! 『(バスガイド)が話す前に(バスがいど)うした』!」


 その瞬間、フライとシンの体から、赤いオーラのようなものが現れた。効果が無事発動したようだ。


 そのまま三人でジリジリと距離を詰めていき、後少しでフライのメイスの攻撃範囲に入るというところで、


「キュイ!」


 角ウサギが、シンの首を目掛けて飛び掛かった。血で染まったのかと思う程に赤黒い角がシンの体力バーを刈り取らんと迫り来る。


「うぉっ! こいつマジヤベェって!」


 だが、それは咄嗟に立てた剣の腹によって何とか逸らされた。支援掛けてギリギリってホントにヤバイな……てか、包囲を抜けられたのはキツいな……


ガサガサ──「キュイ?」

ガサガサ──「キュッキュー!」

ガサガサ──「キュキュキュ?」


 赤黒い角をこちらへ向けたウサギ達がやって来た。可愛い。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


「ヤベェってッ! 初戦闘でデスるとかマジ最悪過ぎん!?」

「あ、これ詰んだね。オワタ……」


 おいおい、一体でも三人がかりで支援込みでギリギリなのに、それがもう三体も増えたら……って次々増援来てるし! 仕方ないな……最大火力のアレを使うか……


「ちょっと、俺切り札使うぞ……『十二指腸(じゅうにしちょう)を自由に視聴(じゆうにしちょう)』ッ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ユニークスキル『オヤジギャグ』がなんか強い waissu @waissu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ