第24話 あんた、眩しいすよ!

「さて、勇者達にはそろそろ消えてもらいましょうかね。」


「くっ…」


「げぇっ…」


クロエの仕掛けた鋼鉄線に捕らえられ、身動きが取れなくなったヘレナとブライン。


東の国が誇る最強の武人レシンは、両腕を切断されてうずくまったまま動かず、


魔導士メイラは、ロノウァの魔法によって水の球体に閉じ込められてしまった。


クロエとロノウァは、敵達勇者達の無力化に成功したかの様にみえた。


「勇者ヘレナとその仲間のブライン、最後に言い残すことはありますか~?」


「えぇ~…そうすっね。ええっと…」


クロエに遺言の有無を問われ、汗をダラダラとかくブライン。


「う~ん……だめだ、いきなり言われても思いつかないっす。あっ、ヘレナさん、お先にどうぞ」


「無いわよ、そんなもの!」 


ヘレナはスゥッと短く息を吸うと、


「はああああああーーっ!!!」


『っ!?』


体内の気を吐き出さんばかりの凄まじい気合いを発し、ヘレナの体から神々しい光が顕れる。


ヘレナを中心に、日の光の如きが鋭く煌めく光芒を放ち、周囲を明るく照らす。


「うわ、眩っ!?」


「おっと、これは…」


クロエとロノウァは、あまりの強い輝きに手で顔を庇う。


「ちょっ、ヘレナさん! あんた、めっちゃ眩しいっすよ!」


「口説き文句みたいなこと言ってないで目を閉じてなさい!—っはああああああー!!」


間近で光を浴びせられてるブラインを気にせず、再び気合を発するヘレナ。


白い光はさらに輝きを増していく。


その白い光に当てられ、ヘレナとブラインを拘束している鋼鉄線がブチッ ブチッと音を立てて千切れていき、遂には光に押し出される様に散々ちりぢりに弾けて飛んでいった。


「な、なんですと~!?」


弾け飛ぶ自分の鋼鉄線を目の当たりにし、驚くクロエ。


鋼鉄線から解放されると、ヘレナは直ぐ様メイラが捕らえられている水の球体に向けて、ゴルフのスイングの様に大きく剣を振り上げて刀身から白い光の刃を放ち、水の球体を真っ二つに斬り裂く。


斬り裂かれた水の球体は左右に分かれると、切口から発光しながら静かに霧散して消えた。


水の球体の中で漂っていたメイラは、中でもがいたからか真下を向いた体勢となっていたところを外へ出され、


「ふぎゅえっ!?」


そのまま顔面から地面に落ちる。


「大丈夫!?メイラ!」


「だ…、だいじょうぶ。けど、顔が痛い…」


「よし、大丈夫そうね!」


「え…あ、うん。」


ふぁ~と言って、鼻をさすりながらもメイラは、

全身光る勇者ヘレナと、「目が~!ショボショボするっす!」と言って目を抑えてるブラインの元へ合流する。



「今のは…、『破魔の光』ですか」


ヘレナの体から顕れた光が収まり、顔の前にかざしていた手を下げるクロエ。


ロノウァは、考える様に自分の顎に指を持っていく。


「『破魔の光』…させる対魔族最強の光魔法。その特性を活かし、クロエさんの強固な鋼鉄線を千切り、私の水の球体を散らしたのですね。」


「私達とって厄介な力ですね~、あれ。」


「ええ、まったくです。ジャホン国の門番である『巨大龍リヴァイアさん』を倒したのもあの破魔の光の力によるものでしょう。魔族そのものをも弱体化させる事が出来る故に、あの光で攻撃されれば、いかなる強力な魔族も絶大なるダメージを受けるという。」


「そうなんですよね~…。ちょっと、勇者!『破魔の光』なんて私達魔族に対して理不尽な技、反則ですよ!」


クロエがヘレナを指差して抗議する。


「反則じゃありませーん! 立派な技ですぅー!」


「~っ、もう! 私があなた達を捕らえた時点で私達魔王軍の勝ちでいいでしょう! それなのに後出しみたいにそんな一発逆転みたいな技を使うなんて…、 卑怯ですよ!」


「ふっふっふ。卑怯? その言葉は、私達勇者の界隈では褒め言葉。卑怯なのは当たり前よ。だって、勇者だからね!」


「それ、一話前に私が言った台詞の使いまわし!」


「フッフ~ン!」


「ぐぬぬ~」


勝ち誇った顔をするヘレナに、悔しげなクロエ。


「…いや、卑怯は勇者に使っていい褒め言葉じゃないっすよ。」


ブラインのツッコミを余所にクロエとヘレナが、やいのやいのと言い合う。



「……ほう。あれが、噂に聞く『破魔の光』か。」



『っ!?』


その場にいた者全員が、声のした方を見る。


クロエに両腕を切断されて蹲っていたレシンが、片膝をついて立ち上がろうとしていた。


「レシンさん、無理しないで!」


「そうっすよ!腕切られたんだから、大人しくしていた方が」


慌ててヘレナ達が制止しようとするが、


「問題無い。 腕なら、ほら…」


立ち上がったレシンが、ニヤリと笑みを浮かべる。


「なっ!?」


「え? どうして…」


レシンの姿に全員が驚く。


皆の視線が集まる先、


そこには無いはずの両腕があったのだ。


「よもや、昨日と今日で腕を失う痛みを味わうとはな。」


はじめから何も起こっていなかったかの様に、五体満足の姿で、レシンが歩き出す。


「そんな、両腕は確かに私が切ったはず…むっ!?」


切断した腕が落ちた場所に視線を移すクロエ。


そこには、確かに切断したレシンの二本の腕が転がっていた。


しかし次の瞬間には腕は形が崩れ、へと変わる。


「あれは… まさか」


腕だった黒い砂を見て、表情が険しくなるクロエ。


歩き出したレシンがヘレナ達の横に並んで立ち、再び両軍のメンバーが向かい合う。


ブラインは弓を持ち直し、メイラは魔法で新しい杖を出現させる。


「どうやら、振り出しに戻ってしまった様ですね、クロエさん。」


「そうですね~。 私のあの頑張りは何だったのかって思っちゃいますね~。 」


ハア~…っとクロエが溜め息をつく。


レシンが、腰を低く落とした姿勢で構え、


「さあ…魔族達よ、 もう一戦交えようぞ。」


手を前に出し、来いと言わんばかりに四指を揃えてクイクイと動かして挑発する。


「そんな前に手を出して…、もう一度切り落とされたいんですか~?」


ヒュンッという風切り音とともに、クロエが指から何本もの鋼鉄線を出現させる。


ヘレナが正眼に構えたロングソードの刀身が、破魔の光によって白く光り輝く。


「クロエ、ロノウァ、あなた達を倒して魔王軍幹部の所に行かせてもらうわよ!」


「そうはさせませんよ、勇者。ここは命に代えても、あなた達を通すわけにはいきません!」


「そうですよ~。通しませんよ!」


ロノウァが啖呵を切り、クロエが同調する。


「魔王軍の勝利のため、そして何より我が君リオン様のため!『破魔の光』という我々魔族にとって危険極まりない力を持つ勇者とその仲間たちを今ここで、葬らなければなりません!!」


「そうですよ~!リオン様のためにも、あなた達はここで葬ります!」


クロエとロノウァ、二人が全身から鬼気迫る気迫を醸し出す。


「奴らの闘気の中に固い忠義の心と強い覚悟を感じる。ふっ…、終焉の王は、佳き忠臣を持っているようだな。」


二人から発せられる気迫からそう感じ取り、レシンが感嘆する。


主のため敵を葬らんとするロノウァが、目を鋭くし、一歩前へ出る。


『…っっ!!』


一歩前に出るという何気ない動作だけで、ロノウァは不気味で強い圧力プレッシャーをヘレナ達に与えていた。


「ほう… あの執事服の魔族、凄まじい気だ。これが、リオン軍最後の四天王か」


「この気迫…、ここからがロノウァの本気ということね!」


「勇者とその仲間達、そして東の国最強の武人。人間軍の主力となるあなた達を倒せばこのジャホン国での戦い、魔王軍の勝利が確実となるでしょう。」


ロノウァの全身から深海の様な暗い青色の魔力が溢れ出す。


「く、来るっすよ!」


「みんな、迎い撃つわよ!」


今までにないロノウァの本気の雰囲気を感じ、攻撃に備えてヘレナ達が身構える。


ロノウァの鋭い目がカッと見開き、息を荒くしてぎらついた眼がしっかりと敵を見据える。


「な、なんていう恐ろしい眼だ…、まるで興奮して今にも飛び掛かろうとする獣の様だよ」


ロノウァの眼から狂気に似た何かを感じ、さらにに緊張が走る。


「あなた達を倒せばこの戦いでの私の功績は大きく、きっとリオン様は私をほめてくださるに違いない。そう、例えばこの様に― 」



 『…ふん、ロノウァよ、良くやったな。』 


 『そんな、我が君。私には勿体なき御言葉ッ』


『照れるな、…可愛いやつめ。』


『我が君、…リオン…様 キュン』




「………………え、なんか始まったすよ?」


強力な攻撃が来ると身構えていたブライン達が唖然とし、


隣でクロエが目を点にしてる中、


ロノウァがリオンの声を真似て一人芝居を始める。



『さすがは、俺の四天王だ。…好き』


『あっ、リオン様、何を!?』 


リオンがロノウァに近づく。 


そしてロノウァを壁際まで追い込み、


ロノウァの後ろの壁に、ドォン!っと強く手をつく。


『これは…噂に聞く、カヴェ・ドォン…』


『ロノウァ、超好き。ちゅー』


『リオ…ン様… あっ… アーッ』  




「…ふっ、きっとこうなるでしょう。 うん。」



「なるわけないでしょうおおおおおおお!!」


妄想に耽る部下に、クロエが全力のツッコミを入れる。


「帰って来きください、ロノウァ君!そのあり得ない、妄想の世界から~!」


「ハア…ハア…、Oh、我君…」


恍惚の表情で未だ妄想の世界から帰らないロノウァの襟をつかんで、揺さぶるクロエ。


「なんか、その、リオンも大変ね…」


「ほらぁ~!勇者が、眼を逸らして苦笑して引いてますよ~! 」


「私は男同士でそういうのも、わ、悪くはないと思うよ?」


「魔導士メイラ!?あ、あなた、まさかっ」


「うっ…、なんてものを想像させるんすか!?」


「うう~、なんかすみません…」


「……ふっ、終焉の王は変わった忠臣を持ったようだな…」


「なんかさっきと微妙に評価が変わってます~!」



うっとりとした顔で妄想中のロノウァを、「もう~!」と、ポコポコ叩くクロエ。


「さて、そういうわけで—」


妄想から帰還したロノウァがキリッと真顔に戻り、鋭い眼差しをヘレナ達に向ける。


「まとめて一掃させていただきますよ。」


―パチンッ


『…ッ!!』


地面から逆流する滝の如く巨大な水の壁が噴き出し、クロエ達がいる森の周囲を広く囲む。


「森ごとあなた達を水で包み込んで、溺れさせましょう!」


巨大な水の壁はさらに上空を覆い、森全体を閉じ込めるドームへと形を成していた。


ドームの中では、地面から次々に大量の水の柱が吹き出し、辺り一帯を浸水し、徐々に水嵩が増していく。


水嵩が足首までに達したところで、ヘレナが叫ぶ。


「こんな水の壁、切り崩すわよ!」


ヘレナは剣を振りかぶると、勢いよく前方に振り下ろす。


水の壁に大きな刃形の破魔の光を撃ち込むヘレナであったが、壁の一部が霧散しただけで、水の壁を完全に崩すことはできなかった。


「この水の壁は、私の全力の魔力で何層も内外をコーティングしているのですよ。簡単には崩せません!」


「くっ…少し力を加減しすぎたみたいね。でも、ここから出るには充分の隙間を開けたわ。」


そういって、ヘレナは先ほど攻撃した箇所を指す。


そこには、人が通れる程の隙間が開いていた。


「みんな、あそこが出口よ。行って!」


ヘレナの合図に、レシン達が壁の隙間に向かって走り出す。



「通さないって言いましたよね?」


「っ!クロエ!」


先回りをしたクロエが、手から伸ばした鋼鉄線の鞭を振る


「むっ!」


「 はあーっ!」


一瞬で近づいたヘレナが剣を盾にし防ぐと、そのままクロエへと斬りかかる。


攻撃を避けようとその場からクロエが退け、


入れ替わる様にロノウァが躍り出る。


―パチンッ


指を鳴らす音とともに水の塊がいくつも出現し、泳ぐ魚のような動きで空中を移動しながら、ヘレナ達に襲い掛かる。


「ふんっ!」


『破魔の光』で刀身覆った剣を素早く振り回し、水の塊を斬っていく。


斬られた水の塊は、空中で散る様に消えた。


ヘレナが、出口に背を向けて足を止める。



「ヘレナさん!?何してるっすか!」


「クロエとロノウァは私が相手するから、みんなは森を出て先にヒミカ城に行って!」


「なっ、でも…」


「大丈夫!私もすぐに追いつくから」


メイラ達を庇うように構えたヘレナが、追いかけようとするクロエとロノウァの前に立ちはだかる。


「行って!」


「…わかったよ」


「その魔族二人は任せたぞ、勇者。」


「後で追いついてくださいっすよ!」



メイラ、レシン、ブラインが水の壁の隙間を通過し、森を抜けていった。


その後、隙間は修復され、水の壁で完全に森は閉ざされた。



「命に代えても通さないと言ったものの、三人も逃がしてしまいました。私としたことが、不甲斐ないですね。」


「気にしないでください、ロノウァ君。一番面倒な勇者を足止めできただけでも上等ですよ。」


「……………」


クロエとロノウァ、ヘレナが水嵩が増していく水のドーム内で対峙する。


「私を閉じ込めるのはいいけど、クロエとロノウァ、あなた達はここから出なくていいの? まさか、私と心中するつもり?」


「そんなまさかですよ~。勇者一人を閉じ込めても、あなたならここから出る事は出来るでしょう?

なので、ドーム内の水が満ちるまで出られないようにあなたの足止めをし、確実にこの中であなたを葬るために、私達はいるんですよ。」


「なるほどね…わかったわ。」


勇者ヘレナは、強力な魔族二人を相手に一片も臆することなく、剣をスゥっと静かに構える。


「何にしても、皆に追い付かなきゃだからすぐに倒させてもらうわよ、クロエ、ロノウァ!」


そう言うと再び、全身から日の光の如く強い光を顕した。




―ヒミカ城 大広間―


魔王軍幹部 ヒミカが所有し、『対東の国の人間軍』の拠点であるヒミカ城。


その城の、およそ400畳もの広い空間を有する大広間に、俺とヒミカは居た。


勇者を残してクロエ達を突破し、この城に向かっている勇者の仲間達を迎え打つためである。


ちなみに、戦えない俺まで何故いるのかというと、理由は二つ。


一つは、戦いのどさくさに紛れて逃げださない様に目の届く所に置いて監視するため。


もう一つは……



「ふふっ、間もなく敵がこちらに来ます。 心の臓がドキドキしますね。」


「…そうですね。心臓がバクバクで、吐きそうです。 」


「数多の困難と敵を乗り越え、私達魔王軍幹部のもとにたどり着いた人間達。 勝利まで目前だと、さぞ気持ちが高ぶり、心躍り、やる気に燃えているでしょう。」


「はあ…」


「しかし、私達魔族との圧倒的な力の差の前になすすべもなく敗れていく。絶望し、心をへし折られる…その瞬間の人間の絶望した顔がたまりませんわ!」


「えぇ~……」


ヒミカは顔を赤らめ、目を輝かして テンションを上げていた。


俺の方は青い顔で、ドン引きである。


「…っていうのは、冗談でして」


(…噓こけ。)


「そんなことより、何て顔をしているのですか! シャキッとしてください。 ほら、胸を張って、背筋を伸ばして、顔を引き締めて!」


(アンタは、俺のオカンか。)


やはり少しテンション高いな。若干うざい。


「ささっ、こちらの上座に立って、リオンさんぽく胸の前で偉そうに腕を組んで。」


「自分を狩りにやばい奴らが来るっていうのに、よくそんな平常心(?)でいられるな。 」


なんか少し楽しそうだし。


「魔族という者は、本来戦いを楽しむものですわ。人間がお祭りで騒ぐのと同じようなものです。」


いくさ=祭りらしい。


(お祭り気分でいくさしてんのかこいつら)


「俺は戦う術がないから、不安と緊張に押し潰されそうだ。」


オエ~… やっぱ吐きそう。 胃もキリキリと痛いし。


「何を言ってるのですか。 別にあなたが戦うわけじゃないでしょう?」


「まあ、そうだけど…」


「あなたは、ただそこに立っているだけで良いのです。そこにいるというだけで敵は恐れおののいてしまう、リオン・アウローラとはそういう存在なのですから。」


俺が連れて来られたもう一つの理由、それは、


相手を威嚇する置物になるためである。


リオン・アウローラというブランドネームを活かし、俺の存在感を見せつけて敵の戦意を削ぐ狙いである。


(ハリボテの王の重要な任務だな。)


うまくすれば戦わずして相手が即時撤退してくれるかもと、俺は勝手に期待するが…



—ドオオオオォン


「うおっ!?」


爆発音が轟き、城内がガタガタと激しく揺れる。 


「ふふっ、来ましたね。 」


どうやら、魔法で城の壁を爆破させて入ってきたようだ。


(き、来ちゃった…)


魔族の命を取り来た連中人間達が。


(まさか、自分が人間の敵(しかも幹部)になって、首を狙われるような日が来ようとは…)


昔、冒険物のRPGゲームでラスボスの魔王に挑んでいたあの頃の俺には、この展開は想像もしなかっただろう。


(ウソみたいだろ…。魔王軍側なんだぜ、俺。マジで。)


脳筋プレイでひたすら魔法攻撃撃ちまくって倒したゲームの魔王が、


「ねえ、今どんな気持ち? 理不尽に攻められる側の気持ちわかった?」


て、言ってる気がする。


(俺、勇者を討伐してこいって言われて来たんだよな…。 これじゃあ、完全に討伐される側なんだよな…)



などと考えてるうちにも、城内のあちこちで爆発音が聞こえ、そのたびに大広間に振動が伝わってくる。


「勇者の仲間達が、城内で私が放った大蛇達と戦っているみたいですね。」


どうやら城内は大蛇屋敷になっており、


人間側は、ボス戦の前に配置されたモンスターと戦ってるようだ。


(そのまま、MP(マジックポイント)ゼロなって、今日の所は帰ってくれないかな…)


という俺の思いもむなしく、


「あらあら、うちの大蛇達がことごとく倒されてしまったみたいです。敵が間もなくここに来ますよ。心の準備しておいてくださいね。」


「すみません、ヒミカさん。心臓が、ドキドキのバクバクで準備できませぇん!」


「それじゃあ、ドキドキのワクワクに切り替えて下さい。」


そんな無茶な。


(戦闘好きの戦士じゃないんで。)


城内に響いていた爆発音が止む。


その代わり、ドタドタと近づいてくる複数の足音が聞こえてきた。


「ふふっ、来ましたね。」


「き、来ちゃったよ…」


俺は緊張で強張った体のまま、


腕組をした仁王立ちのポーズで、自分を退治しに来た人間達を迎えるのであった。







































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