魔法の剣で魔法を使う

 これ、意外とありそうでないシチュエーションですよね。

 一見すると、たくさんあっても良さそうですけど、先人たちが採用しなかったのはそれなりに理由があったんだと思います。

 今回は、その辺を独自に解釈していきます。


 魔法使いのデフォルトとしておじいさんかおばあさんだったのは、ファンタジー黎明期あるあるですよね。

 髪(もしくは髭)を長く伸ばし、暗い色のローブを着て、節くれだった木の杖を持っている。

 そのほとんどが悪役なのは魔女狩りの影響でもあるのかな? と言い出すと話が逸れてしまいますが、ここで取り上げたいのは杖の部分です。


 魔法使い=高齢者ということから、歩行の補助器具として杖が使われたのは言うまでもないことですが、魔法発動の補助までしているかどうかは、作品によるでしょう。

 また、魔法使いになるには厳しい修行と知識の蓄積が必要ということで、高齢者の方が説得力があったのも大きいと思います。

 つまり、魔法使いだから杖を持っていたのではなく、高齢者だから杖を持たせる必要があった、ということもできるわけです。


 それから時代は進み、魔法使い=高齢者という固定概念から外れた作品が増え、魔法使い=杖というイメージだけが、現代に残っている状況だと思います。

 そうなると、新しい魔法使い像を作りたくなるのが人の性というものですが、その代表例がハリーポッターだと思います。

 ハリーポッターの世界で使われる魔法の杖は、見た目は杖というよりもオーケストラの指揮棒であることは、多くの人の共通認識だと思います。

 まさに、魔法使いのイメージを更新した傑作であることは疑いなく、ハリーポッターの世界的ヒット以降、魔法の補助アイテムへの自由度が高まったはずです。

 しかし、それでも一つだけ魔法の杖にしてはいけないアイテムがあるとすれば、剣だと私は思います。


 剣についての解釈を事細かに述べると完全に脱線してしまうので、ここでは金属の棒と定義します。

 現実では鉄をベースにした鋼に限定されますが、材質は別にミスリルでもオリハルコンでも構いません。

 ここで重要なのは、剣とは重量を伴った武器であるという点です。


 魔法使いとは、異世界ファンタジーにおけるインテリの象徴です。

 前述の通り、厳しい修行と長い勉学に半生を費やしており、相応の頭脳の持ち主でないと魔法使いは務まりません。

 そんな魔法使いが、金属の棒を振り回していたら、読者はどう思うでしょうか?


 もちろん、魔法も剣も使える魔法使いがいてもいいと思います。

 魔法剣士なんてジョブも、ファンタジー界隈では常識となっているでしょう。

 ですが、魔法剣士はあくまで魔法剣士であって、魔法使いではありません。

 魔法の探求に費やすべき時間の一部を剣の鍛錬に費やし、悪く言えば寄り道をしてしまったという印象を持つ人も少なくないはずです。

 そのせいか、最強の魔法使いが実は剣の使い手、なんて設定のコンテンツはあまり見かけません。

 単純に、普通の魔法使いよりも設定を増やさなければならない、物語として冗長になってしまう問題も大きいと思います。


 少なくとも、魔法と剣の両方を極めたキャラは、人間には荷が重いんじゃないでしょうか。

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