ファイアーボールを手のひらに浮かべた

 魔法。

 異世界ファンタジーのテンプレ中のテンプレにして、ほとんどの物語において欠かすことのできない要素です。

 ただ、この魔法の概念、作者によって意外と違いがあることを、一定以上の読書歴がある方ならご存じだと思います。

 その代表的な例の一つが「魔法の火は物理現象の火か否か」だと思います。

 今回はその辺をちょっとだけ掘り下げてみます。


 世代によって差はあるでしょうが、最も有名な魔法といえば「スレイヤーズ」に登場するファイアーボールだと思います。

 魔法で火球を創り出し、標的に向けて打ち出す攻撃魔法です。

 初出から数十年、基本的に魔法の名前に著作権はないため、異世界ファンタジーに限らず様々な物語で登場していますが、多くのケースで共通するルールがあります。

 それは、魔法の火とリアルの火は違う、という点です。


 ファイアーボールが登場する場面でよく目にするのが、自分の手の上で火球を浮かべるシーンだと思います。

 味方がやっていれば頼もしく、敵に回せば恐ろしく見える代名詞ですね。

 火球をいくつも作ってお手玉のように回したり、手のひらから次々と打ち出すことで反撃の隙を与えなかったり、大げさかもしれませんが夢のある光景です。


 ちょっと無粋ですが、これを物理現象の火に置き換えてみましょう。

 もちろん、現実にはほぼ不可能な話ですので、たいまつとかを代用して想像してみましょう。

 当たり前ですが、手の皮膚が燃えますよね。悪くすれば、手そのものが燃えます。

 魔法の火球でそんなことが可能なのは、現実の火球と違って物理法則が適用されないから、もっと言えば本物の火とは全くの別物だからです。


 他にも、炎でできた剣とか、炎の障壁とか、炎の竜巻とか、炎のオーラとか。

 本当に燃えていたら周囲一帯は大惨事です。建物があれば燃えまくりです。

 ですので、ほとんどの異世界ファンタジーでは、あまり魔法という現象を解説することがありません。

 あいまいにしておいた方が使い勝手がいいということもありますが、作者自身があまり深く考察していないケースも少なくないでしょう。

 考察していない程度ならまだいいのですが、あまり魔法を便利使いしすぎると、設定上の大きな矛盾をきたすこともありますので注意が必要です。


 なぜ魔法の多用が危険なのかは、別の機会に。

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