城はデカけりゃいいってものじゃないよ

 異世界ファンタジーにおいて、お城は一種の象徴だと思います。

 外からの侵入を拒む城壁に、遠くからでもよく見える尖塔(日本だと天守閣ですね)。

 城の規模は大きければ大きいほどよく、城の主人の力を表す、一種のステータスになっています。


 ただし、城を文章でリアルに表現しようとすると、イメージだけで突き進むわけにもいきません。

 その実例を書いていこうと思います。


 先日、拙作のとある描写に、読み手の方から指摘を受けました。

 その描写は、魔法で砦の壁を作る時にうっかり高くしすぎてしまい、後で慌てて削ったという下りだったのですが、「別に高いままでもよかったんじゃ?」という趣旨の指摘でした。


 一応、砦のスペックをおおまかに紹介すると、


 砦の収容規模は一般人無しの300人、

 壁の材質は魔法で固めた土、

 土の採取のついでに空堀も構築、

 壁の建設は魔力量の多い主人公とエリート魔導士10人で等分で負担、

 主人公が最初にやらかした壁の高さはビル三階分、

 砦構築の目的はすぐ近くにある街への侵攻を阻むための前線基地、


 というものでした。


 さて、本題に入りますが、そもそも良い城とは、どんなものを指すでしょうか?


 強固な壁。もちろん大事です。

 食糧や武器などの十分な備蓄。籠城できる日数に大きく関わってきます。

 敵が攻めにくい立地。戦略の基本ですね。


 ですが、私が思う最も重要な良い城の条件とは、味方にとって守りやすいかどうか、です。


 先ほど挙げた通り、現有兵力は三百人です。

 魔法で作る砦が、この三百人を収容できる規模であることは最低条件ですが、同時に、この三百人だけで守れる規模の砦でなければなりません。

 昼夜関係なく防衛戦力を常駐させるとしたら、最低三交代制は欲しいところですから、百人ずつで砦の防衛に当たります。

 さらにこの百人から、指揮官と参謀、武器や食料などの補給要員、その他諸々で、最低でも二十人は減ることになると仮定します。


 八十人。

 これが通常の防衛に割ける戦力だとすると、砦の大きさもこの人数に準じなければなりません。

 ここで、壁の高さが大きな要素になってきます。


 確かに、砦の壁は高ければ高いほど、敵の侵入を拒めます。

 ですがそれは同時に、補給要員の体力を消耗させ、兵士の元への物資の到着を遅らせる障害でもあるのです。


 また、砦が強固であればあるほど、敵軍には別の選択肢が生まれてきます。

 すなわち、砦の攻略を諦めて、直接街を狙うという作戦です。

 この場合、敵の余剰戦力次第でもありますが、一定の兵力を砦に残して挟み撃ちを防ぎつつ街へ侵攻というのは、十分に有効な戦術です。

 悪くすれば、素通りした敵軍から街を守るために焦って砦から出撃したけど、実は敵の罠で挟み撃ちにあってしまった、なんて結末もあり得ます。

 難攻不落な砦が仇となるケースもあるってことです。


 ちょっと走りすぎてしまった感はありますが、防衛拠点の構築とは、それだけで奥が深いものであり、強くて大きければいいものじゃない、目的に沿った規模や造りを心掛けるべき、というものです。


 まあ、デカい城はそれだけでロマンがありますけどね。

 小説に出すとなると、それなりの背景が必要だってことです。

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