走光性

深海

※チョウチンアンコウが苦手な方はご注意ください。




 深海魚、チョウチンアンコウ。

 暗い深海で退化した目や、光で餌をおびき寄せることや、オスよりメスのほうがからだが大きいことで比較的知られている。


 は、アンコウ目フタツザオチョウチンアンコウ科イナホツノアンコウ属クロツノアンコウ、と名乗った。

 その上で、ヒトが勝手に作った分類だから、と不快そうにした。




 クロツノアンコウは熱帯から亜熱帯大西洋の東西両側、薄光層や透光層と言われる水深七〇〇mに生息する、と確認されている。

 体長はメスのほうが大きく、交尾の際オスはメスに吸収される。


 頭部、腹部、尾が一続きになった楕円体の無骨なからだ。ヒトの助骨を取り出して無理に接合したような尾鰭。

 青紫がかった黒岩のような皮膚は微小な棘状で、表面をまるで苔が覆っているようだ。

 ビーズを縫い留めたような黒眼。

 上顎に被さるように突き出した下顎。口唇は眼の後方まで裂け、そこからまばらな歯列が覗く。

 頭頂には体長と同じくらい長く伸びた誘因突起。


 泳ぐというより、海流に沈む水風船のように揺蕩う。

 時折、胸鰭と尾鰭を扇のように仰ぎ、からだ全体をぬろりぬろりと揺すって水中を上へと這うように進む。





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