ない!ない!

思い立って、壱岐新春マラソンに出場した。


壱岐新春マラソンのコースはよくできている。アップダウンの激しい前半にコースを走り終えるとと、観客がたくさんいるスタート地点に、一旦戻ってきて、応援がもらえる。そして、後半は、海沿いの道をひたすら走り抜ける。往路と復路が一緒の道で、先に走ったランナーと顔を合わせるので、刺激になる。


半分を走り抜け、沿道の応援にも元気づけられ、さあ、後半走るぞ、という時。一月の壱岐は十キロ走っても、まだ寒く、体が冷えて、おしっこがしたくなった。トイレ、トイレ・・・と。


ちょうど沿道に公衆トイレがあった。ありがたい。させてもらおう。トイレに入り、小便器の前で、凍える手で短パンを下げた。


え?ない!ない!どういうこと?おちんちんがない! とれた?いやそんなはずはない! いつもあるはずのものがない。どういうこと?焦って探したが、どうしても見つからない。 あ、見つけた!股間の奥の奥。小指の先っちょみたいなおちんちん。 新春の壱岐の寒さは、おちんちんを極限まで小さくしてしまったらしい。こんなの初めてだった。そして、おしっこはしたいのに、このおちんちんからは肝心のおしっこが出ないように小さくなっていた。諦めて、コースに戻った。 僕は、おしっこはしたいけど、できない、という状況で、苦しみながら完走した。


完走した後も、しばらくはおちんちんは現れず、おしっこがしたいのにできない苦しみを味わい続けた。


やっとやや回復して、おしっこが出た。やや回復したおちんちんから出たおしっこは照準が定まらず、いろんな方向へほとばしり出た。 そのあと、何食わぬ顔で、仲間内の出場者と応援者で飲み会だったが、小さい状態から、やや小さい状態にもどっただけで、なんだか不安だった。


その後、温泉に入って、ふやけて一人前になったおちんちんを見て、やっと安心した。

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