爆裂令嬢アイアン・メイデン

きょうじゅ

爆裂令嬢アイアン・メイデン

「ぶっ飛べ! “山盛りの火薬マッチ&フラワー”なのですわ!」


 そう言うや否や、私の手のひらが握りしめるその先で、オーガ族の重戦士の頭が吹っ飛んだのですわ。


 わたくしの名前はラクテア・クリスタータ・ユーフォルビア。もとは地球人でもとの名前は山田隆子やまだたかこと言ったんですけれども、ちょっとしたきっかけというか地球で大型トラックにカエルのようにひき潰される羽目になりまして、この異世界マギファニアに送られてきたのですわ。


 そのとき転生女神を自称する珍妙な女が現れたので、わたくしは言ったのですわ。


「どんな能力でも自由に一つ選んで決めていいですよ。どんなのにします?」

「〇ンター×ハン〇ーのゲ〇スルーと全く同じ能力をお願いしますわ」

「おい馬鹿オタク、著作権って知ってるか? 集〇社は割と厳しいんだぞ?」

「アイデアに著作権は発生しないのですわ」


 というわけで、わたくしは両手で掴んだものを爆破する能力と、マギファニア世界に生まれ変わったわたくしに仕えていた二人のメイドの女、フリーネとアーニスと同時に発動することで広域爆発を起こす能力、その二つを手に入れたのですわ。でも、実はマギファニアという世界はゲームの世界で、ラクテアという女は悪役令嬢でしたので、王子と関係を結ぶ前に婚約を破棄されて後宮から追放されてしまいましたの。


 それでも、割と強力な攻撃能力があるものですから、わたくし冒険者ギルドに登録をいたしまして、しばらく活動していたんですけれども。


「おい、ラクテア、フリーネ、アーニス。お前ら三人とも、俺の勇者パーティーから追放な。つまりクビ」

「は?」

「お前らの能力、強いかもしれないけど危なくってしょうがないんだよ。だからクビ。これまでの給料は損害賠償分でチャラってことにしてやるから、今すぐここから消えろ」

「勇者さん。わたくしのもう一つの能力についてご存じでしたかしら?」

「知らない」

「簡単に説明すると、あなた方の身体のどこかに触れて、わたくしが“アイアンメイデン”と唱えますわ。そうすると、爆弾がセットされますの。そして、その爆弾は、この情報があなた方の知識となったその瞬間に“具体化”します」


 勇者の頭に爆弾が現れましたわ。ほかのパーティーのメンバーたちの体の一部にもですわ。


「なっ! なんて真似をしやがるんだ!」

「で、面倒だから間は省きますわね。こう叫ぶと、その爆弾は爆発しますの」


 わたくしはフリーネとアーニスと手のひらを合わせて、こう叫びましたわ。


「「「大売出セールス!」」」


 勇者の頭は割れた風船みたいに吹き飛びましたわ。爽快でしたわ。魔王の城の門を開けるのに必要な聖剣はわたくしのものになりましたので、わたくしはフリーネ、アーニスと三人で、魔王城まで乗り込んだのですわ。でも魔王は強敵でしたわ。


「ぐわっはっはっは! 人間の小娘など、しょせんこの程度よ! ほれ、三人まとめて可愛がってやろうではないか! ほれほれ!」

「くっ……殺せ!」

「アーニスに乱暴するつもりですか! 薄い本みたいに! 薄い本みたいに!」

「アイアンメイデン」


 わたくしは魔王の頭を掴んで合言葉を言おうとしましたわ。しかし、その手は読まれていたようで、魔王は直前で身を翻しましたの。おかげでわたくしたち三人の貞操も無事でしたけれど。


「こうなったら……! 最後の手段ですわっ!」


 わたくしは魔王ではなく魔王城の床に両掌を触れて、叫びましたわ。


「アイアンメイデン!」


 アーンド


「「「大売出セールス!」」」


……


……


……気が付いたら、わたくしはまた転生女神のところにいましたわ。


「どう? 面白かった?」

「あれ? 魔王はどうなったのですか? 城ごと吹き飛ばしてやるつもりだったのですけれど」

「君の爆破能力が城だけじゃなくてマギファニアの全部の大地に及んで、世界が全部吹っ飛んだ」

「ええー? フリーネとアーニスは?」

「当然爆死。というか、君も爆死したからここに来たんだよ。で、どうする? 別の異世界もあるけど、今度はどうしたい? 今度は男に転生でも、スライムに転生でも、何でも好きなようにやらせてあげるよ」


 そこでわたくしは、転生女神のドたまを両手で掴んでこう叫んだのですわ。


「“山盛りの火薬マッチ&フラワー”なのですわ!」


 ムカつく相手の頭がスイカが割れるみたいに吹っ飛んだので、わたくしはせいせいしたのですわ。

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爆裂令嬢アイアン・メイデン きょうじゅ @Fake_Proffesor

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