第31話

 少々もったいぶりだからもプライムは話を始める。


「この辺りの地理についてそこのミロットって子にに聞いたんだ」


「この辺りの地理ついてだと?」


「そうさっ僕は湖の下の神殿に封印されたわけだけど、その時からだいぶ時間が経ったからね~自分が今どの辺りにいるのかを改めて確認したってわけだよ」


 成る程、確かに今の自分がかつてのどの辺りにいるのかを知らないとナビなんてしようがないわな。


「分かった、それで話の続きだ」

「そうそうっさあ話せよお前の知ってる情報をよー!」


「もう分かったよ、いいかい今僕たちはこのフレッゾの町がある荒野、かつてはアネム荒野と呼ばれた場所でね、ここを南に抜けると広大な砂漠が広がってるだ」


「ミロット、そうなのか?」


「そうだそ、もっとも砂漠のことをフレッゾの人間はカリオン砂漠と呼んでいるがな」


 アネム荒野とカリオン砂漠ね、まあ砂漠の名前なんて俺はどうでもいい。そこにプライムだけが存在を知っている魔境だがダンジョンとかがあるってのか。


「プライム、そこには何があるって言うんだ」


「君たちがカリオン砂漠とい呼ぶ砂漠はかつてここには『砂竜王』と呼ばれた存在が支配していたんだよ」


「砂竜王? 砂漠にドラゴンでもいたのか?」


「正解、正確には砂漠にあるダンジョンの支配者である1体のドラゴンのことさ、こいつがこれまた強欲な上に強大な力を持つドラゴンでね。かつて砂漠や近くにあった国々を滅ぼしては財宝をダンジョンに持ち帰ってに溜め込んでいたんだよ」


 ソイツはまた、実に俺がイメージする邪悪なドラゴンのお手本みたいなヤツだな。

 異世界だからドラゴンもいるかもと常々思ってはいたが、まさか最初に耳にするドラゴンがそんなろくでなしドラゴンになるとは思わなかったわ。


「……そんなドラゴンの存在はあの砂漠の歴史を記したどの文献には載っていないぞ」


「そりゃそうだよ龍の一族にとってもあいつは恥晒し以外の何物でもないはずだからね、この大陸の歴史からも消されてるはずだよ。何しろ勝手に竜王を名乗った身の程知らずだからね~」


 ミロットが難しい顔をしながらする質問に何でもない風に答えるプライム、更にミロットが難しい顔になったぞ。


 歴史から消されるってどんだけなんだそのドラゴンは……プライムが語る以上にあくどい真似をしてる可能性が高そうだな。


「つまりお前が知る情報っていうのは…」


「その通り、僕が知っているのはそのドラゴンがかつて財宝を溜め込んだダンジョンの場所さ、あっもちろんそのドラゴンはとっくに同族に狩られてこの世にはもういないはずだから。ダンジョントラップだとかモンスターだとか、そういったのを相手にすれば良いってレベルの難易度だと思うよ?」


「それで? 実際の所お宝はありそうなのか」


「おそらく途方もないほどの財宝が手に入ると僕は見ているよ、砂竜王が別の場所に財宝を移したとは考え難いしね」


 途方もない財宝か……いいねっ夢があるね。

 俺わくわくするぞ!


 そのドラゴン自体がいないのは少し残念な気もするが……いやっ流石にいくらファンタジーつってもドラゴンなんぞと真正面からやり合うなんてバカのやることだ。


 俺は堅実に、それでいて手っ取り早く稼ぐことを望むチビエルフ。異世界では成功したいチビエルフなんだ!


「いいぜプライム、お前のその話に乗った。ちなみにダンジョンの中についてもナビとかできるのか?」


「ダンジョンまでの道のりはわかるけどそっから先のヒントはないよ、ラディアは冒険者なんだろ? だったら自分の実力でどうにかしなよ」


 言うじゃねえかこのスライム野郎。

 だがこの世界に来てようやく目的らしい目的をひとつ得た、その砂竜王のダンジョンを攻略し 財宝を手にしてウハウハ。


 まさに異世界ドリームの王道じゃないか。


「よしっ! ならその砂竜王のダンジョンとやらを俺が攻略してやるぜ!」


 何の意味もないのだが、俺はシャドーボクシングをした。シュババッ!

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