第30話

 その後俺たちはフレッゾの町に戻った。

 バイラスゴーレムとチビクロはそのままでは目立つので、まず俺とミロットが先にフラッゾに戻り衣類を用意してゴーレムたちに着させ一緒に入る。


 バイラスゴーレムはうまいことタコ足をごまかして二本足の人間風にすれば案外バレないな。

 チビクロはもともと俺と大差ない体型なのでマントの一つでも着込めば案外気にする人間はいなかった。


 そして俺たちはまずミロットのアトリエに向かう。


「というかミロット、結局お前から頼まれた薬採取の依頼は クリアできなかった訳だが…」


「薬草なんかもうどうでもいいさ、それ以上に面白そうな出来事がいくつもあったからな。私は満足している」


 なんと言うかミロットというやつは自分の欲望に忠実なやつだな、まあ依頼主が問題ないと言うのであればその言葉に乗っかっておこう。


「こっちとしては報酬は何ももらえないんだったら骨折り損なんだがな~~」


「さすがに命も助けられたし、あんな神殿にまで行けたんだ、報酬はちゃんと払うさ。少し待ってろ」


 ミロットが席を外しアトリエの奥に消えた、しばらく待つと片手に袋を持って現れた。

 それを俺が座るテーブルの上に置く、どうやら中身は金貨のようだ。


「報酬だ、五十万シルトある」

「毎度あり!」


 俺はそれなりの大金を手に入れた。

 これとあとはプライムが入ってるランプを売っ払えばしばらくは金に困らない生活を送れるだろう。


「このエルフ……なんか邪悪なことを考えていないかな?」


「あのな……エルフが邪悪なわけないだろ! 俺はチビではあるがセイントなエルフなんだよ、あんまり失礼な事を言ってるとマジでうっぱらうからなこの雑魚モンスターの代名詞が!」


「ひっひどいよ~~!」


「ラディア、お前……」


 ミロットになぜかドン引きされた。

 なんで引くんだよ、ふざけんじゃねえぞエルフってなんか基本的に聖なる感じあるだろうがよ!

 金髪で碧眼だしさ!


「じゃあ聞くけどプライム、お前は当たり前みたいにこのアトリエに来てるけど、何かしら俺やミロットにプラスになるような働きでもできんのかよ、出来ないなら黙ってお金になってくれ」


「ラディア、君は本当に心の中にある闇を一切隠そうとしないタイプなんだね」


 失礼なヤツだな、心の闇くらいは隠してる。

 隠した上でこぼれ出たものをお前たちに向けているだけだよ俺はっと内心では思う。


「はぁっ……仕方ないな、それじゃあこの僕の持つ 数多の知識をほんの少しだけ貸してあげるよ…この世界には今も昔も冒険者と呼ばれる命知らずな輩がいるだろう? そいつらを雇って僕が知る秘境や魔境やダンジョンに行けばいいと思うよ」


「………冒険者を雇ってねぇ~」


 俺はやる気ゼロの返事をする、そんな連中雇って、仮に冒険が大成功してもだ、財宝目の前にしたらそれ持ってばっくれるに決まってんだろう。

 少なくとも俺ならばっくれる。


「おそらく大半は今の人類ではまだまだ到達不可能なところばかりだからそれはもう凄まじいくらいの財宝が眠っているはずだよ~」


「……… 凄まじいくらいの……財宝」


「そうっお金が大好きな君みたいなエルフにはそれが一番嬉しいんじゃないかな~?」


 このクソスライム、俺の心を読んでやがる。

 しかしその通りだ、俺が前にいた世界であれ異世界であれ、ぶっちゃけ金があればある程度のことはどうにかなる。


 特に生活面だな、それが困らなければ色々と心に余裕が生まれる。

 俺は余裕のある人生を生きたい、いろんな意味で 世の中を楽しめる立ち位置にいる人間…いやエルフでいたいのだ。


「わかった、プライムお前の話に乗ってやるよ、だからそのお前が知っているっていうダンジョンやらなんやらの話を聞かせてもらうぞ」


「いいよっただし力のない者が行ったところで命を捨てるだけだ、そこのところは重々理解してくれるよね?」


「ああっ 問題ない、俺はこれでも冒険者だからな!」

「…………… え?」


 プライムの表情はプルプルでわからない、しかしなぜか唖然としてる気配を感じた。


「?……何だよ 」

「君が…冒険者? 嘘でしょ、エルフの子供じゃないか」


「お前な…あの神殿がある湖に住んでるバイラスってとんでもない魔物を倒して湖の水を抜いてから神殿に入って変な罠とかを全部乗り越えてお前が入ってる宝箱をゲットしたのはこの俺様なんだよ!」


「……言っておくがこの私もそれなりに力を貸したからな?」


 ミロットには自らの手柄は主張している、俺はそういう風に自分の手柄から主張する人間は嫌いじゃないんだ。


 そういうヤツの方が能力の有無を判断がしやすいし何より俺にはそこまで他人の実力を見抜く目なんてないしな、まあそんなことはどうでもいいか。

 


「とにもかくにも、まずはお前の話を聞いてからだ。 聞かせてくれるかその冒険の匂いのする話ってやつをよ」


「仕方ないな~わかったよ。君は嘘はついている気配はないし信用して話をしようか」

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