第25話

「どうしたんだ? この文字について何か心当たりがあるのか? エルフは博識でも有名な種族だからな」


「いやっまあ…そのなんだ、あれかなあれ…」


  なんと言えばいいんだろう、ぶっちゃけ異世界ファンタジーとは遠いところにある島国の文字が書かれてますなんて言っても信用しないだろ。


 これって日本語っぽいけど実際はこの世界で生まれた異世界文字だったってオチがあるのか?

 とりあえず内容を読んでみる。

『巨大なる魔力を持つものよこの祭壇の前に立ち「開け旅の扉」と唱えよ。さすれば道は開かれる』と書かれているみたいだ。


 なんか古臭いファンタジーゲームに出てきそうな文面だな、しかも旅の扉ってさ……まさか。

 いや俺は先を考えないことでした。


「ミロット少し後ろに行ってくれ、ここに書かれてる呪文を試してみる」

「わかった…」


 ミロットが後ろに下がるのを確認し俺は祭壇の前 立つ、このセリフ俺が言うのか…なんか気分が萎えるわ。


「はぁっやるか……開け旅の扉!」


 俺の言い放った言葉に呼応するように目の前の祭壇が光り出す、なんとなくだが俺の体から魔力的なものを吸収されている感じがほんのわずかだが感じた。


  そして祭壇の真ん中に青く光る魔法陣が現れた。その魔法陣は時計回りにくるくると回転していた 確かに色合いといいくるくる回転といい旅のあれに似ている感じもする。


 この魔法陣に乗ればどっかに行けるんだろうな、そして何処に行けるかは分からない、それが旅の扉だ!

 ミロットが驚愕していた。


「まさか本当に古代文字が読めたというのか、お前は本当に何者なんだ?」


「何でもない旅のエルフさんだよ」


 日本語を古代文字なんて気取った感じで言うのやめてくれる?

 恥ずかしいからさ、あんなの島国言語だよ島国言語。


「多分だけどあの魔法陣の上に行けばこことは別の空間に行くことになると思うぞ」


 何故ならそんな感じの魔法陣だからこそ、あれは旅の扉と命名されてるんだと思うのがあのとあるクエストに情熱を注いだ世代のバイブル。


「そっから先はどうなってるかわからないけど行ってみるか?」


 少し躊躇したような表情をするミロット、当たり前かちなみに俺は冒険者なチビエルフなので当然行く。

 俺は魔法陣の方へと近づいて行った。


「ラディア、お前本当に行くのか?」

「行くぜ、俺はこれでも冒険者なんでな」


 俺が魔法陣の方に進むとミロットのやつもおずおずと進み始めた、やっぱり1人じゃ怖いけど2人なら何とか行ってみたいという好奇心が勝つようだ。


 その気持ち俺もわかるぜ、とりあえず護衛として念のために……。


「ゴーレムクリエイト」


 リザードマンメイジとサゴンゴーレムをそれぞれ2体ずつ用意した。向こうでゴーレムが呼び出せるかどうかわかんないからな本当はもっといっぱい出すのもよさそうなんだが、既に小型のミミ……蛇サイズのスネークゴーレムを大量に用意してるしコイツらで十分だ。


 「メイジ、サゴン、それぞれ1体ずつ。それとスネークゴーレムたちは魔法陣の上に乗って向こうの様子を確認してきてくれ」


 必殺のゴーレム先行作戦発動!

 視界を共有できる俺なら向こうの様子を普通に確認できるじゃないか、そのことに今さっき気がついた俺は自分のずる賢さに内心褒める、内心な。


「お前……さっきの冒険者だからなっていう発言はどこに行ったんだ」


「うるせえ安全マージンとって何が悪いってんだ、俺はエルフだが命は一つないんだ、死にたくもないし怪我もしたくないんだよ!」


「おっお前………」


 ドン引きしているが冒険してる人間の本音なんてそんなもんである。

 スリルは楽しみたいけど本当に危ない目とか怖い目とかねは会いたくない、それが全てだ。


 言っていてなんだか、俺でも端から見るとそんなやつ死んでしまえと思ってしまうな、我ながらしようもない……とにもかくにも俺はゴーレムを送り出していく、そして視界を共有し旅の扉の向こうの様子を確認してみた。



 ◇◇◇◇◇◇



 旅の扉の向こうは俺たちが今いる神殿を作られたばっかりの時並みに新しくした感じ、そしてその規模を何十倍にも大きくしたような感じだった。


 白い柱、床、そして高い天井。そこには荘厳さを感じられた、なんか神様とか出てきそうなそんな神殿である。


 そんなとこにゴーレムを送り込んだことが少し申し訳ない気分になる、まあ辞めないけどな、とりあえずゴーレムたちを先行させ神殿内部を探索させる。


 旅の扉の先でも視界が共有できるということに関して何気にこの能力ってすごいよなと思う。

 まあそれはどうでもいい、探索を進めていくがこの神殿、やはりこういう荘厳な場所にはモンスターを類は住み着いていないのか何も現れない。


 ぶっちゃけリザードマンメイジとサゴンゴーレム は真面目に探索しているがあまり役に立たない、むしろ数だけは多いスネークゴーレムの方がどんどん 周囲に広がっていく。まあ仕方ないよな物量こそが正義だ。


 かなり広い神殿だがスネークゴーレムの人海戦術の前では無力、もりもりと探索が進んでいくがお宝の類は何もない。


 まあ神殿なんだからそんな沢山のお宝があるというイメージもあんまりなさそうだしな、とりあえず俺のゲーマーの勘を頼りになんかこう神殿の奥っぽい場所を適当に捜索する。


 そしてそれらしい場所を見つけてはハズレを引くを繰り返した。


「本当になんだよもう~こんだけ期待させといて本当に何もないのか、ふざけんじゃねえぞクソ神殿が お宝なしのハズレ神殿が!」


「ラディア、口が悪いぞ。バチでも当たったらどうするんだ」


「バチだと? 当てれるもんなら当ててみんかいってな!」


 俺はお宝が発見できない探索にイライラしてむしゃくしゃしていた。

 しかしそんな俺のイライラ具合に反応したのか1箇所、怪しい場所を発見した。


 そこはドーム状のかなり広い空間だ、その空間を素通りした先に、半透明の膜のようなもんに通せんぼされた。ゴーレムが通れないぞ。


 そしてその先には小部屋がある。

 その小部屋の中心には紫色の水晶のようなもので作られた台座があった、その上にこれ見ようがしに宝箱があったのだ。


「よしっ宝箱発見、行くぞっ!」

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