四度目の殺人(下)

 がノおみあかふゆじゅういちがついつよるおそく、ものノべノえノいノむらじしびつかわして、のちノおかもとノみやしゅうぜんするにんほこたせて、こまノやまのふもといちいえありまノかこんだ。そしてはやうまててろノ温泉ばし、ありまノほんよしなかノおおえノしらせた。

 あかいちいえををほうさせるときに、いささかちゅうちょしないではなかった。がノおみいちぞくとして、ありまノかついでいままでのあだちをするということがかんがえられぬでもない。それをのぞこえうじなかささやかれている。

 だががノおみといううじためにそうまでするがあるのだろうか。うじおとろえてうじまもれなくなるなら、こちらもうじためにするわけにはいかない。それよりもこっくんにこそつかえ、くんしゅしんにんけたものしたがうにしたことはい。かまたりというのはむらさきこうぶりぬすんだわぬやつだが、はたらけばそれなりにむくいてくれるらしい。さくりゃくとおりにしてやろう。

 ありまノはわけもなくつかまった。もりノきみおおいわさかベノむらじくすりしおやノむらじ鯯魚このしろというさんにんきょうぼうつみによりとらえられた。もっともおおいわくすりには、ほんについてしょうげんをすれば、しばしおもてざいとしてどこかへおくったあとかえしておももちいるというやくそくあらかじめしてある。鯯魚このしろというのは、もともとかる皇子ノみこきんじゅで、ちょくちゅうとおして、ありまもっているようなおとこであった。

 ありらをしばってきノくにおくとき、その舎人とねりにいべノこめというのは、しゅじんつかえることしかかんがえられぬようなもので、つかまりもしないのにいてった。

 ここのかりみやありまノらをてさせて、なかノおおえノみずかつみい、

なにゆえにかくにかたむけむとはしつるぞ」

 とこの従弟いとこく。あり

おのれ全然もはららず」

 とのみこたえる。

 

 ありまノは、ひさしぶりになかノおおかんじずにゆっくりやすみたくて、やまとノくにこまいちいえかえったのであった。鯯魚このしろこめたびともをしていた。しおやノむらじがノおみけんぞくで、すノつかさをしているあかしんようできるとして、うことをすすめた。ありあかいしかわノおとうとであることから、なかノおおかまたりにはこころよからずおもところがあろうとかんがえた。

 のちノおかもとノみやったときじゅういちがつみっであったが、あかたしか、にんどもがつづさくつかれているとして、

「もしほこたばそむくことくもなけむ」

 とったのであった。鯯魚このしろはこのことを、あかにんどもをありのためにうごかすがあるとしたのだとかんがえ、そのようにみみちした。ついそのになって、

としはじめていくさもちいるべきときか」

 などとじょうだんにもったのがかつであったのだ。あとからおもえば、あかめかけばらで、ちゃくであったいしかわノにはどうじょうかったのであろう。


 なかノおおにはもとより、ありからじょうくつもりもく、そのひつよういのである。しょうにんはもうかくしてある。おおいわくすり、それにあかありつみっているはずである。ふたによれば、ありいつひるあかいえたずねた。鯯魚このしろともをしていた。あかおおいわくすりしんようものとしてありすすめた。

 あかくすりうらないにたくみだとしょうかいすると、あり

ひとつみかぞえててんのううるたえまつらむとせば、さきにあるぞや」

 と占卜せんぼくもとめた。くすりきゅうまいかみき、それぞれをねじってくじつくり、そのみっつをありかせた。ありがそのくじひらくと、

はん」「せん」「ろう

 というさんた。ありがそのけとくすりめいじると、くすりは、

おおきにきちなり。ただしそのくわしきは皇子みこみずかきたまうべし。さにあらねばそのことがたけむ」

 とこたえた。ありはふむとかんがえたすえに、

「まず皇宮おおみやきて、ふないくさもち牟婁むろふさぎて、ひとやめるがごとくならしめば、そのことやすけむか」

 とった。


 ありにはたしかに、そのときにそのようにつぶやいたおぼえがある。しかしそれはなにもそのとおりにじっこうするかんがえがあってべたものではない。ただそうぞうだけをしてらしにするといういつものあそびのつもりだったのである。ただそこで、

「まだおおみとしとおあまりここのつ

 と鯯魚このしろった。そのとしではまだひといてない、しばらくえよ、というな、あまりにもいさごとであった。そのためにまるでほんったようになってしまった。もっともそれがわるかったのでもない。はじめからあのかまたりというこうかつがりものによってまれていたのであろう。

不可解しらず

 もはやなにい。そうかえすのみである。


 じゅういちにちうつくしいきノくにうみいちぼうするふじしろノさかというところで、ありまノくびめるけいしょされた。鯯魚このしろほんきょうはんとして、こめじゅんのぞんだため、ともにころされた。おおいわかみツぬノくにへ、くすりわりノくにへ、やくそくどおかまたりからがらしょうあたえられて、ざいよそおってった。

 

いわしろの はままつを むすび さきくあらば またかえ


 ふじしろノさかにはまつならんでいる。そのえだひとつのつなかっていた。こうしゅけいおこなったたじひノむらじというひとが、くびくくりのつなむすけてかえったそうだ。それよりまえありまノころされようとして、こんなうたうたった。まつえだむすつくって、らいさいわいこそあれば、またここによう、と。こんなうわさだれかがつくっていた。


 すべてがわったあとはじめて、なかノおおありほんよしと、そのしょけいませたことをてんのうそうじょうした。てんのうは、

よろしい

 とだけい、

これよりのちなんじしたいようにすべし。ことごともうすにはおよばず」

 こうくわえて、おいうんめいにはなんかんしんたないようしめした。

 なかノおおかまたりは、このさつじんけっおおいにまんぞくした。てんのうがしばらくこのきノくにとうりゅうしていることはごう好い。ここはりょうしつもくざいさんとしてられている。かまたりふたたけんとう使はっしゅつすべきことをく。まえけいけんからとして、ぞうせんじゅつこうじょうしている。こんこそせいこうするはずなのだ。しゅとしれまでにふねさんだんけることがた。

 けてそくだいねんはるしょうがつみってんのうのちノおかもとノみやかえった。

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