第29話 家政"夫" マルコへ行く パートⅡ

 8階の寧々のところで講師をして、帰宅するといつも京介は康太の愛を確かめるかのように、求め抱く。

 抱き終えると、康太は夕飯の準備にとりかかる。

 暇はないのだ。

 だが、そんな康太の邪魔をするのが、京介である。

 彼は康太をハグした状態から離れない。


「京介さん、仕事をしてください」

「大丈夫だよ、お前がいない間に会社に行ってやってきた」


「ならメールの確認を。」

「急ぐメールは来てないから大丈夫」

「ゲームを進めておいてくれませんか?」


「なんだよ、俺が邪魔か?」


「この状態で料理するの大変なんですから。邪魔です」

「じゃ俺も手伝おうか?」

「余計大変なことになるので、お願いですから座っておいてください」

「はいはい」


 そんなラブラブ生活もかれこれ9ヶ月が経過した。



「皆さん夕飯の準備が整いました」


康太の声で和子と京介はダイニングに座る。


「康太、今週末は、お前も一緒にパーティに行くぞ」


「パーティ?」


突然の京介の言葉に和子と康太は目を丸くする。


「どのパーティに康太さんを連れて行くの?」


「今週末、高柳家がスポンサーにもなって作った豪華客船のお披露目会があるらしく、是非とも出席してほしいと案内が来てた。」


「案内は誰宛なの?」

「俺と康太」


「どうして僕が?僕よりも和子様が行かれる方がいいでしょうに」

「寧々さんが、お前にも参加してほしくてきてるんだろ?」


「今週末って明後日じゃ?そんな急に」

「案内は3ヶ月前だったかな?だいぶ前に来てたよ」


「聞いてませんが……」

「あぁ、言ってないからな。言ったらお前断るだろ」

「僕なんて場違いですよ!」

「お前に来てるんだ。もう参加で出してるから」


「そんな勝手なー!」


「ということでこれからはその準備もしよう。とりあえず明日は服の用意だ。

 あ、美容院も予約してくれ。2人分な」

「勝手なんだからー」



 翌日、2人は朝から出かける用意。

「京介さん、美容院は本日の午後イチから2人分大丈夫だそうです。」

「よし、じゃ服を買ってランチしたら美容院行こうか。もう出れるか?」

「はい」


「お前とこうやって出かけるのはどれくらいぶりか?久々だな。ごめんな、いつも家で」


「7ヶ月は経過しましたね。いいんですよ。僕は家が大好きですから」


 7ヶ月前、寧々の兄十維に頼まれて出かけたことがあった。それ以来の2人での外出である。

 車に乗り走り出す。外を見ているとふと、初めて2人で出かけた時のことを思い出していた。


「初めて出かけた時、あの時は京介さんとこんな関係になれるなんて思ってもなかったな」


「康太は俺のこといつから好きだったんだ?」


「ヒミツです」


「なんでだよ?」


「じゃ、京介さんはどうなんですか?」


「んー。ヒミツだな。」


「もーー!」


明日のパーティのために仕立て屋に来た。


「急がせて悪いが、明日の朝イチに仕上げてほしい」


と、康太に似合う既成品を手直ししてもらうようにお願いして店を出る。

次は、ブティックだ。


「若林様、お久しぶりです。あら今回も康太さんもご一緒なのね。

 さぁ今回はどなたの服を?」


相変わらず派手な店長が接客に出てきた。


「今回は2人分。特に康太のはバリエーションを増やしたいから協力してくれ」


「京介さん、僕の服は要らないですよ!」

「お前、毎日同じのを着てるじゃないか」

「3セットあるので十分なんです。」

「俺が嫌だ。10は持て!」


「そんなに要らないですよー」


またしても康太は着せ替え人形状態。そして何度やっても慣れないのかオロオロ……。

一方の京介は堂々と試着をしては購入していくのだった。


「じゃまた来るよ」

大量の服を購入して、車に乗り込む。


「康太、マルコ行くか?」

「そう言うと思ってこの服にしました」


 そういう流れになるかと思い、ブティックで購入した服のひとつに着替えておいた。

 マルコに着き店に入って行くのだが、あの時と違うのは、京介は堂々と康太の手を握り一緒に入っていく。


「料理はお任せでいいか?」

「……はい。でもそれは高いのでは?」

「金のことを言うなって!シェフのおまかせ2人分」

「かしこまりました」


 2人で食事を楽しむ。

 あの時は暗い悲しい話で、2人とも切ない顔をして食べたのだが、今回はいい笑顔で最後まで食事を楽しむことができた。


 何もかもがあの時とは違う、幸せいっぱいな2人のお出かけなのでした。


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