第4話:選択

「ネラさん、お久しぶりです」


「久しぶり! 魔女様!」


「ビアンカさん……何しに来たのですか?」


「あなたの様子を見に。これ、お土産のアップルパイ。あ、安心して。毒が入ってない普通のリンゴを使いましたから。ナイフ、お借りしますわね」


 そういうとビアンカは台所へ行き、ナイフでアップルパイを切り分けて皿に分け、ネラの前で一口食べて見せました。


「ん。美味しい。流石アラン」


「お姉様、あたしにも一口」


「自分で食べなさい」


「ぶー……」


「……この子は何しに来たの?」


「お姉様に頼まれて、付き添いー」


 ネラは足をパタパタさせるジャラとビアンカを交互に見て、ビアンカに訪ねました。


「ビアンカさん、この子も貴女の恋人なの?」


「ええ。そうです。ジャラといいます。あぁ、ご心配なく。彼女はこう見えて成人してますから」


「今年で二十一歳になりまーす。まだ二十歳でーす」


 アップルパイを頬張りながらVサインをして見せるジャラ。その笑顔はとても二十歳には見えないあどけないものでした。


「ふふ。可愛い子でしょう?」


 ビアンカがジャラの頭を撫でると、彼女はフォークを咥えたまま、少し恥ずかしそうに笑いました。恋人というよりは、姉妹のような雰囲気です。


「……ジャラさんは……ビアンカさんの恋人が自分以外にも居ることが嫌ではないのですか?」


「嫉妬はするよ。けど、みんな仲良しだよ。ビアンカお姉様があたし達のこと平等に愛してくれているのは伝わるし、みんな良い人だし。毎日賑やかで楽しいよ。だからさ、魔女様もおいでよ」


「わたくしは……」


「うちに来たら毎日美味しいご飯食べられるよ! ね、お姉様!」


「ジャラ。無理強いはしちゃ駄目よ」


「あ、そうだった。魔女様の気持ちが大事だよね。ごめんなさい」


「……」


 ネラはアップルパイ一口口に運び、考えます。

 このまま一人で生きていくのか、それとも、ビアンカ達と暮らすのか。


「……あの、恋人になるということは……その……キ、キスとか……したい……ということですよね……」


「あなたがいいと言うなら」


「す、素直ですわね……」


「嘘をついたって仕方ないですもの。けど、もちろん、無理強いはしませんわ。嫌がる女性に無理矢理性行為を強要する趣味はありませんのでご安心を」


「……」


「今すぐに決めなくても大丈夫ですよ。もしその気になったら、いつでもうちにいらして。恋人達には全員、合意を得ていますから」


 アップルパイを食べ終えると、ビアンカはネラに頭を下げてジャラを連れて帰って行きました。


「わたくしは……」


 ネラは一晩考えましたが、その日のうちに答えを出すことはできませんでした。

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