サッカー

第5話 サッカー①

一週間後


幸いこの前の件では怪我人は出なかったそうだ。

場所が田舎だったから良かったようなものの、あの規模の破壊はまずいだろう。

規模的には核と同じか、それ以上だと思う。

あれから警察や自衛隊、行政の人間まできて、大変なことになった。

とりあえず、この件は内密にしなければならないらしい。

そりゃそうだろう。

マジリンが兵器並みだとわかれば、国際問題にも発展しかねない。

なんか、やばいことになってきたな。


その割には、大したニュースにはなってない。

やたらと話を聞かれるかと思ったが、それもない。

上層部だけがいろいろ話してるようだったが……

まぁ下っ端の新入社員には降りてこない話らしい。


で、今は都内の中学校に来ている。

マジリンの回収だ。

この一週間でかなりの通報があった。

ほとんどのケースでは、通報があっても警察と一緒に話せば、マジリンを返してくれる。

ところが、使い手が中二病。

なかなか返してくれないケースもあるわけで、そんな場所をリュウトと一緒にひたすら回っているわけだ。


「貴様、宿題を出すなら粛清するぞ!!」

やや太めの学生が教師を脅している。

指にはマジリンが光っている。


マジホの判定はD

これは危険だ。


ここ一週間でだいたいの危険度がわかってきた。

マジホのE判定は、プロ格闘家が素手で戦うくらい。

今回はその上のD判定。

大人が重火器を使ったくらい危険だ。

すぐに止めに入ろう。


「はいはーい。そこまでですよ」

「なんだ?貴様は?粛清されたいのか?」


この小太り学生はえらく強気だ。

周りの学生や先生もビクビクしている。

これはお仕置きが必要だな。


「私、NANDAIのものです。マジリンの回収にうかがいました」

「バカが!これは俺の力を増幅するもの!下民には使いこなせんわ!」


小太り学生は、得意げだ。

マジリンを使っていくうちに、変な自信がついてしまったんだろう。

これは言っても無駄なパターンだ。


「ぁ、リュウト、やっちゃって」

「ふむ、わかりました、兄上」


リュウトが、ゆっくりと小太りの学生へ近づいていく。


「そこの子豚よ、力を見てやろう。全力で僕に攻撃してくるがいい」

「ぁ?」


小太りの学生の顔色が、怒りにみちていく。


「こ、子豚だと!! 粛清だ!」


ざわざわと教室がどよめく。

やばいこと言っちゃった、みたいな雰囲気だ。


「後悔しても遅いぞ!くらえ!インフェルノファイアー!」


バスケットボールくらいの火の玉が、ぐるぐると回転しながらリュウトめがけて飛んでいく。


「キャァァー!」

教室が騒然とする。

教師も生徒も全員ドン引きだ。


が、火の玉はリュウトの顔の目の前でシュッ!と音を立てて消える。


「……今、なにかしたか?」


うん、火の玉が目の前まで来てただろ。

何したかはわかるよね?


「ちょ……」

「貴様には過ぎたものだな」


リュウトはそういうと、親指でマジリンをピンッとはじく。

彼の指についていたものだ。

もうこれで4度目なのだが、どうやっているかはわからない。

どいつもこいつも、攻撃したあとマジリンはリュウトが持っている。


「いつの間に!」

学生がおどおどしている。

マジリンがなくなったら、ただの中二病だからな。

このあと大変だろう。


「では、マジリンは回収させてもらったので、我々はこれにて失礼しまーす。

先生、あとはお説教お願いしますね」


教室の学生がみんなポカンとしている。

正気に戻ったら面倒なので、さっさとリュウトと次の場所へ向かう。


こんな感じでどんどんマジリンを回収している。

会社の指示では、使えそうであればスカウトもしてほしいとのことだ。

けど、今の所無理。

こっちの指示に従ってくれる中二病なんて、レアケースだろう。


テロロッ♪ テットッ♪ テットテット♪ テッテテテ♪

テロロッ♪ テットッ♪ テットテット♪ テッテテテ♪


ん?

会社からの着信だ。

なんだろう。


「はい、こちら高島です」

「お疲れ様です。オペレーターの城島です」


城島さん?

きれいな女性の声。

知らないな。

うちの会社オペレーターなんていたっけ?


「今回の件でオペレーターとなりました。よろしくお願いします」

「なるほど、新しい人事ですね。よろしくお願いします」


「現在全国各地でマジリンが暴走しています。

マジリンの反応が大きい場合、こちらのマップで位置を確認できるようになりました」


マジかよ。

相変わらずうちの会社は対応が早いな。


「早速ですが、付近に大きな反応があります。

今すぐに現場に向かうことは可能でしょうか」

「はい、可能です」


「では、マジホにマップを追加しておきます。現場へ向かってください」

「承知しました。今すぐに現場へ向かいます」


「これまでの反応よりも、大きなものとなっております。

ご自身と、付近の住民の安全を最優先し、危険を察知しましたら、避難行動をしてくだい」

「承知しました。ご忠告ありがとうございます」


すぐにマジホを確認する。

マップを開く。


受信中……


受信中……


ピロリン!


マップに赤い点が表示される。

ここは、陸上競技場かな?

ここへ向かえってことだな。


しかし、スポーツ施設に中二病が?

なんだろう、イメージ的にはスポーツと中二病ってあんまり近くない気がするんだよな。

まぁ行ってみよう。


「リュウト、次に向かおう。

でかい反応があるらしい。

これまでのザコとは違うぞ」

「わかりました。兄上」


でかい反応と聞いて若干嬉しそうだ。

まぁ、リュウトを苦戦させるような相手がポンポンと出てこられても困るわけだが。

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中二病を悪化させるお仕事 橋下悟 @satoru-hashimoto

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