ザナドゥ

 しかし、ヨシムの予想に反して、異邦のモノたちは信じられないほど親切だった。


 寝床を含む住処は今までヨシムが生きてきた中で最高といっても言葉が足りないくらい快適なもので、食事も定期的に提供され、それもまたヨシムが今まで食べたことのないほど美味しいものばかりであった。最初は警戒して食事すら取らなかったヨシムも、どうやら悪意があるわけではないことを察すると、少しずつこの生活にも慣れていった。



 住めば都とはよく言ったものだが、狩りをせずとも食事をとることができるというのは、狩りが嫌いなヨシムにとっては本当にありがたかった。


『過ぎたことは仕方がない』


 ヨシムはあの日の族長の言葉を思い出していた。


 一族のみなと離れ離れになってしまったのは本当に悲しいことではあったが、それはもうどうしようもないことだ。ヨシムはここでの生活を受け入れると心に決めた。生きていればきっと良いこともあるだろう。


 しかし、あの破壊行為や殺戮行為をしてきた異邦のモノたちが、自分に対してここまで親切にする理由だけはどうしても分からなかった。



 ヨシムはそのままそこで生涯を終えた。


(決して悪い生き様でもなかった)


 ヨシムは最後に一族のみなとの暮らしを思い出しながら息を引き取った。



 ところで、ヨシムが最後に暮らしていた環境のことを異邦のモノたちの言葉ではこういうらしい。




『動物園』

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ザナドゥ 戸画美角 @togabikaku

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