第35話 ユナとの再会

 これは一体どういうこと? 


(私の知らぬ間にホモ・ファージの攻撃が始まっている?しかも私をターゲットにしている?とにかくユナに話しかけるのはナギの話が終わったあとにしよう)


「ナギ、話の続きを……」


「はい。そのあとのぞみさんは病院から自宅へ帰りました。夜に日記を書いたあとは薬を飲んで眠りにつきました。翌朝、なぜだか希さんと意識共有できなくなり、母親との会話で二人の世界に齟齬そごがあることを知りました。そしてすぐに部屋に戻り机の上にあった日記を開きました。希さんの意識が戻った時のために記憶にある齟齬の数と攻撃を受けていることを書き残しました。私はそのあと〈弥終いやはてやしろ〉に戻ってきましたが、軽い"記憶暴発"を起こしてしまいました。結局、希さんの意識が戻ったかはわからないままです。ここまでが私が演習で体験したことです」


(ナギのいた世界で私は意識不明になっている?このまま意識が戻らなかったらどうなるのだろう? 生きるしかばねとなってしまうのか? それとも本当に死んでしまうのだろうか? もしこれがホモ・ファージの攻撃によるものなら、ユナの言ったように私の世界にも影響が及ぶことになる。このまま放ってはおけない)


「これはかなり深刻な状況ですね。その世界の希さんにはとても辛いことです。しかし、わたくしたちでは助けることもできないでしょう。干渉するのはとても危険です。ホモ・ファージに私たちの存在が見つかればこの世界の改変も難しくなります。とにかく事情はよくわかりました。ナギ、貴女はこの短い期間で大きく成長しましたね。うれしく思います。今日は貴女も疲れているでしょう。この話はここまでにしましょう」


「はい、ユナ様。それでは、私はこれで失礼します。おやすみなさい」


「おやすみなさい、ナギ」

 

 ナギが静かに離れを去っていくと、希はユナの部屋へ近づいた。

 


〝ユナさん、私です。神劔みつるぎのぞみです〟

 

 希は隠していた気配を解いて、ユナの意識にメッセージを送った。


〝希さんですね。少しだけ気配を感じていました。先程のナギとの話を聞いていたのなら話が早いのですが。まずはお部屋の中へどうぞ。ゆっくりお話しましょう〟


〝失礼します〟

 

(やはり私の存在に気づいていたか)

 

 希はそう思いながら部屋の中へ入った。

 ユナは戸を閉めると、部屋の中央で正座をした。

 灯籠とうろうの灯りが静かに揺れている。


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