第12話 ナギの演習
「戻りましたか、ナギ」
「はい。私はミツルギノゾミという名の大人の女性になっていました。その女性はほとんど自分の意思で異世界を行き来できていました」
「そこはどのような世界でしたか?」
「遠い未来、いえ遠い過去かも知れません。私の知るどんな文明とも異なっていました。鉄の車が道を走り、鉄の船が空を飛んでいたり、ですが霊理力を感じることはありませんでした」
「霊理力の無い世界……。 貴女はそこで力を使えたのですか?」
「いいえ、私の自我は完全にノゾミに上書きされていて、私が目覚める時までずっとノゾミの記憶の共有だけでした」
巫女装束の女官が
「ナギ、どんなに小さくても自我を維持にするように。そして次は
「はい、ミコト先生」
「ではナギ、二週間後にもう一度演習を行います」
こうしてその日の演習が終わり、最終候補者たちは宿舎に戻った。
ナギは今日と明日はゆっくりと静養することが求められている。
演習の日はみんな精神的に
ナギのように自我を失うと、自分が何者かを思い出すだけで長い時間がかることもある。中には“記憶暴発”をおこしたり、本来の自我を取り戻せなくなる人もいる。
「セツナお姉ちゃんのほうははどんな演習だったの?」
「私は智の宮殿で呪術遣いと意識共有してきたわ」
「智の宮殿?」
「先史時代の太古の遺跡だと思う。迷宮のように入り組んでいて、私が降り立った場所が精神世界の最深部だったから、いきなり目標達成できたの」
「すごい!」
「お姉ちゃんは異世界でもお姉ちゃんのままなの?」
「うん、そうよ。呪術遣いのイストリカルさんはとても強くて、私は全然出る幕もなくて。それよりミツルギノゾミさんはどんなヒトだったの?」
「……? ミツルギノゾミ?」
「ナギ、大丈夫? まだ錯綜してる?」
**** * * * * *
〝希さん! 希さん!〟
間近で誰かの声が聞こえる。
ノゾミ?いや、私はノゾミじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます