第14話


 空は誰とも連絡も取れない上に、朦朧としながらここまできていたため、迷子となっていた。


「くしゅんっ」


 少女はくしゃみをして体を震わす。

辺りはとうの昔に暗くなり、冷え込んでいた。


「寒いよな。すまん」


「い、いえ、貴方が謝る事ではありませんので」


 空は少しでも風の当たらない休憩できる場所を探すが、都心近くなためその様な場所が早々に見つかるはずもない。


 かといって、この状態で何処かの店に入るのも迷惑になるだろう。


 その現状が空の焦りを後押しする。


「■■■、■■■■■■■■■■■」


 少女は、そう呟くと、


 少女の手から、花火のようにも見える光が晴天の空に舞い、二人に降りかかった。


 空の目は、その光を捉えて離さなかった。


 突然の異常現象ということもあったが

ゆらゆらとアテのない場所を歩くような赤い光

そんな情けなく思えるその光は空達のことを暖める


 その暖かさは、ぬるく、とても心地がよかった

 

 かつて、空が欲しがっていた物の暖かさのようにも思えて、目頭までもを暖めた。


「魔力が何故か無くなっていて、回復するまでに時間を要しました。ですが、これでもう大丈夫ですね」


「はっ」


 空は我に帰った上で、固まっていた。

我に帰ったはいいものの、目の前に起きた出来事が理解できず、混乱する。


 花火 ホログラム 手品 等ヶ


 空はいろいろな物を思い描くが、その少女は先程まで海に浸かっていたため。

 

 この暖かさと服の乾きの理由は明かせなかった。


「魔法ですよ。初めて見ましたか?」


 その返答が更に疑問を深めるが、空は一度深呼吸をして心を落ち着かせる。


「まずは、自己紹介からしていきましょうか。俺は、白柳 空です。よろしくお願いします」


 少女は、スカートを少しでもたくし上げて、御手本のように丁寧な西欧貴族風のお辞儀をした。


「これはご丁寧に。私はアイ=バラン=イマ=ハプスブルクです。」


「うん。どれで呼べばいいの?」


「アイでいいですよ」


 空は落ち着きを取り戻してきたところで、真っ暗な砂浜を眺めて、決心する。


「交番行くか」


 空は思考を放棄した。

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