第七章 ③

『四月八日

 今日から、陽星高校に通うことになった。成績的にはぎりぎりだったけど、これから頑張れば問題ないよね! 友達もいっぱい作っていきたいなぁ』


 日記を構成する文字は丸みがあり、まさに女の子だなと感じるようなものだった。

 日付から察するに、この日記は、蘭ちゃんが陽星に入学した時から書いているものらしい。そしてこの頃は、ページいっぱいに書いていたわけではなかったみたいだ。少しの間、人様の日記読み耽る。

 すると数十秒後、気になるページを見つけると、それまでよりもペースを落として、深く読む。


『四月十三日

 今日は四時間だけの授業で、昼からは部活の紹介を見せてもらった。

 この学校にはいろいろな部活があるんだなと、冊子を見て思った』


 確かに、うちの学校は部活動の数が多いもんなぁ。正確には覚えてないけど、優に百は越してたんじゃなかったかな。

 .........それにしても、なんで蘭ちゃんはその中のトリカブト研究会に入ったんだろうか。名前だけで行くと、仲間内の部活の中でもトップクラスで入りたくないような部活だと思うんだけど。

 私はそんなことを疑問に思いながらも、先を読んでいく。


『......それで、その冊子を見てると、あの人の名前を見つけたの! まさかこんなところで会えるとは思わなかったなぁ......。けど、トリカブト研究会って、何をするところなんだろう。名前だけ聞くとちょっと怖いな(笑)』


 すると、ごくごく自然にうちの部活の名前が出てきた。まあ、最終的には蘭ちゃんはうちの部活に入ってるからおかしなことではないんだけど、それよりも、気になる部分があった。

 『あの人の名前を見つけた』という言葉がとても引っかかる。

 いや、引っかかるとは言ってもうちには部員が二人しかいなかったし、私は蘭ちゃんと面識がなかったから、そうなると残るは詩遠の知り合いという線しか残されていない......が、それに関しては昔詩遠も否定していた気がする。

 うーん、少し気になるけど、とりあえず置いておこう。

 それから数十分間、さらに読み進めていく。


『四月十八日

 結局、トリカブト研究会に入部することとなった。部員である環先輩と金村先輩は、とても歓迎してくれた。でも、後々聞くとここは仲間内で作られた部活だったそうで。.........っていうことは、やっぱり環先輩と金村先輩はそういう関係なのかな。.......入ったら、迷惑だったのかな?』


 そんなことないよ、と私は心の中で唱える。まあ、入部後の私たちの態度を見たら迷惑かどうかなんてすぐわかっただろうけどね。

 そして、読み続けること小一時間が経過し、もう日記帳も二冊目になってから少し経ったその時、とあるページに私は到達した。

 そのページは、いつもの可愛らしい字は似ても似つかない、震えて崩れに崩れた文字でつづられていた。

 私は、日付を確認する。............あぁ、なるほど。

 私は思わず気分が沈む。でも、文字を目で追うのはやめなかった。

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