リフレクト2②

パチ、パチと、窓を伝う雨粒のように、ぎこちなく落ちていく日向の両腕。こんな日に限って、街の人通りは少なかった。

「……前の話し合いを思い出してみたんだ。『under the highway』が売れるためには、SNSも積極的に活用していくこと。その一環として、話題になりやすいキャッチーな曲を作ること。例えば耳に残るメロディを繰り返したり、皆が共感できる歌詞にしたり。彼女ならそれができると思った。だからお願いした」

「つまり、俺の歌詞じゃダメだったってことか」

 そう吐き捨てたのは、銀次だった。

「音楽の才能がないことぐらい、誰よりも俺が、骨の髄まで分かってんだよ。いい歌詞を用意できていないことも、売れないっていう現実がちゃんと証明してくれてる。なのに、いつも味方でいてくれた親友にまで、遠回しに責められなきゃいけぇねのかよ……!」

「違う、断じてそんなつもりじゃない。俺はただ、いつも忙しそうなお前らを手伝いたくて――」

「だから相談もせずに、こちらで勝手に決めちゃいましたってか。ふざけんな! お前のどこに、独断でバンドをどうこうできる権利があるんだよ。それともなんだ、相談もできないぐらい俺らのこと信用してねぇってのか? ああっ!?」

 胸ぐらをつかみかかる銀次。慌てて律が静止に入る。

「落ち着け銀次。確かに、日向一人で断りもなくバンドのことを決めたのは、俺も良くなかったと思う。けど才能のない俺らだからこそ、がむしゃらに挑戦し続けなきゃならないもの事実だ」

 律が日向に向き直る。

「俺は乗るよ。別に悪気があったわけじゃないんだろ」

 すると日向は、詰めていた息をほっと吐き、優しく感謝の意を述べた。しかし、視線はすぐに地へと滑り落ち、唇は忙しく言葉を探す。

「……後先考えず勝手なことをして、銀次に屈辱的な思いをさせてしまったことは真摯に謝る。言い訳じゃないけど、俺はまだ、彼女に話を持ちかけただけだからさ。みんなの同意を得られなければ、今からだって白紙に戻せるし、そうしなきゃいけないんだとは思ってる。けど……いや、だから銀次が反対するなら、俺は――」

 結局口を閉ざしてしまう日向。唇を揺することは、もうなかった。

「あのっ」

 渚が、裏返った声を震わせる。言い出すなら今しかないと思った。

「私、もう帰ります。帰った方が、いいです、よね……?」

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