第30話【出会い系アプリ】

どうもこうも、家のない僕は住み込みで働くしかなかった。

気力を失っていた僕は自分が生活できる程度しか働かなくなった。


「そういえば千秋と別れてもう3年以上が経つのか。早いな~」

あれから1度も彼女はできていない。

魅力的な女性や、大人の関係になった人はいた。

それでも千秋の事を思い出すと、どうしても次の恋愛に踏み切られないでいた。


昔「男は引きずるけど、女の切り替えは早いよ~」と職場のおばちゃんに言われたのを思い出した。

さすがにそろそろ4年か。長いな。今でも夢に出てくる。それくらい大切な人だった。あの時の僕がちゃんとしていれば、また違った人生だったのかもしれない。


僕は気晴らしに流行りの【出会い系アプリ】を始めてみた。

それで驚いたのが、男は有料で女性は無料という事だ。

それも100円や500円の話じゃなく、数千円単位だった。

長く契約するほど月換算が安くなるシステムだ。


僕が契約したのは、3か月お試しキャンペーンで無料だったからだ。

正直、今までガラケー時代からあった出会い系では無料で会えたので、スマホアプリの出会い系はかなり高いと思った。


こうゆうときに思うのが、僕の知っている映画館やカラオケ屋さんにはレディースデーがあるのに【メンズデー】はないのかな?と昔から思っていた。

全国あちらこちら行くが見たことがない。


アプリを使ってみると思っていたよりも良かった。

昔より写真も鮮明だし、登録者も多い!

色々な女性と連絡が取れるし、実際に会えたことも何回もあった。

だが、結局恋愛にはならなかった。


そんなある日今までとは違う女性と連絡を取ることになった。

文章の返し方や、絵文字の使い方がとても好印象だった。

そして、仕事が終わっては電話をするようになった。


次第に電話だけでは物足りず会いたくなってきた。

だが、僕は良い格好をしようとして自分のこれまでの話を一切していなかった。


「このまま会ってもいつかはバレる。ちゃんと話してダメならそこで諦めよう。」


まず、家がない理由を最初からその時に至るまでを話した。

彼女は驚いてはいたが、ダメな雰囲気ではなかった。


そこで僕は思い切ってこう言った。

「いまの仕事の契約が終わったら、由紀ちゃんの家に泊めてくれない!?2週間でいいから!お願い!」と。


すると二つ返事で「良いよ!」だった。


「よっしゃー」と声には出さなかったが心で思っていた。

と同時に軽すぎてめちゃくちゃ男慣れしてるのかな?と思った。


この時の『よっしゃー』は由紀ちゃんの家に行けるからより、少しでも寮生活から抜け出せる!!の方が勝っていたかもしれない。


そして、契約期間が終え由紀ちゃんの元へ向かった。







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