再会・起業編

第12話【再会】

20歳になった僕はずっと胸に秘めていたことを実行した。

それは実の父に会いに行くことだった。


あれから父がどこで何をしているかなど、連絡先も分からなかった。


ところが偶然の出来事が僕と父を引き寄せた。


それは高校生の時に戻る。

試合をする為に行った相手の高校付近に着いた時だった。

周りを見渡すと頭の中を思い出が一気に駆け巡った。


『この場所絶対に来たことがある。』


それは父方の祖母の家の近くだった。

そう感じたのは、ある公園の滑り台を見たからだ。

特殊な段々畑のような形の滑り台で、ずっと遊んでいた記憶がよみがえってきた。


それから学校や部活が休みの時に何度か訪れて祖母の家を探した。

そして、ようやく見つけた。

そこはクワガタが玄関前に飛んでくるほどの山の中で、子どもの頃に見た時より小さく見えた。

けれど、その時はインターホンを鳴らす勇気がなかった。


それから数年して20歳になり、ようやく決心がついた。

『大人になった自分を見てもらおう』


家の前に付きインターホンを鳴らした。


『はい』


『僕だけど覚えていますか?』


返事がない。。。

インターホンが切れる音もない。

カメラ付きのインターホンだったので祖母からは僕が見えるはずだった。


すると突然玄関の扉が『ガシャン!』と開き、家のスリッパを履いた祖母が全速力で走ってきた。


僕は思いっきり抱きしめられた。

祖母は大泣きしていた。

僕ももらい泣きした。


『大きくなったねぇ。顔をみればすぐに分かったわよ。』


祖母は家にあげてくれた。

そして、大好きだった手料理も振舞ってくれた。

とても美味しかった。


すると祖母がタンスの中からアルバムや、画用紙を出してきた。

アルバムには前の家にいた時の写真が全て残っていた。

父が処分せずに実家に移していたらしい。

とっても懐かしかった。


画用紙にはお絵描きがしてあった。

メガネやウサギを描いて祖父に採点してもらっていた。

この採点方式のお絵描きが僕は大好きだったのを思い出した。


あっという間に辺りは暗くなっていた。


『次に来るときは前もって連絡ちょうだい。お父さんも呼ぶから。』


『分かった。また来るね。今日はありがとう。』


そう言って祖母の家を後にした。













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