#ファンの話【1話完結!スーパー短編】



「こんばんは、クリス米村です。


今日はなんだかハガキが多いな。みんな、ありがとう。


もちろんFAXでも受けつけてる。


どしどし送ってくれ。


今どきFAXなんて、珍しいだろ。


使い方のわからないリスナーも多いんじゃないかな。


オレもいまいちわからない。


だけど、よく考えてみてくれ。


もしメールやツイッターみたいに、簡単に送れるとしたら?


あとは言わなくてもわかるだろ。


毎週、ワールドレコードが出るだろうな。


アッハッハ。


言っとくけど、ツイッターを使わないのは、アンチの意見を聞きたくないからじゃないぜ。


オレはどんな意見でもウェルカムさ。


そりゃあ、たまには腹の立つこともあるけど。


だけど、なんていうのかな。


みんなのあこがれの存在ってことは、アンチもいる…つまりそういうこと。


ファンがいて、アンチがいて。


そういう環境に、すっかり慣れちまった。


世の中には、ほんといろんなヤツがいるよ。


オレがちょっとでもヘマをしたら、鬼の首をとったみたいにYouTubeに上げるヤツもいるし、24時間、オレの悪口をツイートしてるヤツもいる。


ラジオで普通の世間話をしてるだけなのに、変なふうにつなぎ合わせて、オレがイカれたことを言ってるように仕立てようとするヤツも発見した。


あの編集は大変だったろうな。


暇人もいいところだよ。


だけど100歩ゆずって、アンチがそうするのはわかるとしよう。


アンチはオレのことが嫌いだからな。


でもファンだって、ヤバいんだぜ。


歩いてるだけで、写真をカシャカシャ撮ってくる。


この前なんか、こっちが飯を食っててもおかまいなしにスマホを向けてきた。


それどころか、トイレにまでついてきて、サインをほしがるんだ。


女の子がだぜ。


金も人気も名誉も手に入れたんだから、しょうがないっていえば、そうかもしれないけど、やり過ぎだろ。


並みのスーパースターなら、頭がおかしくなっても不思議じゃない。


それどころか、いつファンに殺されてもおかしくない状況だ。


実際、身の危険を感じたことも、一度や二度じゃないんだ。


だけど、オレはああいうイカれたファンやアンチを、まとめて全部、許すことにしてる。


一番大事なのは、ファンとアンチが仲良くすること。


ファンはオレへの愛情が大きすぎるから、ああいうふうになるんだろうし、ある意味でそれはアンチも同じ。


どっちも、オレのラジオを聴きたがってる。


そんなヤツらが、仲良くなれないわけないだろ?


オレが思うに、アンチのヤツらっていうのは、素直じゃない子供みたいなものさ。


クリス米村さんにあこがれてます、って素直に言えばいいのに、そうできない。


きっと、誰かにあこがれてる自分を認めたくないんだろうな。


まして相手はマンガや映画のヒーローじゃなく、自分たちと同じ、生きてる人間だもの。


くやしいに決まってる。


おまえらのそういう反発する気持ち、悪くないぜ。


ああ、言っとくけど、誰にあこがれるっていう感情は、オレにはわからないよ。


そんなのわかるわけない。


誰かにあこがれる、なんてことはオレの人生にありえないから。


とにかく、オレはアンチに対してこう思うんだ。


オレのファンのいるところで正直に伝えてみろ、って。


自分もあなた方と同じように、クリス米村さんにあこがれてます、って。


できるだけ大声でな。


それを聞いたファンは、きっと喜ぶはずだ。


だって、家族が増えたみたいなもんなんだから。


久しぶりにいいこと言った。


久しぶりでもないか。


いつも言ってる。


じゃ曲へ行こう。


オープニングからアンチのムカつく話をしたから、明るいのがいい。


これを聴くと、なぜかVIPルームでパーティしてる気分になるんだ。


不思議だよな。


いくぜ。


今夜の一発目はこれ!


『VIPでパーティ』」



  ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

教訓👉そのままじゃん。笑





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ラジオ品川 99.92FM 

Navigator クリス米村

『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』

毎週木曜23:30〜恋人たちが眠るまで

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