三景

三景


机の下に潜っているカムパネルラ


カムパネルラ 僕を潰さないでくれ。これ以上の圧力はたくさんだ。もう充分苦しんだ。これからは楽園で暮らしたい。地獄はもう懲り懲りだ。頭が回らない。動かない。


ザネリやってくる

リンドウの花を机の上に飾る

ザネリ椅子に座る


ザネリ 本当の幸いは胸の中にある。私たちは星空を眺めて、胸中を語る。苦しくても何もなくとも私は幸いだと思う。だからこの目を閉じないで生きている。二人と出逢わないこの世界で色々な存在と関係を結んで生きている。カムパネルラ。強く生きてください。貴方は星。響く鐘。私のところまで貴方の輝きを届けてね。ジョパンニ。貴方は石。一見何も冴えてなさそうだけど、本当は一番美しい。自分の美しさを否定しないでね。これは独り言。


電車の汽笛


ザネリ 銀河鉄道がやってくる。今度の客は誰。私の親友? それとも。


マミミがやってくる


ザネリ あら。可愛いお嬢さん。


マミミ、会釈する

マミミ、周りを見渡す


ザネリ 誰を探しているの。

マミミ カムパネルラ。

ザネリ お知り合い?

マミミ 逢ったことはないけど、よくしっている。

ザネリ それは一体どういうこと。

マミミ 本で読んで知っている。

ザネリ よくわからないことお話しなされるわね。

マミミ カムパネルラさん知っていますか。

ザネリ 私はザネリ。貴方は。

マミミ マミミ。

ザネリ カムパネルラの行方はわからない。

マミミ うそ。知っているはず。

ザネリ 決めつけが激しいわね。知りません。

マミミ じゃあ、何処にいるの。

ザネリ 知っているなら私も逢ってるわ。

マミミ 貴方も探してるの。

ザネリ ザネリよ。

マミミ ザネリさん。

ザネリ そう。ザネリ。

マミミ 何処かで聴いたことがあるような。

ザネリ 気のせいでしょ。私もよ。

マミミ ジョパンニさんの為ですか。

ザネリ ジョパンニのことも知ってるの。

マミミ えらく気が知れたように話しますね。

ザネリ 幼なじみですから。

マミミ あの人が今どうなっているのか知っているんですか。

ザネリ どうなってるの。

マミミ 自分で自分を苦しめて、どうしようもなくなってますよ。幼なじみなら助けてやったらどうですか。

ザネリ それはできない。

マミミ なぜ。

ザネリ 私と彼は別の人間だから。

マミミ 別の人間だからこそ助けるんでしょ。

ザネリ かも。でも私はそれを選ばないわ。

マミミ 残酷。大人ってみんな乾いてるんですか。

ザネリ そう思ってもらっても構わない。

マミミ 貴方と話すの時間の無駄ですね。私はカムパネルラさんを探すので。ザネリさん、さようなら。お元気で。

ザネリ ごきげんよう。マミミさん。


マミミ退場


ザネリ ジョパンニ。


暗転

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