同衾戦争編

13 同衾戦争 始

 妹のとある事件を無事解決したことで、俺はいつも通りの日々を送っていた。


 学校では唯一の友達と雑談をして、それから一人寂しく家へと帰る。


 そして……妹とイチャつくッッッ!


 ……厳密に言えばですね? 向こうからイチャついて来るわけですよ。それを偉大なるこの兄貴が冷たく接する訳にはいかないのです。だからイチャつくんです。イチャついてしまうのです。


 ……そんな楽しい日々を送っている俺にも悩みがあります。


 それはフリーダイヤルのお悩み相談室やカウンセラーの人にも打ち明けられないほど恥ずかしいことです……。いや一歩間違えれば、相談しているのに、その自分が犯罪者とされてしまう可能性があるのです。


 それは紛れもなく我が愛する妹、沙恵に関することです。





「お前なぁ、夜中に俺の布団に潜り込んでくるのやめてくれよ……」


「良いじゃん! お兄ちゃんも本当は嬉しいんでしょ? 私もお兄ちゃんと寝たいの。だから、うぃんうぃんの関係? ってやつでしょ」


「……お前は一旦黙ってくれ……」


「もう、なんで!! 私と寝るのがそんなに嫌なの?」


「起きたら突然同じ布団に妹がいるんだぞ? 色んな意味で恐怖なんだよ!」


「意味わかんない…………」


 沙恵が由香と仲直りしてからのこと、毎朝目覚めると隣に沙恵がいる。それもかなり無防備な状態でだ。


 俺はその度に恐怖した。

 ドキドキして赤面している暇なんかない。

 妹に手を出してしまったのかと毎朝怯えるのは懲り懲りである。


 第一、その光景を親に見られたらなんと答弁すればいいのだ。


 こういう状況の時、真っ先に疑いの目が向けられるのは男。つまり俺の方である。


 だから沙恵にはやめてほしいのだ。

 他の場面でイチャついてくるなら全然構わないのだが、ベッドだけは勘弁してくれ。


 俺は何回も沙恵に頼んだ。だが返ってくる言葉は「お兄ちゃんも嬉しいんでしょ?」一筋である。


 どうやら沙恵は、俺が超絶ツンデレキャラだと勘違いしているらしい……全然違うよ!



 ……注意しても聞かないのであれば、布団に入ってこないように自分が対策すればいい話なのだ。


 俺は寝たフリをして、少しばかり布団の中で待機しておくことにした。

 布団に入り込もうとする瞬間に注意すれば諦めるだろう、と考えたのだ。


 そして万が一家族に見つかったとしても、沙恵が俺の布団に入り込もうとする構図なので疑われることはない。

 我ながらナイスアイデアである。



 時刻は十二時ちょうど。

 夜闇が支配する部屋の中にて。


 安心安全健全な目覚めを勝ち取るための戦いが、幕を開けた。

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