101号室
私のマンションには変な人が住んでる。
朝私と同じ時間に学校へ向かい、放課後も私と同じ時間に学校を出て、自転車なのに私が帰る道を何度も往復してる。
その人と話をしたことは無い。仲良くもない。
「おはよ」
『…おはよう』
気持ち悪い。
私が最初に思ったこと。
授業中も、部活中も家に帰る時も、ずっと見てる。その視線が気持ち悪い。
これも7月までの辛抱だ。
進学先を理由に私はここを出る。
夜9時頃。
幼なじみの尚と一緒に大会前の練習。
マンションの前の広場に出てラリーを続ける。
「見てる」
『知ってる』
マンションのベランダからは広場が目の前に見える。1階の1番端のベランダの洗濯物の間からいつもこっちを見てる。
クラスメイトから私のことが好きだと聞いた。
でも中学生になったばかりの私には恋愛はまだ分からない。
どうせ引っ越して遠くに行くし、興味もない。
「テニス続ける?」
『それはない』
「やっぱ体しんどいか」
『うん、今無理しなくてもいいかなーって』
「連絡待ってる」
『うん』
小学校時代、尚の試合がみたくて同じ野球のクラブに入ってた。
でも汗が出ない体質で、体温の調節が出来ないからすぐに熱中症になる。
だから試合に出られるのは少しの間だけ、それ以外は外から応援するだけ。
お医者さんからも運動はオススメされてない。でもテニス部は野球部の隣で、尚のことを見られるから入った。
『明日も朝練だし帰ろ』
「わかった」
30分したら帰る。
だけど広場に鍵を忘れた。
『鍵忘れた』
「おやすみ」
『また明日』
エレベーターで1階までおりて、広場に鍵を取りに行った。心拍が上がって、呼吸が苦しいから歩いてエレベーターまで向かう。
「乗る?」
『大丈夫』
なんでいるんだろう。気持ち悪い。
さっきまでベランダにいたのに。
私は、階段で3階の自宅まで走った。
恋の短編集 山崎藍 @AI_IRO_
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