[4-6]退魔師の謝罪
冷たくなっていた手のひらがあたたかくなっていく。いつの間にか震えまで止まっていた。
さっきまで早鐘のようだった心臓も今は穏やかに動いている。
アルバくんって不思議。ただ一緒にいるだけでホッとするんだもん。
バス停に着く頃にはだいぶ落ち着いて自分のことを見ることができるようになっていた。
いつものようにバス停には先客がいた。でも今日は制服姿の男の子が二人いる。
黒髪の子が
あわわ、すっかり忘れてた。わたし今、アルバくんにお姫様抱っこされてたんだった!
「アルバくん、おろして!」
顔が一気に熱くなっていく。アルバくんにはともかく、幼なじみとクラスメイトの目の前で抱き上げられてるのは恥ずかしすぎる。
「もう大丈夫なのか?」
「大丈夫っ! 歩けるもん」
アルバくんはすぐにおろしてくれた。
大丈夫、もう足は震えてない。自分の足で立ったあと、リュックをアルバくんから受け取る。
その間ずっと顔が熱くて仕方なかった。なのに、なぜかアルバくんの顔までトマトみたいに赤くなっている。
なんでアルバくんまで恥ずかしそうにしてるの!?
「なにかあったの、アルバさん」
心配そうな顔をして
わたしとアルバくんの意味ありげな視線や動作には絶対に気付いているだろうに、
この距離感が友達として付き合いやすかったりする。
「ああ。ちょっと、色々とな。でももう大丈夫みたいだ」
「そうみたいだね」
ほうとため息をついて、
わたしも
「そういや
「九尾には
「ああっ、そういえばたぬきさん! よかった、無事だったのね」
あれから
でもどうして二人に学校まで来てもらう必要があるんだろう。
「昨日、夕方に
「そうだったんだ。
わたしってば、なんでもかんでも忘れすぎ。
そういえば
学校で会ったら謝らなくちゃ。
「ふふ、どういたしまして。あと音楽室も先生に言って貸してもらうことになってるから、ピアノも弾けるよ。アルバさんの浄化はもちろん、
ピアノの手配までしてくれてる。本来ならわたしが先生に頼まなくちゃいけないのに。
アルバくんの身体のこともあったし、今日にでもピアノは弾きたいと思っていた。
わたしの家にもピアノはあるけど、
「じゃあ、今日の放課後に音楽室で集合でいいのかな」
「うん、それでいいよ。あとね、
黒い瞳を
「
「いつまでも悪役のままでいたら、同じクラスの
あれ。ちょっと待って。
さっきから気になってたんだけど、
昨夜はお互いに苗字で呼んでたし、
たった一夜で名前を呼び合う仲になるなんて、何があったの?
「三重野、
瞳をさまよわせたあと、
「どんな事情があるとはいえ、狸やアルバを傷つけるべきではなかった。俺にはできることといえば力を振るうことくらいであまりないが、償いのためなら何でもする。……許してくれとは言わないが、もう二度と無害なあやかしを傷つけたりはしないと誓う」
「あ……うん。もうあんなことしないなら、いいんだけど」
獰猛な獣みたいな目で迫ってきた人とは思えないくらい、殊勝で真剣な謝罪だった。
見た目が派手だけど動作はとても丁寧で、話しかければ普通に言葉を返して会話ができる。
初めてクラスで会った時の
アルバくんや
もうわかり合えない、普通のクラスメイトの仲には戻れない。そう覚悟した時もあったのに。
一夜のうちに何があったの。
早すぎる展開に頭が追いつかなかった。
ゆっくりと頭を動かして
無言のサインに目ざとく気付いてくれたけど、
うん、全然わかんない。もう直接聞こう。
「
「夜通し二人で語り明かしただけだよ」
「
「そう、男二人で」
なに、その意味深な発言。怪しすぎるよ!?
何を話したの!? ううん、何があったの?
めちゃくちゃ気になるんだけど!!
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