[3-9]退魔師の本当の目的とは
食後に
赤褐色のお茶が湯飲みの中になみなみと注がれている。
ほのかに甘くて、あくの強そうな香りがするけど、これが飲んでみたら意外と爽やかな味だったりする。
結局
優しい反面、ごくたまに
「ごはんは口に合ったかな」
食事の時に引き続いて
「……珍しいものもあったけど、悪くはなかった」
「アルバさんみたいに、そこはおいしいって言って欲しかったなー」
それでもめげずに
「
「……別にフツーの白い味噌汁だけど」
引き気味に
「
その瞬間、
どこからか盛ってきた
そっか。さっきから妙に
「だから、お前は何者なんだよ」
「ただの魔女だよ?」
首を傾げて、
そう、いつも
だからと言って、ゲームの世界みたいに
笑顔で席を立ったと思ったら、
お皿をテーブルの上に並べたあと、九尾さんの前にはもう一枚油揚げを出して(まだ食べるんだ!)、もう一度
「そろそろ教えてくれないかな。
いつもの笑顔が消えて、
彼の意図が分かったからか、それとも
まるで覚悟を決めたように。
「……お前の言う通り、俺は京都のとある町に住んでいた。見ての通り半妖の退魔師だ。俺は妖怪を憎んでいる。根絶やしにしてやりたい気持ちには変わりないが、俺がこの町に来たのはある危険な妖怪を追ってきたためだ」
「危険な妖怪……?」
毛むくじゃらの妖怪と聞いてから、心のどこかで警鐘が鳴っているような気がしていた。
でもなにかの間違いだと思う。だって、あの妖怪は九尾さんが退けたんだもの。
「そいつは仲間にひどい怪我を負わせた。すでに何人も人間を手にかけている。退魔師が相手だろうと躊躇せずにのど元に噛みつこうとする討伐対象の妖怪だ」
「それは穏やかじゃないね。何ていうあやかしなんだい?」
あくまで
それが気に入らなかったのかもしれない。
けど、文句を言ったり悪態をつくことはなかった。
彼はわたしにもわかりやすく教えてくれた。
「常に黒雲に紛れて姿を隠し、悲鳴に似た声で鳴く得体の知れない怪物。――
――刹那。
雷のような衝撃がわたしの身体を貫いた。
「鵺、だって……?」
九尾さんの声が低くなる。機嫌良く揺れていた九本の尻尾はぴたりと止まり、次第に太く膨らんでいく。
いつもの微笑みが消え、きんいろの瞳が剣呑に細くなった。
ゆらりと九尾さんの白銀の髪が風もないのにあおられる。まるでその髪の一房がなにかの生き物のように――。
「九尾」
すると揺らめいていた白銀の髪も重力にしたがって下りていく。
ため息まじりにその動きを見守ったあと、
「ねえ、
「お前達、鵺を知っているのか!?」
初めて
「たしかに目は赤だ。だが、鵺はもともと得体のしれない妖怪で、実体を持たない。妖狐のように自分の姿を変える。その体色さえ自在に変化するんだ」
「ああ、だから君はアルバくんを勘違いして襲ったんだね。
「そうだ。俺の標的は鵺ただ一匹だった。
「うん、そうだね。君とは情報を共有しておきたいところだけど……」
ちら、と
「
「――え?」
不自然なくらい、いきなり会話の内容を中断して聞いてきたから、びっくりした。
「ううん、さすがにそこまでしてもらうのは申し訳ないよ。今日は家に帰る」
「そう? 気にしなくてもいいのに……。アルバさん、
「ああ。いいけど……」
アルバくんが戸惑ったように雪火とわたしの顔を交互に見る。そのあと、顔色をうかがうように瞳を向け、眉を寄せた。
きっと心配をかけている。今のわたしはひどい顔をしているに違いない。
「
「お、おう。分かった」
台所からタッパーを盛ってきて、
最後にタッパーをスーパーの袋に入れて、アルバくんに押しつけるように渡す。
「この羊羹おやつに食べてね。食べられないようだったら、冷蔵庫の中に入れて。じゃあ、おやすみ」
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